第21話 鉄砲戦争
大友宗麟さんが松永久秀さんに殺され、その後を継いだのが島津義久さん……というなんだかよくわからないこの状況。わたしなりに頭を整理してみました。
「これは推測になるのですが、島津義久さんは大友家に取り込まれていたのかもしれませんね」
「どういうことだ?」と信玄公。
「このゲームでは、亡くなった大名の親族の中から後継者が選ばれるようなんですよ」
「つまり……大友は島津義久と縁組していたということか」
「おそらく、ですけどね。島津を傘下に収めた後、有能な義久さんを親族に迎えたかったんでしょう。システム上、登用したばかりで忠誠度が低くとも、親族になれば裏切らなくなりますし」
「そうか。わしも信濃の国人と縁組して親族衆に迎えておったからな。意図はわかるぞ」
信玄公は得心したようでした。
そんなこんなで、大友家改め島津家との戦いが再開されました。大名になった義久さんが、最前線である来島城にドーンと居座っています。
「目障りじゃのう」
「かなりの兵力が集結しているので苦戦は予想されますが、来島城は要所です。行くしかないですね」
「うむ。中国方面軍と四国方面軍が同時に攻め込めば、落とせないことはあるまい」
「はい!」
そうして1581年夏、わたしたちは来島城に二方向から攻め込みました。二つの城から攻め込むため、兵力もこちらが約ニ倍です。多少は手こずっても勝利は間違いない、と思っていました。
が、それは甘い考えであったとすぐに痛感させられました。
「もうやだー! なんなんですか、この戦闘民族たちは!」
籠城する島津勢の強さは想像以上でした。こちらが城門を突破しようとしている間に浴びせられる、嵐のような砲撃と銃撃。敵は総じて鉄砲技能が高いためその威力も半端ではなく、こちらの兵力がどんどん減っていきます。こちらも山県さんや馬場さん、家康さんや本田忠勝さんという一線級を出陣させているというのに……。
「互角の兵力で戦うのは楽しいと思うんですよ。大兵力で弱い敵を蹂躙するのも、逆に寡兵で大軍を破るのも楽しい。でも……大兵力で攻めておきながら、少ない敵にボコボコにされるって、一番楽しくないパティーンですよ!」
「落ち着けい、宵子。それでも城を落とさねばならぬ以上、攻め続けるしかないのだ。もし今回落とせなくとも、何度でもな」
「うぐぐ……。頭の悪い戦い方は好みじゃないですが、今回は仕方が無いですね……」
本当にただひたすらに攻め続け、どうにかこうにか義久さんたちを退却させ、来島城を落とすことには成功しました。しかしこちらの損害も甚大。ほぼ壊滅状態で、ギリギリの勝利でした。この勢いで島津領へさらに攻め入る、ということはできそうにありませんでした。
「はあ……この調子では島津を倒すのにどれだけ時間がかかることやら」
わたしはため息をつきました。島津との戦いが実際のところ天下取りに直結するだけに、一筋縄で行くとは思っていませんでしたが、これは予想を上回る厳しさです。
「もう少し、なんとか戦いを楽にする方法はないものでしょうか」
「わずかではあるが、手間を省く方法はあるぞ」
信玄公の言葉にわたしは食いつきました。
「ど、どうやるんですか!」
「簡単に教えては面白くないであろう」
「じゃあ、ヒントだけでも!」
「……人材を活かすことを考えるのだ。力押しだけが勝利への道ではないぞ」
「人材を……」
確かに、正攻法で苦しむようなら搦め手から攻めるというのはその通りかもしれませんが……。
わたしは武田軍の武将一覧としばらくにらめっこを続けました。そして、ある人物の名前が目に留まりました。
「わかりましたよ信玄公。百地三太夫さんを使えということですね。忍者の百地さんの技能を使えば、破壊工作や暗殺で戦わずして相手の戦力を減らすことができます!」
「惜しいな。百地だけではない」
「まだいましたっけ……?」
今のところわたしたち武田軍に忍者は百地さん以外いないはずです。かつて在籍していた服部半蔵さんは上杉家に捕まって登用されてしまいましたし。
百地さんのほかに特殊な技能を持つ人物となると……。
!!
「宇喜多直家さんですね! 趣味が暗殺の!」
「ご名答だ」
信玄公がニヤリとしました。
このゲーム、百地さんや半蔵さんといった忍者は皆暗殺技能を有していますが、普通の武将で暗殺技能を持つ者は数えるほどしかいません。宇喜多直家さんはその数少ない武将の一人なのです。まあ、史実でもバリバリ暗殺をやらかしてますから納得ですよね……。
「百地さんと宇喜多さんの暗殺をフル活用すれば、多少はこちらの損害を減らせるかもしれませんね……」
「かなり汚い手になるが、良いのか?」
「今はそんなことは言ってられません。殺って殺るです!」
こちらの戦力をある程度回復させてから、まずは四国から島津を追い出すことに専念することにしました。
百地さんと宇喜多さんを優先的に出撃させ、暗殺により武将ごと敵部隊を消滅させるという我ながらあくどい手で敵を減らします。一つの戦で部隊が二つ消えるわけですから、かなりの効果がありました。
「どうでもいいですが、百地さんで暗殺に成功すると『許してにゃん☆』って言いたくなりますね……」
「本当にどうでもいいわ!」
かくして、長宗我部の協力も得ながら順調に伊予と土佐を攻略し、1582年には四国から島津の勢力を一掃することに成功したのです。
九州侵攻への足掛かりは得たものの、その前にまずは中国地方から島津を追い出したいところです。
今宵はここまでにしようと思います。
次回「わたしの同盟相手と同盟相手が修羅場すぎる」ご期待ください。