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第28話 武装少女育成計画

 さてさて、雪ちゃんが戦列に加わったのはいいものの、どうやって育てていくべきか。わたしは雪ちゃんの能力を信勝さんとじっくり比べてみることにしました。

「さすが、雪ちゃんは勝頼さんの能力を色濃く受け継いでいるだけあって、武勇に優れていますね。鍛えればゲーム中でも最強クラスになりそうです。おまけに騎馬適正がAですよ。ガンガン前線へ突っ込むのに向いていそうですね」

「巴御前のような女子よのう」

「一方で、政治や智謀は低いです。これはまあ勝頼さんの娘さんだから仕方ないところはあります」

「うむ」

「ただねえ、『野望』の数値がすごい低いんですよ。わずか10しかありません」

「『野望』とはなんだ?」

 信玄公の問いに対して、わたしは説明書を見ながら答えました。

「ええと、大名になったときの行動力に影響するんですね。野望の数値が高いほど1ターンで沢山の行動ができます。信玄公も勝頼さんも90以上と高いですから特に不便を感じることはなかったんですが……」

「もし勝頼の死後に雪を大名にすると、ろくに行動できなくなるということか」

「そうです。それに『野望』の数値は武勇や政治のように教育や経験で上昇することもありません。本人の心性によるものですからね」

「信勝の『野望』は如何ほどなのだ?」

「60台ですね。信玄公や勝頼さんには及びませんが、雪ちゃんに比べればずっと高いです。ついでに言うと信勝さん、武勇自体は雪ちゃんにやや劣る程度でじゅうぶん高いんですが、騎馬適正がBなんですよね。これが痛い」

「……となれば、信勝と雪をどう育てていくか、方針は定まったも同然ではないかな」

「ですね……」


 つまり、『野望』の低い雪ちゃんは大名の器では無いということです。それでも、武将としての能力は非凡なものがある。対して兄の信勝さんは、武勇では妹に劣るけれど、大名としてはそれなりの器を持っている……。

「決まりましたね。勝頼さんの代で行けるところまでは行きますが、勝頼さん死後に備えて、信勝さんをその後継者として育てておく。妹の雪ちゃんは武田騎馬隊のエースとして戦闘に特化して育てる」

「うむ。山県もおそらく寿命が近い。これまでは山県の騎馬隊が突っ込んで暴れ回ることで敵を討ち果たしてきたが、雪がその代わりとなるのだ」

 父の跡を継ぐべき兄を支えるため、妹が馬にまたがって武田の特攻隊長になる……。

「なにそれ超萌えるんですけど。クシャナ殿下っぽい!」

「よくわからんが……しかし勘違いするなよ宵子。それは将来の話なのだぞ。現在の雪の武勇はまだまだ低い。60程度か。これから時間をかけて鍛えて行かなければならんのだ」

「そうですよね。教育係は誰にするか……。武勇が一番高い立花道雪さんかな。名前的にも雪繋がりですし」

 

 そんなわけで、雪ちゃんは道雪さんによる英才教育を受けることとなりました。試しに一度道雪さんの講義を受けさせてみると、かなりの効果が上がりました。教える方も教えられる方も有能だからでしょう。この調子ならば、雪ちゃんを来年には最前線に投入できそうです。

 1590年は、雪ちゃんを教育する一方で、九州侵攻をさらに進めて行きました。もう九州の5分の3は制覇したと言っていいでしょう。

 

 そんな中で、わたしたちを後方から苦しめている存在がいました。上杉景勝さんです。

 直接攻めてくるわけではないのですが、暗殺を仕掛けてくるのです。ここ数年で、上杉により暗殺された武将は5名にも上りました。その実行犯は服部半蔵。かつては武田配下であったのですが上杉謙信の捕虜となり、いまや上杉家の急先鋒ですよ。

「いやらしい攻め方をしてくるのう、景勝は。わしらも人のことは言えぬが……」

「謙信さんが大名だったころは暗殺を仕掛けてくることなんかなかったんですがね。思考パターンが変わったんでしょうね」

「とっとと上杉を滅ぼしてしまいたいが、九州攻略が先決である以上、放置しておくほかないのが苦しいな」

「まあ、有力な武将が暗殺されていないのが不幸中の幸いです……」


 そして年が明けて1591年、ゲーム開始時から常に最前線でエースとして戦い続けてくれた宿老・山県昌景さんが死亡してしまいました。同時に、黒い仕事をいろいろと担当してくれた宇喜多直家さんも死去。

「山県が逝ったか。歳を考えれば仕方ないのう」

「ええ……。世代交代の必要性がさらに増してきましたね、これで」

 ならば、そろそろ雪ちゃんの出番かもしれません。

 道雪さんによる教育を受け続け、武勇の能力だけなら90を越えました。もう立派に戦えるはずです。わたしは雪ちゃんを細川忠興さん、黒田長政さんとともに初陣へ出すことを決めました。


 今宵はここまでにしようと思います。

次回「九州統一戦」ご期待ください。

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