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プロローグ2

2016/6/17 改

プロローグ2


 ツェレスクとリザークが中庭の端に立って話しています。


「はあ……また増えた」

「仕方あるまい。魔王様の拾い癖はもはや特技を超えて体質、いや運命だ」

「リザーク……現実から目を逸らすな。あれをみろ」

 びしっ

 ツェレスクの指先が庭の先を指さしました。

 広大なためにぱっと見、草原か放牧場としか思えない魔王宮の中庭。

 その一面に動物が溢れています。

 白い犬、白い猫、白い熊、白い一角馬、白い鼠、白い狼、白い巨鳥、白い大小の生き物たち……見渡す限り白い身体の生き物しかいません。

「拾ってきた動物達で魔王宮の中庭が巨大動物園になっとるだろうが!! しかも何故かみんな白い! 魔王さまは黒いのに何故白いのばっかり集まるんだ! しかもあいつ等年中白いって夏冬の生えかわりはどうしたんだ、保護色はどうなった! 保護色の存在意義がないがしろにされとるわ!」

 なぜこうなった!!と頭を抱えて叫ぶツェレスクです。

「白い者達が引き寄せられる理由か……それはきっと、魔王様のお心が雪のように清らかであらせられるからではないだろうか」

 うっとりとした目で語るリザークに、ツェレスクは白い目を向けます。

「清らかであられれれよーが白しか寄らないって薄気味悪いわ。あとお前は魔王さまを女神か聖母とカン違いしてんじゃねーぞコラ」

「あ・ら・せ・ら・れ・る、だ。しかしだな、魔王様は血生臭いことや乱暴なことはお嫌いだし、拾った動物が弱っていたりするとご自分でよくよくお世話もなされる。我等魔族にもお優しいことこの上ないではないか。

 魔王様がお優しく清らか故に白き者は引き寄せられ、魔王様はお優しい故、無理に引き離すことなく留め置かれる。まさしく因果律というもの。であるからにして―――」

 リザークは左の拳を掲げます。

「魔王様は女神も聖母も超えた、まったき慈愛そのもののようなお方である、と私は考えるのだ!!」

 どどーん! と効果音とが付きそうなドヤ顔で言い切ったリザークです。

「……まーたしかに魔王さまのおかげで魔界はぬるま湯に浸かってるみてえに平和で住みやすいがお前は“魔王さまバカ”すぎだヴァカ」

 ツェレスクが呆れたといわんばかりの貌をして一息に言い放つと、リザークは憮然としました。

「む、魔王様バカでなにが悪い」

「魔王さまが拾ってきた動物のエサ代にいくらかかってっか言ってみろ? リザーク宰相」

「……動物に囲まれて無表情なのに幸せオーラを醸し出している魔王様。和む……」

「……………まあな」

 あからさまに話を断ち切った二人の視線の遥か先には、白い動物達にぎゅむぎゅむと押しくら饅頭よろしく迫られている王の姿がありました。

「しかしよ、白いの限定、なんていう妙な縛りは置いといても、なんでイディムの絶滅した種だの伝説級の生物だのが出現すんだ? 此処は結界内を術式で気温上げてっから温いが、そもそも此処は年中吹雪いて草一本生えねえトゲトゲ剣山ン中だぜ?」

「妥当な線で推測するならば、魔族が持ち込んできたか、魔物が餌として運び込む途中逃げたものか…だが、寒さに適応できたとしても餌がない状態で生き延びる確率はほぼ無い」

 ううむ、と二人は唸ります。

「魔族が持ち込むっても結界から出歩く奴はまずいねぇぞ、いりゃあ門番から報告があがって来る。処分を受けた奴が放っぽり出されるくらいだろ」

「やはり魔王様ご自身が、なんらかの要因で呼び寄せておられると考えるのが……」

「ぬあぁあああ! やっぱまおーさまが拾って来なけりゃいいんじゃねーか!!」

「堂々巡りだな」



( でもまあ、魔王様が幸せなら魔族みんなが幸せなのだから、よいのではないかなあ…… )


―――― と、思っているリザークなのでありました。



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