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名前無き幼い子と深夜に起きた社会人

「…寒っ‼なんかすごく寒いんだけど‼」


現在時刻は2:00を回った頃だ。深夜の時間帯であり、到底人が起きているような時間ではない。もっとも夜に活動している人もいるからなんとも言えないが…少なくとも俺は昼に働いている人間だから、この時間に起きるのはよっぽどのことだった。


そんな俺が起きた原因…それは異常なまでに寒さを感じたからだ。

最初は風邪でも引いたのか?と思ったが、体が重だるいというような症状もない。


そこで原因を探っていくと…どうもこの卵が怪しく見えてきた。

卵の近くに行くにつれて、室温も下がっているような…そんな気がした。


「この卵が原因として…一体どうしろって言うんだ。これをどこかに置いてくるっていうわけにも行かないし、かといって部屋に放置するなんて難しいし…」


俺は悩みに悩んだ。これを放置すれば俺は風邪をひくかもしれない。

明日からの予定が全て崩れるかもしれない。そう考えると、この卵を部屋の外に持ち出したくなった。


でもそれをするのは違う気がして俺は諦めて冬用の毛布を持ってくることにした。

そうして俺は寒さに耐えながらもなんとか起床することが出来た。


「ふわぁ…起きれなかったらどうしようかと思った。」


部屋は相変わらず寒い。夏場ではもってこいかもしれないが、今の季節は秋…そろそろ涼しくなってくる頃だ。


ちょうど暖房や冷房を使うのを抑えることができる時期になってきていると思う。

なのに…ここまで寒いと暖房を思いっきり使いたくなってしまう。


「とりあえず朝食摂って…それから考えるか。今日と明日は仕事が休みなんだし、どうせなら久しぶりにゆっくりするっていうのもありだな。」


『ダンジョンに潜りに行く』と昨日決めたが、そのためにも自分の身体をしっかりと休めて万全の状態で挑むことが大切なはずだ。


「あ〜駄目だ。動かないと行けないのがわかっていても、眠くなるな…」


俺は朝食を摂ってから、ニュースを見ながらソファーの上で寝そべっていた。

眠気を感じながらもそれに抗っていると、視界の隅に写っていた卵がかすかに揺れているような気がした。


おそらくは俺の錯覚だが…どうもそうとは言い切れなさそうだ。

卵の表面には、昨日にはなかった氷の膜のような物が形成され始めており一段と部屋の温度が下がったように感じた。


さらに奇妙なことに、卵の表面に形成され始めていた氷の膜のようなものは卵の表面を覆いつくし、卵を氷の中に閉じ込めてしまった。


俺は焦った。それはもう盛大に焦った。

卵というのは極端な気温の変化に弱い…はずだ。たとえ昨日の夜から卵の温度が下がり始めていたとしても、ここまで急激に内部の温度が変化したら中の子は無事では済まされないと思ったからだ。


「でも俺がなにかしてやれることはないしなぁ…ていうか急に変わりすぎだろ‼これも写真取っておかなきゃ…」


スマホを取り出し、写真を数枚撮った。

大切な資料になるというのと、混乱して状況把握をしにくくなるだろうからその対策のためにも写真は必要だろう。


卵の周囲の氷に大きな亀裂が走ったと思った瞬間…俺は驚愕に見舞われることになった。

卵の表面が割れており、中を覗くとつぶらなひとみでこちらを見つめてくる小さい犬のような生物がいたのだ。


「うぅ…可愛いじゃないか。てっきりダンジョンの中でないと孵化しないものだと思っていたのに、全然そんなことなかった。」


その生物は俺の事をじっと見つめた後、卵の殻を必死になって破ろうとしていた。表面が割れたといっても、そこから簡単に割れるわけではない。


ここは俺が手伝うべきだろう。俺はそう考えて卵の殻をゆっくりと慎重に剥がしていった。そうして卵が大きく割れたことで、中にいた小さい犬のような生物が外に出ることができるようになった。


「はぁ…癒やされるなぁ…普通に犬だって言われても気づかないぞ。」


白い毛色に、くりっとしている青色の瞳…そして何よりよちよちと歩いている感じがまたたまらない。でも犬は確か胎生…だったよな?


そう考えるとやっぱりこの子はモンスターで、犬とかとはまた違うのだろう。


俺が考え込んでいるとその子は俺のもとにやってきて俺の足にスリスリと頭を擦り付けていた。


…こういうのを《《尊い》》というのだろうか?


まだ小さく、20cmくらいの大きさでとても可愛い。さっきも言ったが、犬と言われてもほとんどの人は判別できないだろう。


それにこの毛色…白色でかっこいい。俺は犬に詳しいわけじゃないからなんとも言えないけど、寒いところに住んでる孤高の狼って感じがして好きだ。


俺はこの子の事がたまらなく愛しかった。

今までペットを飼ったことはなかったが、なんというかペットを飼っている人の気持が多少わかった気がする。


「う〜ん…ダンジョンに連れて行って大丈夫なのかな?たとえモンスターだとしても、まだまだ子供だしな…」


とはいえ、ダンジョン内ではそんな事は関係ない。生まれた瞬間に襲われることだってあるのだろう。


…この子のことを甘やかし続けるのも良くないんじゃないか?やっぱり俺としてもこの子の先を見てみたい。


俺はこの子の親になると決心したんだ。俺がきちんと守ってあげればいいじゃないか。


そう考えた俺はまだ名前もないこの子をバックの中に入るよう誘導してあげた後、自転車でダンジョンがあるところまで移動することにした。



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