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夏の空は青く澄んでいる  作者: 不来方椿
夏の始まり
2/12

「ただいま。」

「おかえり。澪月(みつき)。今日はなんだか良いことがあったようだねぇ。」 

(みこと)ばあちゃんはニコニコと優しい笑みを浮かべながらゆっくりと玄関の方へ顔を出す。

「良いことっていうか新しい友達みたいなのができたかな?」

「へぇ。それはそれは珍しいねぇ。誰か町の外から遊びにきてたのかね。」

ほぼ余所者が来ることのない町。

町の人たちが外へ行くことも少ないと言われている。

「どうだろうね。」

祖母の横を通り過ぎて手を洗いに行こうとすらと腕を強い力で掴まれた。

廊下の電気が一瞬点滅する。

「澪月。約束破ったね。」

「なんのこと?」

真剣な祖母の表情に視線を逸したくなるのを堪える。

「あそこはもう禁足地になっておる。人が足を踏み入れてはならん。」

そう。雨ノ宮(あまのみや)

この町の人たちはあそこの神社をその名で呼ぶ。

由来も知らないし、なんで禁足地になってるのかも知らない。

いつだってばあちゃんは、

「澪月。お前は魅入られやすいから宮には近づいてはいけない。命に関わるかもしれん。」

と同じことを言う。

「分かってる。」

祖母の家に来る理由、その一つが僕が見える側であるということ。親族で唯一の理解者は尊ばあちゃんだけだからだ。

「けどなんで禁足地なの?」

祖母は何も答えずに居間へ行ってしまった。

その後ろ姿を見送りながら自分も洗面所へ行き手を洗う。

雨ノ宮のことを聞くといつも教えてくれない。

何を隠してるのか気になるが今の僕にはを知るすべもなかった。


「夕御飯にしよう。」

何事もなかったように夕食が準備されていく。

いつか知る時がくるのだろうか。

「澪月。危ないことをしなければ私はなんにも言わんよ。だけどなぁ。知らなくても良いことがこの世にはたくさんあるんじゃよ。」

そう言う尊ばあちゃんの表情は何だか泣きそうだった。

僕は何も言えず静かに夕飯を食べ、部屋に戻った。

「今日は疲れたな。」

ばあちゃんが敷いてくれただろう布団に倒れ込み天井を見上げる。

未だに自分の中で桜月が人間なのかそうじゃないのか結論を出せないでいた。

話しかけてきたり姿を見せてくる幽霊や妖、廃れ神(すたれかみ)など見たことあるが雰囲気や話し方などで人間どうか判断ができる。

だが、あの子だけはそうはいかなかった。

人間のようにも感じるけどそうでない気もする。

だから、名前は教えず苗字のみ教えた。

真名は知られると良くないとばあちゃんから言われていたからだ。

「なんであんなところにいるんだろう…。」


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