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「澪月今日は遅かったねぇ。早く手を洗ってきな。」

家に帰るといつものように婆ちゃんから小言を言われることはなかった。

もしかしてこの鈴に他にも効果があるのか?

どっちにしろ都合が良いことには変わりない。

これ以上婆ちゃんとの関係を悪化させて良いことはない。

突然耳鳴りと悪寒がする。

「ねぇ。婆ちゃん今日なんかあった?」

ばあちゃんの後ろ姿に黒い影。

「特に何もないよ?」

「そう。ならいいんだけど…。」

本当に気づいてないのか。

実体が見えないのに存在感が異常だ。

婆ちゃんが居間へ姿を消すと不気味な気配は消えた。

何だったんだ。

ずっと婆ちゃんの背中に縋りついていた。

今までいなかったのに何故?

そもそもあれが見えないぐらい婆ちゃんの力が弱まっているのか?

年々弱まっているのは何となくわかっていたけど婆ちゃんからは何も言ってくれなかった。

だから、僕も聞かないほうがいいかと思ってたが状況が悪すぎる。

心を決めて居間へ行ったが特に不気味な気配はなかった。

婆ちゃんに気づかれないように他愛もない話をしながら夕食を終えた。

明日からは隠し神の情報を集めないといけない。

「最初は公園での出来事を知るべきか…。」

きっと聞き込みは理来や紬がやるだろう。

なら僕はあそこに行くしかない。

あの場所ならこの町の出来事がすべてあるはずだ。

深呼吸をゆっくりし、眠ろうと思い目を閉じる。

その時だった。

生暖かい風と禍々しい気配。

「深入りするな人間。死ぬぞ。これはお前のためだ。元の場所へ帰れ。」

威圧感に息を呑む。

でも、何故だか恐怖は感じない。

意を決して目を開けると枕元に立っていたのは女だった。

「お前は…鬼か?」

「やはりお前は視える側の人間だな。」

鬼女はゆっくりと枕元に座り込む。

「視えるとなにかあるのか?」

「ハハハッ…。流石尊の血筋だな。そう警戒するな。殺そうと思っていればお前はもう息をしていない。」

愉快そうに言う。

「なんで婆ちゃんの名前を知っている?」

「あぁ。尊とは長い付き合いだ。けどな、もうあの子に私は見えないらしい。」

見えない。人間ではないやつが言うから言葉の重みが違う。

本当に霊力がなくなりかけてる。

「あの子との約束がある。鬼は一度交わした約束は死ぬまで守る。」

「婆ちゃんとの約束?」

「いいかチビ助。お前達がやろうとしてることはあの尊が全盛期の時でもできなかったことだ。社に近づくな。」

婆ちゃんの全盛期でもできなかったこと?

そんな話聞いたことない。

「お前名前は。」

「私は(べに)と言う。尊からもらった名だ。」

紅。婆ちゃんの好きな色だ。

とりあえず、話をしてみるのはありか。

「なんで僕のところに来たんだ?」

「危険な事に首を突っ込もうとしているからに決まっているだろう。尊はお前のまとっている気配も感じ取れないらしい。」

気配?紅は何か感じているのだろうか。

「お前から狐の匂いがする。」

狐…。桜牙のことか。

「人ならざるものと関わるのはやめておけ。命がいくつあっても足りない。」

「それでも誰かがやらなければあの子達は助からない。子供を見捨てるほど僕は冷たい人間じゃない。」

僕がそう言うと紅は少し眉を下げ困った表情になった。

「お前は尊にそっくりだな。頑固でお人好しすぎる。はぁ…。仕方がない、もし本気で助けが必要なら私の名を叫ぶといい。」

それだけ言って紅は窓から外へ飛び出して消えた。

「あ、おい!何なんだよ。」

ばあちゃんに人外の知り合いどれだけいるんだ。

でも、一応協力者が増えたことは良しとしよう。

紅の一件でなんだかすごく疲れた。

布団に倒れ込むようにして目を閉じた。




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