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前説
窓辺に腰掛け、上を見上げれば四角い空が広がっている。
人一人入れない程小さな窓。それがその部屋で見れる外の世界の全てだった。
狭い空に想いを馳せながら、はぁっと小さなため息をついたのが、この家の所有者の娘である智鶴であった。
そんな智鶴には特殊な能力があった。治癒能力だ。
その物が完璧に死んでいない限り、医者がさじを投げた者でも
普通に元気に遊び回れるほどの回復を可能とする高い能力だった。
智鶴の父親は金持ちであったから、自分の子がどこの馬の骨とも知れぬ輩に連れて行かれぬように
智鶴をこの部屋に閉じ込め、外に一切出さぬようにした。その高い治癒能力で、金儲けが出来るからだ。
母親は止めさせようとしたが、父親は聞く耳など持たなかった。
その高い治癒能力を我が物にしようと、何人もの大名の手下が智鶴に襲いかかり、
その度に辛くも智鶴の家の配下の者が勝つという、スレスレの状態であった。
もう智鶴の為に何百、何千もの人間が死んでいた。それが、智鶴は何よりも嫌だった。