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名前の割に優しいダンジョン

自転車を走らせつつ、俺はバックの中で眠たげな表情をしているこの子を見た。

この子と呼ぶのもなんか違う気がするので、俺は早速名前を考えることにした。色々な名前が頭の中に浮かぶが、しっくり来るものが出てこない。


ここは一つ…いい名前をつけてあげたいのだが、どうも思いつかない。

そんなこんなで俺は一番近くのダンジョンへと自転車で歩を進めた。


「ふぅ…ここに来るのは久しぶりだな。今も多くの人で賑わっているようだな。」


ここのダンジョンの名前は、『時を裂く激唱』という物でその仰々しい名前とは裏腹にめちゃくちゃ初心者に優しいダンジョンとなっている。


所在地は上野で、立地的にも比較的アクセスしやすい場所にあるのもポイントだ。

そして初心者に優しいダンジョンというのは少なく、結構重宝されている場所でもある。


俺はダンジョンの側に設置されている『監視所』へと入った。

監視書の役割はダンジョンの内部に1日に一度必ず立ち入り、ダンジョン内部に異変が起きていないかを確認するというものだ。


加えて、探索者たちからの救助要請が出ればすぐにダンジョン内に入り救出活動を行わければいけないという鬼畜っぷり…そのせいか年々、この仕事をしている人の人数は減っているそうだ。


そしてこの俺…ブラック企業勤めの一人の戦士には監視所の中に『友達』がいるのだ。

実に高校からの付き合いで、一緒の就職先にしないか?と誘われていたが、俺は能力のなさから彼と一緒の道に行くことは諦めたのだ。


そんな彼とは今でも連絡を取り合っており、今日は事前にアポをとってある。


監視所がダンジョンの側に配置されているというのは語弊がある。監視所はダンジョンの眼の前に配置されており、中に入る人を制限する役割もある。


なので本来ならこの長い列に並ばなければいけないのだが…俺はそれを無視することができるのだ‼


周りの人から「なんだこいつ…」とか「はぁ?なんで並んでないんだ…」みたいな視線を感じつつ、俺は監視所の中へと入っていった。


監視所の中は最低限といった具合ではなく、ちゃんと休憩を取ることができるようなスペースもある。そして俺の高校来の友人はそこで休憩を取っているようだった。


「よお久しぶりだな‼随分と大きな態度で休憩してるじゃないか。」

「悪いか?ってお前は変わらねぇな真。」


彼の名前は相楽百焼。高校ではダンジョン関連の職につくために勉強も運動も頑張っていた良いやつだ。そしてこんなふうに気兼ねなく会話ができる友人だ。


「いや〜驚いたよ。急に復帰したいとか言うからさ。それでどんな心変わりだ?ってか前みたいに沢山の荷物を持っていかないのか?」

「あの頃とは違うんだ。まぁ一つ面白そうな事に巻き込まれてね。ちょっと試してみたくなったんだよ。」

「…まぁわかった。ってそのバックは何だ。流石に不審物を持っていかせるわけにはいかないぞ?中身を見せてくれないか?」

「はぁ…しょうがないな。驚くなよ?俺がダンジョンに再び潜ろうと決心した要因だよ。」


俺はバックの中から、この子を取り出した。

急に明るくなったからか「くぅ〜ん」という鳴き声とともに目をつぶっていた。


「この子は…犬か?犬を連れて行っちゃ駄目というルールはないが…流石に死んでも責任取れないぞ?」

「いや違う。この子は卵から生まれたんだ。それも今日生まれたばかりだ。」

「??????どういうことだ?」

「ははっ勉強熱心なお前でも理解できないか‼」

「当たり前だろ‼今日生まれたのに小型犬とほぼ同じくらいの大きさをしているぞ?それに、卵から生まれた?一体何の冗談だ?」

「後は職場からもらってきたこの魔石だな。ちょっくら圧縮機使ってもいいか?ここには置いてあるだろ?」

「構わないが…お前の職場にもあるだろ。」

「うちみたいなブラック企業が、私用で使わせてくれると思うか?」


うちの会社じゃ、絶対に使えない。だからここを頼ったのだ。


「まぁわかった。その犬?についてもちょっと調べさせてくれないか?一本奢るからさ。」

「わかった。でも怖がらせたりはするなよ?さっきも言ったが、今日生まれたばかりなんだ。」


俺は再度念押しをして、自分の作業へと移った。

つい先日、入手したこの魔石はいわゆる質の低いものだがこれに関してはこの【圧縮機】を使うことで問題を解消できる。


圧縮機は魔石を潰し、結合させる。つまり質の低いものを大量に集め、比較的質の高い物を作ろうという考えだ。


まぁ数回やったことある作業なため、特に問題なく俺は作業を終えた。


そしてソファーでゆったりと待っていると、彼が大慌てで俺のところへとやってきた。


「おいお前なんてもん連れてきてんだよ‼どこから入手したんだ‼」

「ちょっ落ち着け‼男が男のことを押し倒してどうする‼気持ちが悪いぞ‼」

「あっ…悪かった。それはそうだな。」


少し落ち着いたのか、彼はゆっくりと息を吐いてから1枚の紙を俺に手渡してきた。


「そこに書いてあるのはあの子のステータスだ。…一応親に当たるお前には見せておく。その紙は持っていっていいぞ。」

「わかった。」


俺は彼にそう返事をした後、手渡された紙を眺めて驚愕した。


「なっ…これ本当なのか!?」

「嘘をついてどうするよ!!俺とお前の仲だから黙っておくが、その子の存在がバレたら…お前ただじゃ済まないぞ?大丈夫なのか?」


俺はその言葉に少し恐怖した。だがそんな事関係ない。俺はこの子の親だ。俺が守るんだ‼

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