おっさんと少女…これはほぼ犯罪の現場!
「ふぅ…意外とここはモンスターが居ないのかな?さっきっからそんなにモンスターと会わないんだけど。」
・そもそもここのダンジョンってどこ?
・そんなもんだよ。結構ばらつきあるよ?
・心配する必要ないよ。…多分
「うぉい‼その多分やめろや‼ちゃんと確信を持って言えや‼」
とはいえ…実際こんな遭遇しないものなのだろうか?
俺が昔入ったときと、時間が経っているから変わっているという可能性もあるかもしれないけど…それにしたってモンスターでなさすぎだろ…
これじゃあルゼルのレベル上げに時間かかっちゃうじゃないか‼
「あっルゼルがしょんぼりしてるじゃないか‼お前らなんとか励ましてやれよ‼」
・画面越しの俺等に言われてもなぁ…
・無理定期
・アキラメロン
「くそっ…ん?なにか聞こえなかったか?」
耳を澄ませば、奥の方から剣をどこかにぶつけるような音が聞こえてきた。
誰かが戦っているのかもしれない。
「ん〜もしかして誰かピンチだったりするのかな?」
・いや…そういう音を出して人間をおびき寄せるようなモンスターもいるって聞くし、違うかもよ?長文スマソ
・人数少ないし別に大丈夫だろ。それよりどうするんだ?助けに行くのか?
・助けに行くとして、おっさんのせいで助けた人に怖がられそう…
・ていうかおっさんがいったところで戦力になるの?
「おい‼俺の顔の事を馬鹿にするなぁ‼少し気にしてるんだぞ‼」
うぅ…こいつらやっぱりひどい。
「戦力になるか…と言われれば正直厳しいだろうな。でもまぁ自分以外の誰かを救えるんだったらそれもありなんじゃないか?」
・いや違うだろ。あわよくば救った人から甘い蜜を吸いたいんだろ‼
・そうだったの!?おっさんさいてー
・おじさん…私信じてたのに!!
「そのノリやめろや!!はぁ…そんなに言うんだったら配信切るからな!!」
俺はそういった後、ルゼルに近寄って抱き上げた。
俺がルゼルの事を抱えて走らないほうが早くつくかもしれないけど、ルゼルが先に行って怪我でもされたら困る。
俺はルゼルが落ちないように支えてあげながら走った。
そして奥に進むにつれて段々とその音が大きくなってくる。
剣をどこかにぶつけたような音…その原因は人間同士の戦いが原因のようだった。
「…一体何をしているんだ?」
俺はそう思わず声を掛けてしまった。
ダンジョン内では他人の目がないことをいいことに、犯罪をしたりするやつがいる。そしてそれを止めようとする人達で度々争いに発展することもある。
そうなったときは当人たちで解決するのを見守ったほうがいいのだが…どうも気になる。
「…!ちょうどいいところに‼事情は後で説明するので加勢してください‼」
「その…それはできない。なにせこの争いの発端について知らないからな。どちらが悪いかなんてわからないし…」
「お願いします‼この人のこと止めるだけでいいので‼」
どうも争っていたのは少女と、1人の男のようだった。
男は武器を取り出しているけど、少女は武器をしまっている。
武器を取り出している男の方も興奮しているようで、度々暴言を吐いている。それに…どことなくふらついている気がする。
「とりあえずこの男の人を止めることにするよ。ただちゃんと理由は説明してくれないと困る。それに君自身についても後で話を聞きたい。」
「それくらいならお安い御用です。」
俺と少女は二人がかりで男の事を止めた。とはいえ俺は背後から男を取り押さえただけだが。
そして俺は男に近づいた時に気づいた。こいつ…酒くせぇ‼
「…あ〜なんとなく事情はわかった。疑って悪かった。」
「気づいてくれましたよね?酒臭いですよね‼やっぱりそうですよね‼この人、ダンジョン内でお酒飲んでたんです‼しかも結構度数高そうなやつを‼」
「そっか…それじゃあ俺はこのおっさんを連れて上に行くよ。君はまだまだすることがあるだろうから、気にせずいっておいで。」
俺の一つの特技として観察がある。
他人の事を観察して、状態を把握する。それが俺の特技だ。
この少女が着ている服は全然汚れていないし、剣も柄を見れば使い込まれていることがわかるが、刀身の部分はほぼ新品同然のような輝きを保っている。
あくまで俺の勝手な予想だが、男の事を放っておくこともできなかったが、ダンジョンから出てしまえば稼ぎもほとんどない状態で帰ることになる。
自分を優先するか、他人を優先するか…板挟み状態だったのだろう。
ここは少女の勇気ある行動に大人である俺が一肌脱ぐべきだ。
「いいんですか!?正直まだまだ実践経験を積まなければいけなかったので…というかお兄さんが抱えているそのわんちゃん…なんていう名前なんですか?というかわんちゃんを連れてきてるんですか?」
「まぁ犬と言われれば犬なのかもな。名前はルゼルっていうんだ。」
「そうなんですね‼あっそうだ‼ちょっとまっててくださいね…」
そう言うと少女は背負っていたバックパックからスマホを取り出して俺に差し出してきた。
「いい機会ですし、連絡先交換しませんか?」
「…俺は構わないけど…本当に俺の連絡先がほしいのかい?」
「いえ‼なんというか…将来性を感じたというか…言葉にするのが難しいです‼でもなんとなく仲良くなりたいなって思ったので‼それにお兄さん優しかったですし…」
「俺で良ければ…っとこれでいいかい?」
この日…俺のスマホに登録されている数少ない連絡先に目の前の少女の連絡先が追加された。
・や〜い犯罪者‼この未成年◯拐者め‼
・この変態‼見損なった‼
・出会ったばかりの子と連絡先を交換するとは…うらやま(殴
ゲフンゲフン…ずるいぞ‼
「ひでぇ言われようだわ…ていうか誘拐もクソもねぇし。そんな事言われると俺傷ついちゃうぞ?俺泣くぞ?」
・泣けや‼
・泣けおら‼
・変態‼
「ワァ…アッ…」
・ないちゃった‼
・草
・キメェ…wwww
「俺は…今からおっさんを抱えて上に戻るんだぞ!少しは慰めろや!」