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『感情反対論』

作者: もきゅ

自己満足とノリで書いたものなのでひどいかもしれません。悪役系の物語大好きです





ーーああ、まただ。あの子ばっかり…




私には双子の姉、亜沙がいる。可愛い系の美少女だ。それだけだったら良かったのに、性格よし、成績よし、スタイルよしといった完璧人間なのだ。


双子の妹の私にも優しく、今朝だって私の好物の玉子焼きをくれるほど。しかも男子受けの良い天然まで入ってくる始末。まさに理想の少女とも言える。


それに比べて私は顔は普通(と思う)、成績も普通、性格だけは自分でも言えるほどの醜さ。



ーーーそう、私は亜沙と真反対と言えるほど、負の感情しか味わってこなかった。




* * * * * * * * * * * *






「ねえ、あれって神楽木さんじゃない?また、告白されてるよ!」

「ほんとだ!しかも今度は副会長じゃん!」


中庭からみるとそこにいたのは亜沙と学校のなかでも結構人気の三年生の副会長様だった。


まるで英国の王子様のような美形、成績は学年で2位だとか。女子が大量に群がっても文句は言わず、さらりと流し、丁寧な対応にファンクラブができたほど人気が高い。



まあ、副会長様の説明はここまでにしておいて、亜沙の高校入学してからの武勇伝といこうか。



まず入学時、新入生代表で挨拶の言葉を読む。それにつっかかる(多分学年2位だったかな?それで敵視してた)それなりにかっこいいイケメンを虜にする(経緯は省略)。次にクラスの堅物委員長を手懐け、虜にする(省略)。次にツンデレくんと仲良くなり、なつかれる。


二年生になると、クラス替えもあり、その時に隣の席になった腹黒御曹司を虜にする。部活関係で一年生の小悪魔系の美少年とおどおどしてて、天使みたいな美少年を虜にする。


それだけじゃ飽きたらず、生徒会に入り、書記の元気ワンコになつかれる。この前は会計の苦労人を虜にしていた。

王子様副会長にも告白され、三年生の俺様会長に惚れられるのも時間の問題だろう。


まあ、よくもここまでゴキ○リホイホイのように亜沙に引っ掛かるものだ。しかも、亜沙自体ここまでの人たち(全員イケメン)を全てふっている。そのおかげで逆ハーレム状態だ。



もし、亜沙の性格がクソビッチだったら良かったのに。それに反してあの子は良い子。



気持ち悪いほどにーーー


「…っ」


ふつふつと何かが私のなかに沸き上がってくる。それは昔から私の中にある嫉妬だ。そして嫌悪感。


いっつも私の中にあるのは負の感情ばかり。亜沙が羨ましい。愛されたい。私だけに向ける愛情が欲しい。亜沙が嫌い。亜沙が憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い


「神楽木さん」

「!」


後ろを振り向くとそこにいたのは亜沙と同じクラスの腹黒御曹司だった。こいつはどうやら私のことが嫌いのようで、何かしら嫌味を言ってくる。


「ああ、亜沙また告白されてるんだ?それに比べて神楽木さん可哀想だね。思ってくれる相手すらいないもんね?」

「…久遠寺君には関係ないでしょ」

「あるよ」

「は?」


なにいってんのこいつ。亜沙の信者のくせに。気持ち悪い。


「ちょっとーなにいってんのこいつみたいな顔されても大有りなんだよ?

亜沙が振るときどんな風に振るか知ってる?」

「…」

「"妹が心配なので、まだ付き合ったりできません"」

「…っ!?」

「その様子だとやぁっぱり知らなかったみたいだね」


亜沙どこまで私を醜くさせるつもりなの?自分が優越感に浸っているからそんなこというの?私が何をしたっていうの!


