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夏の空は青く澄んでいる  作者: 不来方椿
夏の始まり
3/16

目を開けると暗い夜道に立っていた。

「ここは?」

ばあちゃんの家の部屋にいたはずだ。

見覚えのない風景に戸惑っていると古い唄とともに無数の提灯の明かりが見えた。

「めでたや、めでたや。姫様が結ばれる。」

「ばれてはいけん。大事な嫁入りじゃ。」

提灯を手に持っている人々は口々に何かを呟いている。

この人たちには僕が見えていないのか。

近づいてみても反応はない。

むせ返るような甘い香りに手で鼻と口を覆う。

夢にしては香りも感覚もはっきりしすぎている。

一際目立つ狐の面をつけている白無垢姿の女性がいた。

女性は人力車に乗っており顔は面で見えない。

なのに、何故かこちらを向いて見ている。

僕を目で追っている。他の人たちは気づいていないのに。

女が近づいてくるほど耳鳴りが強くなり、身体はガタガタと震え始める。

見てはいけない。知ってはいけない。

そう思っているのに目が離せない。

心臓が痛いほど脈を打ち始める。

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

人力車は僕の目の前に止まり、女がこちらへ降りてくる。

恐怖で身体が動かない。

それでも女の動きは止まることはない。

異様な雰囲気と緊張で目の前が霞む。

女が狐面を外そうとしたときだった。

視界がいきなり暗くなった。

「まだ。君が見るべきものじゃない。帰りな。」

白檀の香りと共に男の声がした。

「澪月!!!!!!」

耳元で大きな声にびっくりしてはね起きる。

「大丈夫!?尊おばあちゃんに頼まれて起こしに来たら魘されてるからびっくりしたよ!!」

目の前には幼馴染の(つむぎ)の姿があった。

「紬?なんで。」

「今日の約束忘れたの??外に理来(りく)も待ってるよ!」

紬は太陽のような明るい笑顔で言う。

「着替えてくから先に行ってて。」

「うん!はやくきてね!」

汗だくの服にさっきのが夢だったのかと安堵する。

もし、あのお面が外されてたら___。

僕はどうなっていたんだろう。

手の震えに気づかないふりをして服を着替える。

そういえば桜月はまたあそこにいるのだろうか。

強い日差しと蝉の声にふと思い出す。

夕方にでも行ってみようか。

いなかったらそれでいい。

でも、何故か無性に彼女に会いたいと思った。

この青い空の下で彼女は誰を待っているんだろうか。

それは僕が聞いてもいいことなのだろうか。

「おーい!!澪月!!はやくこいよー!!」

外から理来の声が聞こえてくる。

「今行く。」

慌てて着替えて玄関へ向かった。

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