0-0 逃避
ふと思いつき投稿した小説です。長くなるかどうかは分かりません。
「はぁ〜。調整終了っと」
男は作業の手を止め、作ったものを手に取る。
それをじっくりと見て、机に戻す。
「これで成功すれば、俺のやりたかった事が出来る。そこで、やり直すんだ。今まで後悔した事をやり直す。後悔しないように」
自分でも逃避だと思いながらも、男は準備を進める。
「おーい、準備が終わった!秋奈は、どっちでも良いからな。自分の信じる道を行け!絶対に後悔はするな!」
部屋越しに返事が返ってきた事に満足し、男は作っていた物を頭に付ける。ベッドに横になり実行に移そうかと考えた時、ドアが開かれた。
「本当に、行くの?」
開けたのは、男に秋奈と呼ばれた人物であり、男の妹だ。
「俺達はこの世界から消える。いや、秋奈は良いんだけどな。こんな腐ってる世界から、腐ってない、理想の世界に行く。そこで暮らすんだ。
多分、もう既にあの世界に行ってるのもいるだろうし、俺も行くよ」
さも当たり前の様に、男は世界を捨てると言い放つ。
それを聞いた妹も、意志を固める。
「わかった。私達は約束したもんね。ずっと一緒だって。今回は無理矢理な感じがするけど、兄さんに付いて行くよ」
妹も、男と同じ物を頭に付け、男の隣に移動し、横になる。
「最初の出現場所は2人とも一緒だ。ただし、種族は違う可能性が高い。
お互いを攻撃するのは禁止だぞ?」
「勿論。どんな姿でも兄さんは兄さんだから。これからもずっと一緒だよ」
兄妹は手を繋ぎ、静かに目を閉じる。
そして、男の手が1つのスイッチを押した。
その次の日、家から2人の死体が見つかり、軽い騒ぎとなった。
だが、その騒ぎもすぐに終わる。
1部の人間を除いて、皆忘れてしまったのだ。
所詮人間である。覚える価値の無いものと判断、もしくは自分に関係の無いことは簡単に忘れてしまう。
だがそれも仕方の無い事だ。全てを覚えるのならば、いや、覚えてしまうのならば、人間の寿命は極端に短くなってしまう。
だが、男はそんな人間が嫌いだった。自分も含め、嫌いだった。
人間は無力だ。 その事を忘れている。
周りよりも劣っているが為に知恵を磨いただけ。
だが、その知恵も。技術が発展し過ぎた今日では、衰退する一方だ。
そこで男は考えた。
根本的に何もかも変えてしまえば良いのだと。
逃げてしまえば、良いのだと。