罠
「ちょくちょく人間が来るようになったな」
「予定通り入り口のゴブリンは戦闘になったらすぐに外に逃げるように指示を出しております」
「それでいい、中に入っていく人間は奥で処理する」
やってくるのはおっさんばかりだ。
毒煙を吸ったままゴブリンと戦闘になってそのうち死ぬ。
こっちにも被害は多少あるがゴブリンの繁殖力でカバーできる。
「それにしても農民ばかりだな」
「ですがブラッドエキスは抽出出来そうです」
アイリスが魔法を唱えると赤い結晶が手の平の上に生成される。
「これがブラッドエキスか」
「私が飲んでも強くなりますしゴブリンに与えても進化すると思います」
「最初の一つはアイリスに使ってもらおう、最後の砦だからな」
「分かりました」
「…ん、農民じゃないな?」
「新人冒険者のようですね」
ーーーーーーーーー
「これがダンジョン…うわぁ臭い…」
1人の新人冒険者がダンジョンに挑戦する。
名前はリーファ、駆け出しの冒険者。
「中は広いのかな?最初からゴブリンがいるんだ」
「オンナ?」
「女性を見るのが初めてなのかな?だとしたら本当に生まれたばかりのダンジョンみたいだね」
「オンナ、オカス!」
(この感じだとダンジョンはかなり狭そうだし本当に簡単に攻略できそうかな)
「魔物に容赦はしないからね、早く帰ってシャワー浴びたいなぁ」
入り口のゴブリンは逃げる暇もなく殺される。
「2匹くらいだと余裕だね」
足を止めることなく先に進む。
先は入り組んでいて狭くなっている、
体は小さい方だから苦労はしないが道に迷わないかだけ不安だ。
「少し面倒かなぁ」
ーーーーーーーー
「地下二階まで来たようですね」
「さてどうなるか」
ーーーーーーーー
「何この煙…臭い…」
身を屈んでリーファは前に進む。
煙に気を取られていたリーファは隠れていたゴブリンの奇襲に対応が遅れる。
「ッケー!」
振り下ろした棍棒がリーファの肩に当たる。
体制を崩したリーファは急いで立て直しをはかる
「っく!」
ゴブリンの首にナイフを突き立て殺すものの、足首を捻ったリーファは動きが鈍る。
「少し煙も吸っちゃったし引き返した方がいいかな…」
少し悩んだリーファが取った選択肢は、前に進む。
「生まれたてのダンジョンは多くても10匹くらいしかゴブリンがいないって言ってたし大丈夫かな」
ペースを落として先に進むリーファは扉の前に立つ。
「ここが最後なのかな?」
部屋に入ったリーファは後悔することになる。
「…何…この数」
最後の大部屋にはゴブリンが30体は控えていた。
戻ろうにも一度閉まった扉が開くことはない。
「そんな…こんなにいるなんて…」
「抵抗はやめておきなさい」
「誰!?」
「私はアイリス、命を粗末にすることはないわ、武器を捨てて投降すれば命は助けてあげる」
「生まれたてのダンジョンにもうマスターがいる?そんなの聞いたことがない…」
「それで、戦うの?」
「死んでも出来るだけ多くの魔物を道連れにするわ!」
「貴方が死んでゴブリンを10匹殺しても翌日には10匹生まれるというのに…無駄なことを」
「あなたを倒せば終わりでしょ?行くわよ!」
リーファはアイリスに向かってまっすぐ飛び出す。
しかし届くはずもなく、ゴブリンに体当たりされ吹き飛ばされる。
「きゃあ!」
「殺しちゃダメって大変なのよね」
「私はまだ戦える!」
起き上がったところをゴブリンが棍棒で頭を殴り気絶させた。
「戦えなかったわね」