久遠寺はゆっくり私に近づき、耳元で低くささやいた。


「だからさあ、早く神楽木さん彼氏を見つけてね…?」


そういって久遠寺はにっこり笑って去っていった。




* * * * * * * * * * * * *




こんな性格になってしまった経緯は家にある。



学校のように亜沙を両親は溺愛していた。私のことがまるで見えていないかのように亜沙を中心にこの家庭はできていた。


亜沙が私のぬいぐるみが欲しいと言えば、それは無理やり取られ亜沙のものとなった。


いまこそ、亜沙は私のものが欲しいとは言わなくなった。いや、もしかしたら私の持つものは亜沙からすれば、別に欲しいとは思わないものなのかもしれない。


そうやって私の心は歪んでいった。亜沙の持つもの全てがきらきら輝いて眩しかった。欲しかった。ただ私だけのものが。私だけに向ける愛情が。それと同じように亜沙に憎しみの感情ばかり募っていった。


まるで私たちは感情をお互いにあげてしまったのかもしれない。亜沙には喜怒哀楽の喜と楽を。私には喜怒哀楽の怒と哀をと。



「…ただいま」


挨拶したところで返事が返ってきた試しないけれど、ほんのちょっとだけでも期待する自分に嫌気がさす。


ガチャ


リビングのドアが開き、中から母が出てきた。


「おかえり!…なんだ、あんたか」


さっきまで笑顔だった母は私の顔を見ると、途端に汚いものを見たかのような表情した。

なにそれ…っそんなに私のことが嫌いなの…?


「まぎらわしいのよ、あんたの声。亜沙に似てるから。今度から挨拶なんてしないで」


そういうと母はリビングに戻っていった。私は無言で自分の部屋に入ると、布団に潜り泣いた。


私が亜沙の妹でさえなければ私の人生は変わっていたのかな…そんなことを考えてもわかるわけもなく、いつの間にか泣き疲れ眠ってしまった。




* * * * * * * * * * * * * *



仍流(ヨル)

「…ん?なに…ってわあ!!」


誰かに呼び起こされるように目を開けるとそこには幼馴染の秋月 桃哉(トウヤ)がいた。私に馬乗りした形で。


「な、なんであんたがここにいるわけ!てか、早くのきなさいよ!」

「…泣いてた?」

「…っ!うるさい!さっさとのいて出ていきなさいよ!!」


本当にこの男は昔からこういうところが目敏い。私はそんなところが苦手だった。私の亜沙に対する思いを見透かされるようで。知られてしまうようで。そのため、自分から近づくことはほぼなかった。


ああ、そういえばこいつだけは亜沙の信者じゃなかった。ただ、猫のように気まぐれで何を考えてるか分からなかったけれど。


なんとか桃哉を退かし起き上がる。もう外は真っ暗だった。誰も起こしに来てくれなかったわけね…


「そういえば、あんたなんでここにいるわけ」

「仍流好きだよ、僕を選んで。僕はもう仍流を悲しませたくない…」

「は?」


会話になってないし。

大体、


「ーー悲しませたくないってなに、それ?あんた知ってて今まで知らないふりしてたわけ?あんまりじゃない。

はっ!…今さら同情して亜沙の好感度でもあげようとしてるわけ?」

「ちがっ…!」

「もう帰ってよ!!あんたもみんな!亜沙亜沙!!誰も私を見てくれない!!気持ち悪いのよ!!!」


ーーああ、目の前が歪んできた。涙で桃哉の顔もよくわからない。でも、一度ついた言葉はとどまることを知らない。


「よ、る…」

「ああ、そうね!残念ね!生憎、私は性格が悪いもんだから私に同情したって亜沙には伝わらないと思うわよ!!分かったら2度と私の前に顔見せないで!!」


はあはあ…

自分の息があがって呼吸が辛い。涙で顔はぐちゃぐちゃだ。きっとひどい顔してる。


「仍流…ごめん、ね…今日は帰る。でも、僕の気持ちは本当だから…そこは誤解しないで欲しい」


桃哉が部屋から出るとようやく自分のしたことがわかり青褪める。やってしまった…桃哉はひどいこといってしまった。いくら母のことと久遠寺君ことでストレスがたまっていたとしてもあれはなかった。今まで抑えてきたものが溢れてしまった…


「…もう、いや。消えたいよぉ…」


今日は今まで一番悪い日だった。姉が愛されるところを目撃し、同級生せいには馬鹿にされ、母親には拒絶され、幼馴染に八つ当たりした最悪な1日。この日を境に私の人生は逆転していくーーーー。


そのことを知らず私はまた亜沙を憎み、自分も憎んでいくのだった。



*


*


*

*

*

*


『感情反対論』完



少女は生まれながらもう一人の少女と感情が反対だった。

ならば平等な神の元に人生も平等にしなくてはいけない。

ーーー幸と不幸は平等に訪れるものである。

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