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第23話 雷神

 指月城を守る立花道雪さんの強さは、ゲーム内最強と言っていいレベルです。御年72歳にも関わらず武勇185(ちなみに武田軍最強の山県さんでも170台)。このゲームでは60歳を過ぎると徐々に能力値が下がっていきますから、ピーク時はどれだけ強かったんだという話です。

「これは指月城を落とすのに苦労しそうじゃな。城に籠られたところを攻めようとすれば、反撃で相当の被害が出るぞ」

「わかっています。だからと言って、攻めないわけにはいきませんよ。それに、どちらかといえば指月城よりも……道雪さん自身を手に入れたいという気持ちがあります」

「老いているとはいえ、これだけの強さじゃからのう」

「ええ」

 登用に成功したとしても、戦でバリバリ活躍できる年月は少ないかもしれません。どちらかと言えば、道雪さんに若手の武将への育成係になってほしいという思いがわたしにはありました。能力が高い武将が指導した方が、育成の効果も高いからです。


 1584年夏、わたしは真田昌幸さんと羽柴秀吉さんを中心とした軍を指月城に差し向けました。兵力は敵の約2倍。相手が並の武将ならば問題なく落とせる兵力差ですが、道雪さんですから油断はできません。

 と、ここで予想外の援軍がやってきました。

「あら、斎藤家の部隊が頼んでもいないのにやってきましたね」

「また松永久秀か……。隙あらば指月城を我がものにしようと考えているのであろう」

「うーん。だったら松永さんたちに本丸を落とされないよう、急いで攻めないと……」

「待つのだ宵子」

 信玄公が水を差しました。

「城を守るのが並の武将ならそれで良いのだ。だが、相手は立花道雪。わしらが急いで攻めれば、道雪は必死に抵抗するであろう。そして共に疲弊したところで脇から松永に城を落とされるかもしれぬ」

「う……。じゃあ、逆に松永さんたちに道雪さんを攻めてもらい、お互い弱ったところでわたしたちが漁夫の利をいただくのが良いということですか」

「そううまく行けば良い。だが、わしらが静観している間に松永がそのまま城を落としてしまうかもしれん」

「どうしろって言うんですかー!」

「自分で決めぬか! わしは策を示すだけだ」

 うう、信玄公に怒られてしまいました。


 要は道雪さんの強さをどう読むか、です。

 道雪さんが強ければ、ここは松永さんたちに先に城を攻めさせ、弱ったところを叩くのが最善でしょう。

 しかし道雪さんが意外と弱ければ、わたしたちが最初から全力で攻めないと松永さんに城も道雪さんも奪われてしまいます。

 

「うーーーーん」

 悩む。悩みます。強さとは相対的なもの。道雪さんが強くても、こちらも斎藤軍も精鋭ぞろい。束になって戦えば勝てるのではないでしょうか。

 いやしかし、ただでさえゲーム内最強の道雪さんが城にこもっているのです。城の地形効果もプラスされれば、恐ろしいくらいの強さになるかも……。

「うーーーーーーーん」

「方針は決まらぬのか、宵子」

 信玄公が急かしてきます。

「待って、待ってください」

 ここでわたしは、上杉謙信との戦いを思い出すことにしました。苦い記憶というのは思い出したくないものですが、重大な決断をするときこそ過去の失敗から学ばなければいけません。

 上杉謙信さんと戦ったときは、楽観的に考えていました。5倍の兵力がいるんだから……と安心して一斉攻撃を仕掛けた結果、全滅させられたのです。

 このゲームでは、能力次第で一武将が無双できる。そのことをわたしは実感しています。


 そして今、道雪さんの武勇の数値はあの時の謙信さんすら超えるレベルなのです。


 わたしの心は決まりました。

「よし、ここは待ちに徹します」

「松永たちを先に行かせるか」

「ええ。動かざること山の如し、です! ここは道雪さんの強さを信じます。それに、もし松永さんたちにやられる程度の武将だったら登用する必要もありません」

「厳しい考えをするようになったな宵子」

 信玄公が苦笑いしていました。


 ということで、あえてわたしたち武田軍はしばらく待機し、城内へ攻め込む松永さんたちの後を追いかけて行きます。

 城門を次々と突破し、道雪さん以外の島津軍を蹴散らしていく松永さん。少々不安になってきました。

 やがて斎藤軍が本丸に達したところで、道雪さんが待ち構えていました。道雪さんの部隊は1万。対する斎藤軍は総勢4万。わたしたち武田軍が後方で見守る中、戦いの火蓋が切って落とされました。


 嫌な……戦いでしたね……。


 壮絶でした。数で上回る斎藤軍が、道雪さんの前に次々と倒れて行くのですから。溶けて行くという表現がピッタリきます。対して、城にこもる道雪さんの兵力はほとんど減りません。

「うわあ、強すぎる……」

「ここまでとはな」

 わたしも信玄公も開いた口が塞がりませんでした。

 やがて斎藤軍4万はほぼ壊滅。松永さんたちはすごすごと退却していきました。道雪さんの兵力はまだ5000程残っています。

「ホント、謙信さんにボロボロに負けた時も思いましたけど、このゲームバランスおかしいんじゃないですかっ!?」

「今更申しても仕方あるまい。考えようによっては松永たちはよく減らしてくれたとも考えられる」

「ええ……わたしたちはほぼ無傷で5万の兵力を残しています。一気に押しつぶします!」


 道雪さんはわたしたち相手に健闘しましたが、流石に個人の能力でカバーできる限界を超えていたようです。5万の兵を2万まで減らされはしましたが、どうにか本丸を落とし、道雪さんを捕らえることにも成功しました。

「よ、良かったー……。おお、そして道雪さんの登用にも成功しましたよ!」

「うん? しかし忠誠が低いぞ」

「本当だ。30しか無い……」

 これだけ有能な武将が他国に奪われては困ります。

「よし、これまで手に入れた秘蔵のアイテムを褒美として与えまくりましょう!」

「うむ。ここが使いどころだろうな……」

 こうして武具から茶器から書物から、手当たり次第に道雪さんに貢ぎまくり、なんとか忠誠度を100まで上げることに成功しました。最強の軍事顧問の誕生です!


「やれやれ、これで中国地方からも島津軍がいなくなりました。一息ついてから、九州攻略に乗り出すとしましょうか」

「うむ。島津との決着の時は近いな」

 ですが、事態はわたしたちの計画通りには進まなかったのです。


 今宵はここまでにしようと思います。

次回「長宗我部元親の乱」ご期待ください。

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