LIFE THE WORKER
初めまして。如月と申します。堅苦しい気持ちを緩和して・・・。小説を作るきっかけを作ってくれたあの作者やこの作者。感謝してます。一つ作ると、最後までこだわるので、よろしくお願いします。ちなみに更新頻度はかなりまちまちに違いますのであしからず。
強い風が、この一帯を吹き荒らしている。
この日一番の強い風に見舞われている。
雑居ビルには誰も居ない。
今朝方、工事現場の作業服を着た三人の男達が、このビルを視察に来た。
おそらくビル解体、若しくは増設の視察だろう。
それからというもの、14時間たった今、誰も出入りはしていない。
が、そんな事俺には一切関係ない。
空を見上げるとすでに辺りがどんよりとしている。そういえば朝のニュースで「曇り」と言っていたな・・・。まるで俺の今の心境を表しているみたいだ。しかし、俺はこの天気は寧ろ絶好の日和だな、と槌田 将太は鼻で笑った。
もうすぐこの世からオサラバだ。
こんなクソ世の中、生きていても何の意味もない。
会社ではクビになるし、今の彼女には振られるし、歩いていたらスリに遭ったし・・・。
こんな世の中、全てが朽ち果てている。
なら俺から、あの世へ行ってやろうか・・・。と考えていたら、ホントにこのようになってしまった。
ああ、あの時、借金などしなければ・・・。
そんな後悔してたって前へは進めない。
後、一分。槌田は腕に身に着けている腕時計をしきりに確認した。ゲームセンターで取ってきたニューモデルの時計だ。
針は刻々と進んでいる。
三十秒。心臓がバクバクしている。
何故だろう。この時になって、急に「死にたくない」と心が叫んでいた。
しかし、こうでもしなければ、助かる方法は無い。リスクを伴わなければ何もかも手に入らない・・・。そう槌田は感じていた。
二十秒。ふと、ある人を思い出していた。羽山 美保だ。
羽山とは昔、二年間付き合っていた。しかし、もう会えない。というか、会いたくない。なのに、なんで思い出してしまったのだろう・・・。彼女との思い出が走馬灯のように駆け巡ってくる。
しかし、もう会えないと分かった今、もう一度会いたいと願ってしまった。
馬鹿だな、俺は・・・。
後、十秒。
槌田は、手摺に足を掛け、登った。ビルの下は真っ暗。完全な闇だ。まるで闇が俺を今か今かと待ち侘びているみたいだった。ビルの下はこんな風景になっているんだな、と今更ながら変なことを考えてしまった。
後、五秒。槌田は心の中でカウントをしていた。
「五」
深呼吸をして、空を見上げた。
「四」
息を吸って、吐いて。これが最後の深呼吸なんだなと実感する。
「三」
一歩、歩を進めた。
「二」
今にも、歩を進めれば落ちそうなところへ立った。
「一」
この時だけ、時間がスローモーションのように感じた。
「零」
時が止まった。音が無くなった。
「バイバイ・・・みんな・・・。」
そう言って、槌田は、ビルの屋上から飛び降りた。
記憶があちこちに蘇る。
最後に槌田はこう思った。
「もし、輪廻転生したら・・・何に・・・なるんだろうな・・・。」
連載完成はまだなので皆さんお気楽にお待ちください。