Sunday morning, Present (日曜日 朝、現在)
まっずいな~‥
‥これって、‥とってもまずいかも。
あたし達って今、とんでもない泥沼に足を突っ込んでるんじゃないかな‥
それを確かめるため、わざわざ日曜日に大学まで出てきたんだけど、正直言って気が重い。ひと気のない廊下に自分の足音だけが響き、待ち合わせの小講義室前までたどり着いても、いざドアを開けようと言うところでためらってしまう。
はぁ~‥
大きく息を吐いて、心を落ち着かせる。
大丈夫よ、まだ決まったわけじゃないし‥
‥うん、頑張れ、あたし。
胸の内で覚悟を決めて、ドアノブに手を伸ばす。待ち合わせの相手は先に来ていた。
「あっ、ごめ~ん、待たせちゃった?」
「いや、俺も今来たところさ」
なんだかこれだけ聞くと、恋人同士の待ち合わせみたいね。でも彼の顔には、あまり会いたくなかったって感じの表情が表れている。もっとも、それについては文句を言えた義理じゃないわ。だって、あたしもきっと同じような顔してるから。
会議テーブルを挟んで向かいの席に腰を下ろすけど、さてどこから切り出したものやら。昨日は一緒に呑んだ仲なのに、どうにも気まずい雰囲気が漂っている。
‥やっぱり正直に気持ちをさらけ出すしかないわね。
でも、そう考えると心臓がドキドキ高鳴ってきちゃう。だってしょうがないでしょ、どんな形であれ告白をしようって言うんだから。
「あ、あたしね‥!」
「あのな、俺‥」
タイミングが良いのか悪いのか、お互いの声が重なってしまう。気後れしそうになるけど、この機を逃せば言う勇気がなくなってしまいそう。ええい、言っちゃえ!
「あたし、織田 玻瑠人君のことが好きなの!」
「俺、真田 優姫さんが好きなんだ!」
ああ、やっぱり‥
彼、木下 総一郎の顔に浮かぶ驚きとも諦めともつかぬ表情を見ながら、あたしこと朝倉 花音は、事態が深刻な状況であることを知った。
事の発端は一週間前にさかのぼる。あの時はまさかこんな事態を迎えるなんて、思ってもみなかったわ。