プロローグ1
4/15 22時 投稿開始
よろしくお願いします。
2016/6/17 改
プロローグ1
うららかな日差しが輝く長閑な午後
魔王宮の緑が美しい広大な中庭を細身の魔族が歩いていました。
彼の名はツェレスク。プラチナシルバーで肩ほどの髪に、乳白色の肌をしています。彼等の王である 「魔王」 の片翼です。
「まおーさまぁーどーこ行ったああーー」
べしっ
大きな手が後ろから彼の後頭部を叩きました。
その音に驚いたのか、近くの枝にとまっていた白い小鳥がパタパタと飛び立ちます。
「ぐっ……なにすんだリザーク」
叩かれた所に手をあてつつツェレスクが振り向いて文句を言った相手は、もう一人の王の片翼です。ツェレスクよりも頭ふたつ分は背が高く、体も大きな高位魔族で、名をリザークといいます。銅色の髪とうっすら陽に焼けたような肌色の持ち主で、一見すると武闘派に見える彼なのですが、実は宰相を務めている「筋肉より頭脳」派です。
そのリザークは、腰に両手を当てツェレスクを見下ろしています。
「魔王様をお探し申し上げるのにその口調はなんだ。無礼者」
「おっま、よく考えろ。魔王さまがいらっさられれれ、れないほーがおおごとだってんだよ」
「いらっしゃられない、だ、ツェレスク。まあお前は言いにくいだろうから「おられない」でもいい」
「どーでもいいわそんなもの!それより魔王さまだよ、何所行った。あの人がふらふら外出ると―――」
ブゥブゥ
ブゥ
二人の耳に聞いたことのない音が聞こえました。
揃ってその音が聞こえた方向に顔ごと向くと、長い黒髪に首から爪先まで黒尽くしの衣装、無表情の長身の魔族―――彼等の王と、その懐に抱かれた白いウサギがおりました。
「……」
「……」
「ただいま」
「……おかへりなさひ まおーさま」
「お帰りなさいませ、魔王様」
「うむ。」
こくり。
ブー
「……え? 鳴き声?」
「また拾って来られたのですか?」
こく。
「ちょ、まおーさまぁああああ! 毎度毎度拾ってくんなといっつも言っ……あれ、この動物見たことないような……」
ブゥブゥブふー
ブグッ
ウサギはツェレスクと見つめ合って鼻でぶぅぶぅ鳴いています。
リザークが自分の顎に手をかけて言いました。
「む、この矢鱈に美脚なシロウサギ……これはもしや、人界の最北にいたという伝説の“ホッキョクウサギ”とやらでは」
「え、マヂで」
ツェレスクがリザークを見、リザークは王を見ます。
「イディムの動物図鑑で見た姿によく似ている。魔王様、これを一体どちらで拾われたのですか?」
「氷河を散歩してたら憑いて来た」
「憑いて来た、って字が違うんじゃねーすか、魔王さま」
「親を探したがいなかった。爪立ててしがみつかれて長靴に穴が開いたぞ」
「魔王さまの長靴の物理防御+1025だぞおい! 最強防具に穴ってどんだけだ爪!」
青褪めてウサギに言い募るツェレスクですが、ウサギは ブー と鼻を鳴らすだけ。
「それで、その個体はどうなさいますか」
「保護」
「またか! どーして出掛ける度にいきもの拾ってきちゃうんだよおおお!」
「……後、」
ごそごそ
王は首から背中に背負っていた黒い包みを前に回すと、徐に解きはじめます。
彼は全身真っ黒クロスケなので、リザークとツェレスクは今まで王がそれを首で縛っていたことに気がつきませんでした。
「魔王様、その風呂敷包みにした布は魔王様のローブでは」
「これもついて来た」
はらりと緩んだ布から出たのは、3つの白い頭。
リザークが驚いて言いました。
「こ、このもこもこシロフクロウに狼と見間違えそうなシロギツネ、円らな目がきゃわゆい白銀オコジョは! すべてイディムでは絶滅したといわれる、魔界でも稀少種の動物達ではありませんか」
「ちょ、魔王さまぁああ! レア引き寄せすぎだっつーのー!」
2羽と2匹は王に大事に抱かれて、満足そうにそれぞれ鳴きました。
前半5.5話まで連日更新して、27日から後半5話更新という予定です
問題が起きない限りはこの予定ですが、変更が出た場合は活動報告でお知らせします
(2016/4/22)