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散髪
「こんなもんでいいかな?」
「お、おおー。短くなっておる! 頭が軽いぞ!? 佐介」
智鶴は短くなった髪を触り感嘆した。佐介は楽しそうにその様子を見ていた。
かつて、立った状態でも地面についてしまうほどの長さの髪を誇っていた智鶴の髪は今となっては肩に少しつく程度にまで短くなっていた。
「これで、自由に動き回れるぞ! 佐介~」
くるくると回りながら楽しそうに智鶴は笑ってた。
「ってかさ、お姫様って外に出る事ってあんまないよな。本来的に」
「うむ。でも、茶会に出かける為に駕籠に乗って出かける事くらい、良家の家じゃある。だが妾はそれすら許されなかったのじゃ」
少しさみしげに智鶴は答えた。
「だからの、佐介。妾には友人などと言う存在は一切なかったのじゃ。だから、佐介。お主は妾の初めての友人じゃ!」
「初めて……」
「うむ。お主には沢山いるのかも知れぬがの」
会ってみたいものよのぉ。と呑気な声で智鶴は付け加え、綿のほとんど入っていない布団の上に寝転んだ。
佐介の顔が一瞬歪んだように見えた。




