俺…いるか?
氷の弾は段々と大きくなり、動けずに横たわっている甲殻巨虫を氷漬けにしていった。
虫は必死に逃げようと抵抗していたが、凍りつく速度は早く虫は逃れる事はできずその場で凍りついてしまった。
・強杉ィィィィィ!
・誰や強杉君
・誰だ!
「いや〜本格的に俺がいらなくなりそうだなぁ…というか確実に俺強いやん。」
凍りついて動けなくなった甲殻巨虫は、すでに絶命しているようで衝撃を加えてみたものの反応がなかった。
「ふぅ…一時はどうなることかと思った探索だったけど、なんとかなって良かったな。」
・うんうん良かったな〜
・なぁなぁ1つ質問あるんだがよろしいかな?
・どんな口調をしとんねんw
「ん?どうかしたのか?」
・さっき遭遇した女の子いたろ?あの子って今どこにいるんやろな〜って思ってさ。ワンちゃん同じ階層にいるんじゃないか?
・いるかどうかは運じゃね?
・どうなんやろなぁ…?
「あ〜あの時の子か。あの子の実力を知らないから実際どんなものなのかはわからないけど、多分強いと思うよ?少なくとも俺よりかはね!」
持っていた武器からして…おそらく剣士。
あの磨かれている刀身と、使い込まれている持ち手部分は相当な手練れだと俺は思っている。
「まぁ俺よりかは確実に強いわけで、この階層よりも深いところにいるのは確かでしょ。」
・おっさんよりかは確実に強いわな〜
・ん…なんかあの子見覚えがあるんだよなぁ…どこかで見た記憶があるんだけど、思い出せない…
・認知症かな?
「おいおい少し忘れちゃってるからって、認知症っていうのは良くないぞ〜俺も忘れっぽいけど、流石に認知症って言われたことはないぞ。」
親戚の子供との遊びに付き合った時に、トイレに行った後忘れた時は号泣されたっけ…
「ふっ…まぁいいや。それよりもここの階層をこれ以上進むのは危険な気がするな。出てきたのが甲殻巨虫だから助かったけれど、それ以外の奴らだったら負けていたかもしれない。」
・確かここの階層に出てくるモンスターで一番強いモンスターはレベル10近くあるから、おっさんじゃ太刀打ちできないよ。遭遇したら助からないZO★
・もう助からないZO★
・お疲れさまでした〜
「俺はまだ死んでないわぁ!とはいえここの階層にとどまり続けるのもリスクなわけで…なるべく早く戻りますか。ルゼル!お家に帰ろ〜俺は家に帰ったら、最後の仕事を片付けてこなくちゃいけないんだ。明後日にまた一緒にここに来よ?」
今日と明日で、仕事を全て片付けてきてさっさとダンジョンを探索する生活を始めよう。
元々興味があって高校時代にダンジョン内を探索していたし、才能がないからと諦めていたけど…幸運にも俺はルゼルと会うことができた。
これは一種の幸運のようなもので、再び俺にダンジョンの中に入る勇気をくれた。
ルゼルは俺の声を聞いて、すぐにこっちに駆け寄ってきた。そして俺の履いているズボンに頭を擦り付けた後、今までとは反対の方向に走り出した。
「ちょっ…まぁあっちなら良いか。あっちだったら元の階層に戻るルートだしね。」
・まぁここからは心配しなくても大丈夫だろ。
・特段危険があるわけでもないしね〜
・とはいえ気を抜くんじゃ〜ないよ!
「どんなイントネーションやねん…ん?ちょっと待て…あそこおかしくないか?」
俺は先ほど来たときには全く気づかなかった洞窟があることに気づいた。
ルゼルはこの洞窟の前で待機しており、どうにもここが気になるようだ。
「っと…ルゼルはここが気になるようだ。皆はどう思う?」
・良いんじゃないか?まぁ危険があるかないかと言われると、あるかもしれないが…
・大丈夫だよ。俺の感覚がそう言ってる。
・↑お前の感覚は頼りにならない定期
「おーけーそれじゃあ行くか。なんだろう…ルゼルもそこまで警戒しているわけじゃなさそうだし、そこまで警戒しなくても大丈夫そうだな。」
今日生まれたばかりのこの子だが、警戒心がとんでもなかった。
今日ここに来るまででも、数回唸っていた。
相手に気づかれていなかっただけで、ルゼルはものすごい警戒していた。
なにをそんなに警戒しているのか…はたまた何にそんなに怒っているのか俺には分からなかった。
もしかしたら俺が友人と親しげに話していたのを見て、嫉妬でもしたのかな?
彼は俺と一緒に高校時代を共に過ごした友人だ。仲が悪くなったことは今までないし、いい関係を築いてきたからな。
もし嫉妬からの行動ならかわいいな。




