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異世界召喚で勇者パーティに入ったら居心地が良すぎる件  作者: 高瀬
第1章 勇者パーティ育成編
9/62

9話 それぞれの過去

夜、海辺でキャンプファイヤーを皆で楽しんでいると、

炎のゆらぎを眺めている俺の横にリリーが話をしに来てくれた。


「オーロラ様に気に入られてますね!」


「あぁ、最初はなんだかジャマくさいなと思っていたけどかわいいよな。」


「そういえば、リリーの前世の話聞いたことなかったな。」


「私は、実は記憶がないんです。なぜか理由は分からないのですけど・・」


「王への謁見の間で目覚めて、その前の記憶がないってことかい?」


「はい・・」


「そうか、そういうケースもあるんだね。」


「でも、なぜかわからないのですけど、争いのない世界にしたいっていう強い思いみたいなのがあります。」


「そうなると、魔王軍はやっぱりなんとかしないとだな。」


そこにもう一人の気配を感じた。

アンバーがこっちに来たようだ。結構、酔っぱらっている。


ちなみにこの世界では飲酒の年齢制限はない。俺の前世の酒とはちょっと違っていて、

酒で命を落としたりはしないし、依存性もないらしい。


とはいえ、酔っぱらってケガするのもよくないので、この世界でも子供はお酒禁止だ。

ここではオーロラ以外は飲める年齢らしい。


「あんたね、スキルがチートがすぎるのよ!責任取りなさいよぉ」


アンバーは開口一番絡んできた。でかい声だ。


「責任って・・」


「大きな力には責任があるって言ってんの!」


「アタシはね、守りたいの!人間の尊厳を。」


「アタシの村はね、魔王軍に蹂躙されたのよ。」


「ん!?アンバーってこの世界の住人なの!?召喚されてきたんじゃ?」


「召喚されたのは幼い時なのよ。だから前世の記憶はうっすらなのぉ~」


アンバーは、怒っていたかと思うと、今度は泣きそうになっている。


「しかも王の間じゃなく、この世界の田舎の村で目覚めたのよぉぉ・・ヒック。」


「その村に住んでいた子供のいない夫婦が、偶然、私を見つけて保護してくれて・・うぅ・・」


「親戚の子を自分の子として育てることになったって周りに言って育ててくれたのよ。」


そんな過去があったのか。俺はてっきり、みんな俺が召喚される少し前に召喚されたものだと

勝手に思い込んでいた。


「アタシは育っていく中で自分のスキルに気づいて、いろんな魔法を試して習得してきたの。」


魔法銃だな。オールマイティだと思っていたが、実は長い間この世界で練習してきた賜物だったんだな・・


「なぜ幼い頃からスキルを育成していたか分かる?魔王軍の基地の近くに私の村があったからよ。」


「でも、魔王軍の奴らが来た時、私は結局、恐怖で何もできなかった。そしてアタシの育ての両親は・・」


そこまで話したところで、アンバーは涙をこぼした。

俺は何も言ってあげることができなかった。そんな話、想像すらしていなかったからだ。


「しばらくして、王宮から援軍がきて、魔王軍は撤退していったわ。」


「魔王軍への対処で王宮から来ていた、当時、王国軍の王宮魔導士であるセピア先生が孤児になったアタシを見つけてくれたの。」


「その後、先生は、度々村に来て、私を育て指導してくれたの。村も別の場所に移して村の再建も先生が手伝ってくれたわ。」


セピア先生って本当にすごい人だな。

普段はあんなに軽い感じなのにな。


それにしても、どうしてアンバーは、勇者パーティに入ってきたんだろう。

俺はそう疑問に思っていた。


「アタシがどうして勇者パーティに参加したかって考えてるよね。」


「あ、あぁ・・どうしてなんだ。」


「言っとくけど、勇者パーティって私たちだけじゃないからね、毎年、育成して送りだしているのよ。」


そうだったのか。

いくつかの勇者パーティが既にいるんだな。


「アタシは先生にだいぶ前から、勇者パーティに入りたいって話しててね。」


「もう魔王軍に蹂躙される村を見たくないのよ。守りたい。」


「アタシはそのためなら何でもする。絶対に諦めないわ!」


「先生もそろそろスキルも育ってきたし、私が望むならそうしようと私の提案を飲んでくれたの。」


転生召喚でなんとなく来てしまった俺とは、勇者パーティに入るまでの経緯が全然違う。

王への謁見の間で、俺以外のメンバーが落ち着いて見えたのは、皆にも経緯やパーティに入る

理由があったんだな。


アンバーは、小さい頃からこの世界にいたってことだから、

今後、この世界のことについて知りたいときはアンバーに聞くといいだろう。


俺のことを授業のときに守ってくれたのも、たとえ俺だとしても魔王軍にやられるのを見たくなかったのだろう。


普段から、魔王軍と戦う時のことを意識して、授業にも真剣に取り組んでいたんだなとアンバーの真面目さ、一生懸命さに俺は感心した。


「アンバー様、私は記憶がないのですが、争いを収めたいと思っています。」


「一緒に力を合わせましょう。」


「でも、もうお酒はそろそろやめた方がいいです。」


そういうときっぱりとした顔でリリーは、アンバーからお酒の入ったグラスを奪いとった。


「あぅ・・・」


アンバーは悲し気だが、リリーの言うことはすぐに聞くようだ。

リリーは自分の前世はよくわかっていないようだが、争いを止めたい思いがある。

そして、誰よりも皆のことを客観的に観察し、皆を前向きな気持ちにしてくれる。


丁寧だが、すごく謙虚でしっかりものだ。


「俺もがんばるよ!」


俺がそういったとき、セピア先生、シナモン、トパーズ、スカーレットもこっちにやってきた。


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