幸福と不満
リビングに響くテレビの声、そしてパソコンのキーボードを打つ音。私は二十年前建設会社を設立し、今では日本有数の大企業になっている。今日は家で一日中パソコンと格闘中だ。私は昔の人間なのでこういった機械類はあまり好きではない。
「ねー、パパ。明日はお買い物連れてってくれるんでしょう?新しいバッグ買っていいかしら?すごく可愛いのがあるの。」と妻が話しかけてきた。妻はとても美人な上、性格もそこまでキツくはなく、家事などもそこそこやったりする。それに“お金目当て”でもなさそうだ。そんな訳で十五年前結婚した。買い物がとにかく好きでお金がかかるのだが、お金などいくらでもある。それにきちんと許可を取ってくれている。信頼できる自慢の妻だ。
「ああ、いいぞ。」と返事をして置いた。そうすると小学生の娘も「パパ、私も洋服買っていい?」とおねだりしてきた。全く、誰に似たのだか同じようなことを聞いてくる。妻も愛しているが、娘はそれとは別に可愛いもので「もちろんだ。」と言ってしまう。甘やかしすぎかな、とも思うが服を買うぐらいいいだろう。
このところずっと忙しかったので、家族で出かけるのは久しぶりだ。わたしも楽しみだ。…しかしなぜだろう。何かが足りない。感情がひとつ欠けているな、そんな気がする。…まあ、いいか。今が幸せならそれで。