安楽
それからも、智鶴は幸せで平和な生活を続けた。
今日は、街で可愛い髪飾りを買った。
昨日は、真剣を使えるようになった。
一昨日は家事が出来るようになって褒められた。
智鶴の毎日が、幸せで溢れかえっていた。
城のお姫様として、
父親の金蔓として生きる必要がなくなった今、智鶴は自分の足で人生を歩んでいく喜びに浸っていた。
「智鶴。今帰ったよ」
「うむ。よく帰って……佐介、その傷!!」
智鶴が振り向くと、そこには怪我だらけの佐介の姿があった。
「どうしたのじゃ!?」
「ちょっとね」
「と、とにかく治療……」そう言って、智鶴は気を集中させ、佐介の怪我の治療に取りかかった。
ものの数分で血まみれ同然だったものが完璧に塞がっていた。
「智鶴、ありがとうな」
「こういう時用の妾の能力じゃ。気にするでない」
「ん。そうだな、助かったぜ」
「よいのじゃ」
満足げに智鶴は呟いた。
「そうじゃ、後で剣の稽古つけてたもれ、佐介!」
「おう! じゃ、早速やるか。智鶴〜ついて来い」
「言われんでも!」
佐介の後を追いかけ、勢い良く小屋の戸を開けた。
「神童と言われたお前が道を踏み外してこんなとこで、お姫様とチャンバラか。天才の名が泣くぞ……。ま、どうせ、すぐ終わるし。関係ないか」
風が強く吹き、彼女、の長い髪を揺らした――――。