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第36話 新妹覇王の軍配者

 あーん! 勝頼様が死んだ!

 北陸&関東攻略しよー!って思ってたのに…。

 くすん…脳筋薄命だ…。


 勝頼さんの病死に動揺したせいで、またしてもスト様ネタから入ってしまいました。

「この間征夷大将軍になってまだ2話じゃないですか! どーして、どーして!? これで終わり!? 嘘でしょ!?」

「もうそれはよい」

「……はい」

「勝頼は立派に役目を果たした。将軍にまで上り詰めたのだからな。そのうえで天寿をまっとうしたと言えよう」

「ええ……」

 信玄公の満足そうな顔を見ると、何も言えなくなってしまいます。

 まあよく考えると勝頼さんも60歳でしたから、この時代だと病気でお亡くなりになってもまったく不思議ではない年齢なんですよね。

 しかしこうなると当然、後継者を決める必要が出てきます。信玄公が亡くなった時と同じく、後継者の資格がある一門衆の名前がゲーム画面に表示されました。

「異母弟にあたる仁科盛信さんでも問題ありませんが……やはり勝頼さんのお子さんに継がせたいところです」

「信勝か、それとも雪か、ということじゃな」

 わたしは信玄公の言葉にうなずき、頭を悩ませます。


 もともとのわたしのプランでは、信勝さんを勝頼さんの後継者に、雪ちゃんをエースに育てる予定でした(第28話「武装少女育成計画」を参照してください)。

 能力だけで考えれば、雪ちゃんの方がかなり高いのです。ただ、大名になった際の行動力に最も大きく影響する『野望』の値は雪ちゃんかなり低いので、大名には信勝さんのほうが向いているであろう。雪ちゃんは軍事担当に特化させよう…という考えによるものです。

 その計画通り、いまや雪ちゃんは武田家のエースに育っています。

「考えておった通り、信勝を大名にすれば良いのではないか? 悩むことかのう」

 信玄公がわたしに疑問を投げかけてきます。

「おっしゃる通りなんです。信勝さんと雪ちゃんで分業した方がどう考えても効率的なんです。なんですが……」

 わたしは正直に自分の気持ちを言いました。

「女大名というのにも浪漫を感じるんですっ」

「……浪漫ときたか。わしが生きておったころには無かった言葉だな」

「信玄公、意味はおわかりになります?」

「なんとなくはわかるぞ。しかし、女大名のう。今川義元の母親である寿桂尼はそう呼ばれていたらしいが」

「しかも、今もし雪ちゃんが勝頼さんの後継者として大名になれば、征夷大将軍の地位も受け継ぐことになります。女将軍! 浪漫じゃないですか……」

「ふっ」

 一人で盛り上がるわたしを見て、信玄公が吹き出しました。

「その口ぶりでは、もう心は決まっているのではないか? 悩むこともなかろう。宵子がやりたいようにやればよい」

「へへへ……。では、遠慮なく」

 こうして雪ちゃんが武田家当主、そして征夷大将軍に就任しました。

 『野望』が低いため行動力が決して高くなく、ゲームの進行はやや手間がかかりますが、天下の大部分を押さえた今ならさほど問題は無いはずです。兄の信勝さんはせめて政治や智謀を教育して、雪ちゃんを支える存在になってもらいましょう。

 

 雪ちゃん体制になってまずわたしが行ったのは、軍団の編成でした。

 勝頼さんより行動力が低く、1ターンであまり多くの行動ができなくなった今、他の武将を軍団長に任命して行動を委任したほうがスムーズに天下統一が進みます。

 特に気になっているのは、越前と山陰にいまだ残る九戸家でした。越前は伊達家と北陸で戦う勢いに任せて攻めることもできましょうが、山陰まで兵を向けるのはなかなかしんどい。誰かに任せた方が得策です。

「そんなわけで、島津義弘さんを山陰方面軍の軍団長に任命しようと思います。島津ファミリーで中国地方を平定してもらえれば」

「ああ、それは良いな。島津なら問題なかろう。山陰は広い割に、大した兵力も残っていないようだしのう」

 こうして信玄公のお墨付きを得て、島津さんを軍団長とした編成を行った途端……

「ちょ、ものすごい勢いで島津さんたちが侵略していきますよ!?」

 本当に委任した瞬間から島津義弘さんは攻めまくり、春と夏だけで山陰の半分を制してしまいました。この鬼島津、ノリノリである。

「容赦ないのう」

 さすがの信玄公もこれには苦笑いですよ。


 こうなると、わたしたちも島津さんに負けていられません。1607年冬、家康さんや本多忠勝さんで千葉城を攻めました。

 千葉城は伊達政宗さんの居城です。ついに政宗さんとの対決ですよ。片倉さんもいます。

「兵力はややこちらが多いが、大した差は無いな」

「でもまあ、政宗さんはお強いとは思いますが、こちらも家康さんと本多さんですからね。戦い続けて能力がカンストしている家康さんたちなら、まだお若い政宗さんに負けるとは思えません」

「で、あれば良いがな……」

 信玄公の心配をよそに、わたしはかなり楽観的に構えて戦へと突入しました。が、なんでしょうこの違和感、なにか、なにか変です。

「なにか戦争画面に見慣れないものがあるような気がするんですが……」

「見慣れないもの? ……ははあ、これだな」

 信玄公が指差したのは、敵部隊の一部のアイコンでした。

「ああ、確かにそうですね!」

 通常、このゲームではどの部隊も足軽か騎馬か鉄砲に分類されます。足軽なら人の、騎馬なら馬の、鉄砲なら鉄砲のアイコンが表示されることになるのですが……

「馬のように見えるが、普通の騎馬隊とは少し違うな。なにか、ごちゃごちゃしている」

「そうですね……どうやら政宗さんと片倉さんの隊のもののようですが……えっ!?」

 その騎馬隊と似て非なるアイコンの部隊情報を確認したわたしは、思わず声をあげてしまいました。

「騎馬鉄砲隊……完成していたの?」


 今宵はここまでにしようと思います。

次回「馬と鉄砲と独眼竜」ご期待ください。

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