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酒飲みおっさんの正体判明!

「ほんじゃ俺はここから上に行くから、君とは一旦お別れだ。またどこか出会おう。」

「はい‼あっその時には一緒に探索しませんか?」

「俺なんかで良ければ。まぁいつでも行けるってわけじゃないけど…大抵空いてるから連絡はいつでもしてくれていいよ。」


俺はそう言った後、おじさんの事を担いで歩き始めた。


「いやぁ…急展開すぎて笑っちゃったな。」


・うっせーぞロリコン‼

・変態!ロリコン!催眠野郎!

・※このコメントは削除されました。


「おい!なんてこというんだ!俺が一体何をしたっていうんだ!俺は今、おっさんを担いでダンジョンから出ようとしてるんだぞ?まぁダンジョンにまた入るんだけどさ。」


・削除されててワロタ

・まぁ美少女じゃなくておっさんを担ぐのは辛いだろうからな。まぁそれで許そうジャマイカ

・おっさん顔赤くね?お前に興奮してんじゃない?


「へ?お前俺の事を脅かしたいからってそうはいかないぞ?おっさんはこの通り酒のおかげかぐっすりと寝てるじゃないか!」


…酒のせいか顔色が赤いというか…あまり良くないような気もしなくはない。


しっかし…ダンジョンの中で酒を飲むなんてなんて度胸の持ち主だ。

ダンジョンの中は危険で溢れているというのに…正直言ってこの道を通って数十年の熟練の人間でも、運が悪ければ命を落とすような職種だ。


そんな中ダンジョンにろくな装備もなく入るなんて…自殺行為も良いところだ。


俺がおっさんを運び始めて早15分ほどが経った。後数分もすれば出口に着くところで、おっさんが目を覚ました。


「うっ…ここは?」

「あれ?おっさん目を覚ましたのか?」

「あぁ。なぜ私は運ばれているんだ?」

「そりゃダンジョン内で酒のんで、他人に迷惑をかけてりゃな。ていうかなんであんたはあんな事したんだ?ダンジョン内で酒を飲む事はご法度だぞ?」


おっさんは少し間を開けてからゆっくりと話し始めた。


「まずは自己紹介をさせてくれ。私の名前は佐神東一郎。小さな企業の社長をしていた。」

「へ?社長さん?そうだったんだ。でもどうしてそんな人物がこんなところで酒なんか飲んでるのさ。社長なら従業員の事をまとめなきゃだろ?」


・佐神東一郎?社長なのか…

・ていうかそれならますますおかしいだろ。社長ならイッチも言ってた通り、従業員をまとめる必要があるだろうに…

・なにか事情があるんだろ。察してやれよおまいら…


「…恥ずかしい話なのだが、少し家庭内でトラブルがあってね。妻と喧嘩してしまったんだ。とはいえ私は妻には勝てない。もちろん謝ったんだが…その後が問題だったんだ。」

「なんか複雑そうだな。一介の会社員である俺には縁のなさそうな話だ。」

「結婚しているんじゃないのかい?君の顔はとてもかっこいいと思うのだが…」

「お世辞はいいですよ。それよりもそれから何があったんです?」


俺がそう問いかけると懐かしむかのように天井を見上げた後、再び話し始めた。


「まぁ…なんだ。会社の経営がうまく行かなくなってしまってね。倒産してしまったんだ。それで妻に愛想をつかれたのか、出ていかれてしまったんだ。私にはまだ7歳の幼い娘がいたんだ。なのに…なのに…うぅ…」

「…辛いこと聞いて悪かった。俺、最初はあんたのこと碌でもないやつだと思ってたけど、実際はそうでもなさそうだ。」

「慰めの言葉ありがとう。とはいえ私はこれで犯罪者…もう娘にも顔向けできない。」


俺は悩んだ。盛大に悩んだ。

俺自身、配信をしてしまってはいるが少し戸惑っているところがある。


このまま彼を警察に突き出していいのだろうか?

もちろん彼が反省をしたいというのならそれでもいいかもしれない。


しかし…どうにかして彼の事を助けてあげたい。


そこで俺は一つ…この配信を聞いているこいつらと話をすることに決めた。


「えっと…東一郎さん。少しだけ待っててくれませんか?この子に守らせておくので心配しないでください。」

「ん?あぁ…それは大丈夫だ。」


俺はその言葉を聞いた後、すぐにその場を離れてカメラに向けて《《顔を見せて》》話しかけた。


「お前らに一つ頼みがある。お願いできないか?」


・あらイケメン。さっきのおじさんのいってる事は正しかった。

・かっこいいじゃねぇか…俺の数百倍も。

・数百倍で済むのか?


「真面目な話だ。真剣に聞いてほしい。」


・…わ〜ったよ。

・何?

・どしたん?


「俺は…彼の事を警察に突き出すべきじゃないと思ってる。みんなはこの行動をどう思う?」


・ん〜イッチが不憫だと思ってそれをするならやめたほうがいいとだけ。ダンジョン内で飲酒するってのは、まぁぶっちゃけ軽い罪だが犯罪なことには変わらん。それをかばおうとすればお前の経歴に傷がつく。まぁ俺も不憫だとは思う。


・う〜ん…私個人としてはかわいそうな話だなぁ…とは思うけど、それだけかな。辛辣って言われるかもしれないけど、犯罪をしちゃってることには変わりないし、ここは心を鬼にするべきだと思う。でも不憫だとは思うな。


・この配信だって、結局のところ限定配信なわけだが視聴者がいるわけだろ?万が一お前が有名人になった時、だれかが漏らす可能性もあるんじゃないか?そうじゃなくても警察に通報するやつだっているかも知れない。視聴者全員がいいやつとは限らないんだぞ。


・全員長文でワロタ。まぁ俺も同意見なんだけどさ。


「…そうだよな。やっぱり良くないよな。」


・とはいえそういう風に考えることは悪くないと思う。それに、もしかしたらあの人も刑務所にはぶち込まれないかもよ?

・あ〜情状酌量の余地ってやつ?

・いや…それは多分違うと思うけど、まぁ悪くても罰金とかで済むと思う。まぁそれでもだいぶきついと思うけど。東一郎さんの境遇的に、そこまでいかなくても何かしらの形では代償を支払うことになるとは思う


「俺決めたよ。警察には俺からも事情の方を説明しようかなって思う。このおっさんのせいで誰かが迷惑を被ったわけではないだろ?まぁあの少女には後で話しておくとして…」


・まぁそれならただ単にダンジョンの中で酒のんで酔っ払って気持ちよくなってたおっさんだからな。追加で少女に切りかかってたくらいだけど。

・字面最悪で草。てか斬りかかるのはアウトじゃね?

・まぁ正直イッチの判断次第じゃね?それと少女ちゃんが許してくれるかだけど…


俺はこの後、東一郎さんと一緒に最寄りの警察署に向かった。

そして東一郎さんの事情を説明しつつ、頭を下げた。


流石にダンジョンの外ということもあって配信は切っておいた。またダンジョンに戻るつもりということも切る前に説明しておいたおかげで、全員待機のままだ。


警察の人も最初は酒の話ということもあって警戒していたが、説明を終えるとなんとなく優しい表情を浮かべていた気がする。


どうなるかはわからない。でもきっと悪い方向にはいかないと…そう信じている。






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