第18話 大友脅威のメカニズム
1560年のゲーム開始時から、大友家はイケイケでした。早い時期に龍造寺家を滅ぼし、その家臣団を統合。九州において島津と戦う一方で、大内家を倒して中国地方へ進出、河野家を倒して四国にも欲を見せる……という状況が続いていました。
ついに島津を滅ぼしたのが昨年(1575年)のことでした。九州を完全に制覇したわけではありませんが、唯一残った阿蘇家は大友と同盟していますから実質的には同じことです。旧島津家臣が加入してほぼ九州オールスターズとなった今、本腰を入れて東進してくるのも当然のことでしょう。
「あらら、毛利が大友にどんどん押し込まれています。この分だと滅亡するのも時間の問題ですよ」
「救援には行けぬのか」
「システム上、わたしたちの所有している岡山城や高松城が合戦の範囲に入らない限り無理ですね。まだそこまでは侵攻していません」
「ふむう」
信玄公は考え込んでいるようでした。
「このままでは、毛利や尼子を呑み込んでさらに大友が強大になるであろう。それを防ごうと思えば、毛利との同盟を切ってこちらが先に毛利を呑み込むほかない」
「ただ、そんな余裕があるかといえば厳しいところです。赤松はもはや問題ではありませんが、同盟が解消されてしまった今川が問題ですよ。放っておくわけにもいきませんし」
「ふむ。……宵子、どうするかはお主が決めるのだ」
信玄公はこういう局面ではなんだかんだ言ってわたしを尊重してくれます。わたしは既に方針を決めていました。
「はい。まずは後顧の憂いを断ちます。大友の侵攻に対してじゅうぶんな備えをしたうえで、一定の兵力を信繁さんのもとへ派遣し、今川を潰しましょう。大友と本格的に戦うのは、それからです」
「妥当だな。とはいえ、大友の進軍がわしらの予想より早くなるかもしれん。それは考えておくのだぞ」
「了解です。だからこちらも、急いで今川を叩くつもりです。山県さんと馬場さんを中心とした精鋭を送り込みます。侵掠すること火の如く、です!」
というわけで1576年冬、派遣されてきた山県さんたちと合流した信繁さんたちにより、今川から興国寺城と二俣城を攻め取りました。残る今川の城はあと3つです。ちなみに、戦の合間に本多忠勝さんを教育することも忘れませんでした。武勇170越えの山県さんによるスパルタで、本多さんの能力はぐんぐん伸びて行きます。
続く1577年春、毛利元就さんが亡くなりました。
「あー…これはますます毛利が弱体化しますね。もっとも、元就さんが生きていても状況は厳しいでしょうけど」
「まあ、毛利が滅びるところを見ずに済んだとも言えよう」
元就さんの後を継いだのは、次男である吉川元春さんでした。史実だと孫の輝元さんが当主になっているわけですが、ま、ゲームですから。単純に能力の高い血縁者が選ばれたということなのでしょう。
そして1577年夏。今川攻略の準備をしていたところでしたが、大友の侵攻が始まってしまいました。信玄公の心配していた通りの展開です。
「四国の西半分はすでに大友のものでしたが、讃岐にまでついに手を伸ばしてきましたよ」
「対決の日は近いな」
…と、思ったら。
「大友の毛利攻めに高松城が巻き込まれました!」
「なにぃ!」
同一ターンに二か所で戦を起こすとは予想外。恐るべき侵攻速度です。
とはいえ高松城には勝頼さんを中心とした主力が結集しています。落とされることはまずありえません。
「狙いは毛利であろうからな。相手も本気で高松城を落とそうとはするまいよ」
「ちょっかいはかけてくるかもしれませんね。お手並み拝見と行きましょうか」
わたしたちの予想通り、大友軍の主力は毛利の城を攻め落としにかかりました。助けようにも、こちらからはかなりの距離があります。
「かわいそうですが、見殺しにしましょう」
わたしはニッコリ笑って言いました。
「……冷静じゃのう」
信玄公が褒めてくれている、と思っておきましょう。
画面には、大友軍が毛利の城を攻める様子が映っています。…と、これまで見たことのない、ドーン!という効果音がわたしの耳に入りました。
「なん……だと……?」
大砲の音でした。大友軍は、わたしたち武田が全く持っていない大砲を備えているのです。それも全部隊が!
「あんなもの、このげーむで使えるのか! 聞いておらんぞ!」
信玄公が珍しく狼狽しています。わたしはあわてて説明書を調べました。
「ええと、海外との貿易港と、鉄砲の生産地を押さえていれば、大砲を購入することが可能だそうです!」
大友は博多と薩摩がありますから、資金さえあればいくらでも大砲を手に入れることができるのでしょう。
……それに比べ、わたしたちは堺を取っていますから海外貿易港の条件は満たしていますが、鉄砲の生産地は持っていません。つまり大砲を購入することはできないのでした。
大友軍の砲撃が続きます。通常なら門を破壊していかなければ城の中の敵に攻撃ができないところなのですが、砲弾はやすやすと城壁を飛び越えて着実に毛利軍の兵力を削って行きます。おまけに混乱の追加効果により、ほとんどの毛利軍が行動不能状態に陥っています。
そして、易々と大友軍は毛利の城を落としていきました。……ほぼ全部隊が大砲を有している大友軍に、勝てるのでしょうか。
今宵はここまでにしようと思います。
次回「大友包囲網」ご期待ください。