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第33話 天下分け目

「あけましておめでとうございます。ああ、早くパワーアップキットを手に入れなければ……でも忙しくてなかなかね……」

「何の話だ」

「いえ、こっちの話です」

 

 さてさて、武田・伊達連合軍VS九戸・北条連合軍という形になったのはいいとして、とっとと九戸軍に奪われた旧領を取り返さなければなりません。

 1599年秋、わたしは長島城から雪ちゃんと島津さんたちを中心とした部隊を出陣させ、清州城と那古野城を攻めました。

「ふっふっふ、九戸軍は急激に領地が増えたので、それに見合う兵力は所有していません。戦線すべてに兵力を配置するなど不可能! 一気に奪われた分、一気に取り戻してやりますよ!」

「その意気だ、宵子。地力の差を見せつけてやれい」

「はい!」

 一気呵成に雪ちゃんたちは攻めたて、無事に清洲城と那古野城の奪回に成功しました。ですが楽勝というわけではなく、予想以上に苦戦させられました。

伊集院忠棟いじゅういんただむねさんの砲撃はなかなか強烈でしたね……」

「うむ。大友や島津との戦いもそうであったが、籠城したところから大砲を何度も打ち込まれると、どうしても手こずるな」

「どうも、九戸家の主力は旧大友・島津勢の武将たちのようです。かつて中国地方で戦っていた時に捕虜にしたんでしょうね。なかなか厄介です」

 と、口では言いつつも、実際のところわたしは余裕ぶっこいていました。品の無い表現でごめんなさい。

 九戸に領地を奪われたのはあくまで不意を突かれたからで、腰を据えてかかれば多少は苦戦してもこちらが城を取るだけの一方的な戦いになる、と……そう考えていたのです。

 なので、今度は勝頼さんで畿内をどう攻めようかということで頭がいっぱいだったのですが……。


「む? 九戸が攻めてきたぞ、宵子」

「えっ!?」

 不覚にも、相手から攻めてくるという可能性がわたしの頭から抜け落ちていたのです。九戸さんがノーガードの殴り合いを挑んでくるとは……。わたしは慌てました。

「ど、どこが攻められているんですか!」

「春日山城じゃ」

「……誰を配置していましたっけ」

 敵と面しているので最低限の兵力は配置しているはずですが、攻め込むことばかり考えていたので攻撃拠点以外の城に誰がいるのかすぐに思い出せません。

「信勝がいるようだな。その他は、まあ二線級の武将たちといったところか。信勝自身も二線級と言わざるを得んがな」

「信玄公、お孫さんに対しても手厳しいですね……」

 ただ、事実ではあります。信勝さんは鍛えればけっこうな武勇になるのでしょうが、どうしても勝頼さんや雪ちゃんに比べると見劣りしてしまいます。

 一方、攻めてきた九戸の部隊を見てみると……

「お、九戸さん自ら攻めてきてますね。その他は……げえっ、関羽! いえ、高橋紹運たかはしじょううんさんじゃないですか! さらに立花宗茂たちばなむねしげさんもいますよ!」

「これはまた、強力な面子じゃのう」

 信玄公はなんだか楽しそうですが、わたしとしてはそれどころではありません。高橋紹運さんといえば言わずと知れた、九州屈指の猛将です。史実だと1586年に若くして戦死していますから、ゲーム内の1599年に存命でもおかしくはありません。

「厄介ですね……。信勝さんたちの兵力はそれなりにいますが、九戸軍よりわずかに劣ります。武将の能力の差もありますし、まともに戦って勝つのは厳しそうです」

「ふん、そうであろうな。こういう時は、高望みはせんことだ」

「つまり、敵を追い払えればそれで良し、ということですか」

「そういうことだ」

「ううーん」

 わたしは頭を切り替えました。今の春日山城の勢力で敵を撃退する方法を考えるほかありません。能力と兵力で劣る以上、勝つためにはそれ以外のストロングポイントを探すしかないのです。

「……お? 鉄砲の数ならかなりの量がありますよ。なんとか全軍を鉄砲部隊に編成することが可能な程度には!」

「ほう。となれば、取るべき戦術はただひとつではないか」

「ええ、籠城のうえ、ひたすら銃撃。これしかありません!」

 やることさえ決まれば、あとはひたすら遂行するだけです。難攻不落の春日山城、籠城には向いているはず。

 本来は騎馬に適性がある信勝さんまでも鉄砲部隊にして、わたしはひたすら城壁の内側から撃って撃って撃ちまくりました。高橋さんたちに城門を突破されると後退してさらに撃ちまくる。これを繰り返していくうちに相手の兵力も減って行き、やがて諦めたのか、九戸さんをはじめぞろぞろと退却していきます。

「ま、守り切った……」

「よくやった、宵子」

 精神的にへとへとになりましたが、どうにか危機を乗り切りました。もし春日山城を落とされていたら、九戸との戦いはずっと長引いていたでしょう。

 ここで拠点を失わずに済み、さらに敵の主力にダメージを与えられたのは大きかった。後から思えば、この戦いが命運を分けたと言っていいかもしれません。

「ふっふっふ、今度はこっちの番ですよ。丹波亀山城に待機していた勝頼さんの本隊で、畿内を奪ります!」

 

 かくして1600年春、勝頼さん率いる本隊が万全の態勢で出陣、手薄になっていた畿内で暴れ回り、瞬く間に城を取り返していきました。さらには二条城も落とし、信玄公が成し得なかった上洛も達成です!

「いかがですか、信玄公。ゲームの中とは言え、勝頼さんが上洛を果たした感想は」

「うん? ……別に、げーむの話ではないか。特に感慨も無いわ」

「oh……」

 とは言うものの、信玄公が少しにやついているのをわたしは見逃しませんでした。それを指摘するのも野暮ですから、言いませんけどね!

 

 いっぽうその頃、わたしたちと同盟を組んでいる伊達政宗さんはと言えば、もっぱら上杉を攻め落として勢力を拡大していました。上杉が滅ぶのも時間の問題と言う勢いです。本当は北条を攻めてほしいのですが、そう思い通りにはいきませんね……。

 そしてわたしたち武田は九戸を攻め続け、1601年には彼らに奪われた領地を回復するところまでこぎつけました。やっとですよ、もう! さあ、次は美濃の稲葉山城を攻略するか……といったところで、勝頼さんのもとへ使者がやってきました。

「む? 誰からだ?」

「これは……朝廷からの使者ですね」


 今宵はここまでにしようと思います。

次回「征夷大将軍、武田勝頼」ご期待ください。

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