⑤
朝から身支度を整え出かける準備をする。
「澪月。今日は夕立が来るから早めに帰ってきなね。雨の日は良いことが起こらないから。」
この町は雨を嫌う人が多い。
理由は簡単。縁起が悪いから。
「大丈夫だよ。そんなに遅くはならないから。」
気乗りはしないがあの爺さんに会いに行くか。
この町の出来事なら何でも知ってるだろう。
まだ朝なのに強い日差しにため息を吐く。
年々、夏が忌々しく感じてるのはこの暑さのせいだろう。
「こっちだ!」
「まってよー!」
「鬼さんこちら!手のなる方へ!」
楽しそうに遊ぶ子どもたちの声が聞こえてくる。
朝の体操が終わってからも家に戻らず遊んでいるようだ。
公園の入り口には桔梗公園と書かれている。
「ここが噂の場所か。」
朝だからか特に変な感じもしない。
「ねぇ、紫苑くん大丈夫かな…。あの日からお部屋から出てこないんだって。」
「おい!!その話はしちゃいけないって言われてるだろ!!」
男の子が女の子の肩を険しい表情で掴む。
「だって次は私達かもしれない!!」
女の子の不安な叫びに遊んでいた周りの子どもたちも顔を曇らせる。
「もうやめてよ…。」
今度は違う女の子が泣き始めてしまい、こちらにまで子どもたちの不安が伝わってくる。
見ているだけも不憫だと思い声をかけようと公園に入ろうとしたときだった。
今まで風はふいていなかったのに公園の中に入られるのを拒むように強い風が吹いた。
「きゃぁぁぁ!!」
「隠し神がくるぞ!!逃げろ!!」
子供達の叫び声と公園から逃げる無数の足音の中に小さく聞こえた声。
「たすけて」
しかし声の主は公園にはいない。
「何だったんだ?」
公園には立ち入らず目的の場所へ歩を進める。
「予想より早く解決しないとまずいことになりそうだな。」
子供達のやり取りと表情を思い出し焦りが募る。
けど、今は情報を集めなければいけない。