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第14話 大乱戦足利ブラザーズ

 説明するまでも無く、毛利元就さんは中国地方の覇者と言える存在です。ただ、それは史実での話。

 ゲームの中では、西は九州から侵攻してくる大友宗麟おおともそうりんさんに、東は播磨を中心に勢力を伸ばす赤松義祐あかまつよしすけさんに追いつめられ、スタート時よりかなり衰退しています。

 そして、元就さんがやってきた要件は予想通り、同盟の申込でした。

「わたしたちと毛利家の間には赤松家がいます。毛利が生き残るためにも、わたしたちに赤松を倒してほしいということでしょうね」

「うむ。どう思う、宵子」

「同盟を結んで損は無いと思います。赤松を挟み撃ちにできますし、いずれ大友が東へ攻め上がってくるなら、毛利を盾にしてこちらの被害を抑えることもできますから」

信玄公はニヤリとして、

「わかってきたではないか」

 というわけで、わたしたちは毛利からの申し出を承諾しました。

「こうなると、今後の敵は赤松家ということになりますね」

「本願寺が岸和田と紀伊に居座っているが、どうする気だ」

「ううーん」

 史実で織田信長さんが本願寺に苦しめられ、焼き討ちまで行ったことが思い出されます。戦うとなれば強敵なのは間違いないでしょう。本願寺とやりあって時間を取られれば、その間に大友家がさらに巨大化するでしょう。

 そして史実では信玄公と本願寺は仲良しでしたから、それを反映してゲームでも武田家と本願寺の友好度はデフォルトで高いのです。となれば結論は、

「本願寺と同盟を結びましょう。中国地方への進出に専念すべきです」

「うむ、わしもそう考える。同時に相手にする敵は少ない方が良い」

 さっそくわたしは政治力の高い内藤昌豊さんを使者に立てました。ちなみにこの内藤さんには、三好家と戦っている合間にシコシコと朝廷への献金にも行ってもらっていました。もはや外交の専門家です。

 同盟は滞りなく成立しました。北の斎藤、南の本願寺と結んだことで、主力を安心して西へ差し向けることができます。


 かくして赤松家との全面戦争に突入……する前に、どうしても目につく所がありました。

「足利将軍家が健在ですね……」

 二条城は三好長慶さんに追い出されたものの、足利義輝さんは隣の丹波亀山城に立てこもっていました。一つの城しか有していないのだから周囲の勢力にすぐに飲み込まれるかと思いきや、残存戦力が集中しているからか攻められることもなく残っているのです。腐っても征夷大将軍というところでしょうか。

「赤松、さらには大友との戦いまでに、少しでも戦力を増やしたい。足利家の力を吸収するためにも、丹波亀山城を攻めるぞ」

「はい」

「それに……義輝公がいる限り、将軍の地位も空かぬからな」

 信玄公の目がギラついています! 野心を隠そうともしませんねー。

 せっかく信玄公がギラギラしているので、ゲームの中でも信玄公自ら丹波亀山城を攻めることにしました。メンバーは飯富さん馬場さんほか、せっかく堺で鉄砲を安く仕入れることができたので、佐々さんと滝川さんの鉄砲隊も連れて行くことに。

 足利家もそれなりの戦力が揃っていますが、まあ問題なく落とせるでしょう……と、気楽に構えていたところ、予想外の事態が起こりました。

「はぁっ!? 斎藤家と三好家が乱入してきましたよ!」

「何ぃ!?」

 このゲームのシステム上、ある城で戦争が発生すると周囲の城も巻き込まれることになります。無視して静観を決め込むことも可能なのですが、戦争に参加してくるということは……

「丹波亀山城を狙っているんですね……」

「そういうことであろう」

 斎藤家も三好家も、わたしたち武田家の味方として参加してきます。が、例えば斎藤家が丹波亀山城の本丸を落とせば、城は斎藤家のものになるのです。

「他家が起こした戦を利用して勢力を広げようとは、狡猾な!」

「わしらも人のことは言えぬがな」

 わたしは聞こえないふりをしながら、

「まあ斎藤家は同盟を結んでますから、わかるんですよ。さんざんわたしたちと戦ってコテンパンにされた三好家までこっちに味方する意味がわかりませんよ。調子が良すぎっていうか、ンモー」

「この際、城にやってきた三好軍を討つことはできぬのか?」

「それはシステム上、できないようですね。味方は味方ってことで……。残念です」

 

 そんなわけで、兵力の上では斎藤家と三好家を加えてわたしたちが圧倒的に多数になりましたが、その内では各陣営の思惑が入り乱れるカオスな状況で戦が始まりました。斎藤家からやってきた援軍の中心は、明智光秀あけちみつひでさんと松永久秀まつながひさひでさんです。松永さんは三好配下だったところを斎藤さんに捕らえれれて登用されたのでしょう。

「すごく……裏切りそうです……」

「斎藤龍興はよくこの二人をまとめられるのう」

 その二人が城に突っ込んでいき、わたしたち武田軍も遅れないように気を付けてついていきます。三好勢はわたしたちの進軍速度についていけないようです。放っておきましょう。

「せいぜい足利軍の兵力を明智と松永に削ってもらおうではないか。そして敵武将はわしらが捕らえればよい」

「ですね。わたしたちの兵を無駄にする必要もありません」

 わたしと信玄公はゲス顔で会話しながら兵を動かします。足利軍の中心である細川藤孝ほそかわふじたかさんと足利義昭あしかがよしあきさんが明智さんたちとぶつかっているようです。

「細川さんは戦闘も政治も教養も高くて有能ですし、ぜひ手に入れたい人材ですね。義昭さんも戦闘こそからっきしですが政治や魅力は意外と高いですし、せっかくですから引き入れたいところです」

「うむ」

 しばらくは攻撃もせず戦を見物し、ある程度細川さんの兵力が減ったところで飯富さんの騎馬隊を突っ込ませ、細川さんを捕らえることに成功しました。続けて義昭さんも同じやり方でゲットです。

「ふっふっふ。これで残すは本丸にこもる義輝さんだけです」

「もう斎藤軍の力を借りることもあるまい。斎藤の入り込む余地が無くなるよう囲み、一気に片を付けるのだ」

「了解です!」

 いかに剣豪将軍といえど、信玄公と飯富昌景さんという戦闘の数値が150越え2人の集中攻撃の前には成す術がありません。しばらくすると信玄公の部隊が本丸に突入し、義輝さんを捕らえることに成功しました。

「よし、勝ちましたよ! 斎藤にも三好にも邪魔されずにすみました」

「義輝公はなかなか強い。いったん解放したところを登用するがよかろう」

「はい。しかしこれで、室町幕府を消滅させてしまいましたよ、わたしたち。ここで武田幕府を……といきたいところですが、システム上まだ不可能なようです」

「どのような条件が必要なのだ?」

「130以上の城を所有していることと、二条城を所有していること、それに朝廷への献金もまだまだ足りないようです」

「そうか……」

 信玄公は残念がっているようでした。ゲーム内で信玄公が生きているうちに征夷大将軍に就任することは厳しいかもしれません。


 この時、1572年冬。史実で信玄公が亡くなる年の前年のことでした。


 今宵はここまでにしようと思います。

次回「龍と虎」ご期待ください。

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