第26話 新世代より
あーん! 信玄公が死んだ!
長宗我部征伐&九州侵攻しよー!って思ってたのに…。
くすん…衆道家薄命だ…。
そんなわけで1586年、ついにゲーム内で信玄公がお亡くなりになってしまいました。
「史実より10年以上長く生きたのだから、薄命と言うほどではあるまい」
信玄公はさして動揺している様子はありません。来るべき時が来た、という感覚なのでしょうか。
「確かにそうですが……。あら、後継者を選ぶ必要があるようですね」
ゲーム画面には、後継者の資格がある武田一門衆の名前が表示されています。信玄公の弟の信繁さんと信廉さん、息子である勝頼さんと仁科盛信さん、信繁さんの息子の信豊さんなどなど。
能力が総じて高いのは信繁さんですし、私は個人的に信繁さんが大好きなので跡を継がせたいという思いはありますが、
「仮に信繁さんが大名になったとしても、もうご高齢ですからすぐに亡くなってしまう可能性が高いんですよねえ」
「では、どうするのだ」
「無難な選択になってしまいますが、やはり勝頼さんにしようと思います、史実通り」
「ふむ」
「でも勝頼さん、戦闘や野望といった能力は信玄公や信繁さんと同レベルの高さなんですが、政治や智謀は足元にも及ばないんですよね。脳筋というかなんというか」
「ずけずけと人の息子のことを言ってくれるな。本当のことではあるが」
「すいません! まあ、そこは優秀な部下が沢山いるのでカバーできますよ、きっと!」
こうして勝頼さんによる新体制で武田家は再び動き出したわけですが、いきなり想定外の事態が起きてしまいました。
「北条家から使者が……あれー!? 同盟を破棄されてしまいましたよ!?」
「なにぃ!?」
関東は現在、北条・上杉・佐竹で三つ巴の争いになっています。私たち武田との同盟は北条にとっても意味のあるものだと思うので、ちょっとこれは理解できません……。
「ど、どうしましょう信玄公」
「どうしようもなかろう。今のわしらがここで北条を攻めにわざわざ関東まで向かうような余裕は無い。長宗我部と島津を滅ぼして西の憂いを無くしてからでなければ攻められぬぞ」
「うーん、そうですよねえ……。よし、北条家は今は無視しましょう。東は信繁さんに任せていますし、北条家が攻めてきたとしても、信繁軍団なら守りきれるだけの戦力は充分にあります」
わたしの判断は間違っていませんでした。結局この後も、北条家は積極的に武田を攻めてくることは一度もなかったからです。……じゃあわざわざ同盟切るなよという話ですが。
そしてこの年、勝頼さんの当主としての最初の仕事は、紀伊と淡路島に残る長宗我部家(香宗我部さんが大名ですけど)を滅ぼすことでした。
旧本願寺の武将たちが武田についた今、もはや長宗我部は敵ではありません。1586年のうちにミッションコンプリートしましたよ。
「やれやれ、これで来年からやっと九州攻めの準備に取り掛かれます」
「予定よりずいぶん時間がかかってしまったのう」
「ええ、おかげで島津の戦力は随分回復したはずです。またあの大砲だらけの部隊と戦うかと思うと……」
……ん? 大砲?
確か大砲を購入できる条件は、海外貿易港と鉄砲生産地の両方を手に入れていること、のはずです。
そして今、わたしたちは堺に加えて、紀伊を奪うことに成功した……。
「おおっ! これで大砲を購入することが可能になりましたよ信玄公!」
「ほう。ならば島津の砲撃に対抗することができるか。だが、大砲を使いこなせる武将はおるのか」
「ふっふっふっ。旧本願寺の鈴木一門が味方になってくれましたからね。彼らの高い鉄砲技能ならば問題ありません。さらに、中四国での戦いで捕虜にした種子島久時さんもいます。彼も鉄砲技能はA!」
「ふむ」
「よし、来年は大砲をどしどし購入して、九州を万全の態勢で攻める準備を整えますよ!」
翌1587年は宣言通り九州侵攻軍の編成にまるまる当てました。
中国と四国の2方向から同時に九州を攻める計画です。中国から攻めるのは勝頼さんのほか徳川さん・羽柴さん・真田さんといった面々。四国からは山県さん・立花道雪さんという2人の老エースで攻め込む予定です。
「時間さえかければ九州平定自体は成功するはずです。心配なのは、高齢化の問題ですね」
「どんどん武将が寿命で死んでいっておるからのう。山県や立花道雪も危ないぞ」
「ええ。そこで、この九州攻めを使って若手を育成しようと思います」
この数年で、次々と武将の息子さんたちが配下に加わっていました。真田信幸さんに幸村さん、細川忠興さん、蜂須賀家正さん、宇喜多秀家さんなどなど。
さらに、浪人していた森蘭丸さんや長宗我部信親さんもこの年にゲット。信親さんなんて、お父さんを斬っちゃったのに配下に加わってくれてありがたい限りです。
そして、勝頼さんの息子である信勝さんも元服して武田家に加わりました。勝頼さんの代で天下統一に間に合わなければ、彼が次の武田家当主になるでしょう。
重要なのはこのゲーム、史実でどんなに活躍した武将であってもゲームに登場したばかりの時点では総じて能力が低いということです。教育や実戦で能力を伸ばしていく必要があるのです。
「多少九州攻略に時間がかかったとしても、長期的に考えれば彼ら若手武将を積極的に使って実戦で能力を伸ばしておいた方が、後で助かると思うんです」
「なるほどのう」
『九州を攻略する』『若手武将を育てる』「両方」やらなくっちゃあならないってのが「大名」のつらいところです。
そうして1年かけて準備した後の1588年、わたしたちはようやく九州に攻め込みました。この時はまだ、更なる新戦力が武田家に加わるとは思ってもいませんでした……。
今宵はここまでにしようと思います。
次回「最近、妹のようすがちょっと姫武将なんだが。」ご期待ください。