8話 海!
そう、今日は待ちに待った合宿の日の爽やかな朝だ。
いまいる王宮の近くには海がある。
海には王宮御用達の別荘があるのだ。
今日はこの別荘に集合なのだ。
俺は宿舎の男子寮からシナモンとトパーズと待ち合わせして、
集合場所である別荘の前に来ていた。
「豪華だな、さすが、王国御用達。」
トパーズが満足気だ。
今日は訓練ではないので、3人ともラフな格好だ。
Tシャツに七分だけのパンツを合わせている。
日本のファッションみたいだって?
実は、セピア先生に頼んだのさ!
セピア先生は数千年も生きている魔導士だから、
仮想ゴブリンなんて作れちゃうわけだろ?
だから、せっかく合宿に行くなら、日本にいたときの
ファッション情報を俺の前世の記憶から読みとってもらって、
3Dプリンターみたいに、生成してもらったってわけ。
もちろん女子の水着もな!
こうして、事前に膨大な衣装を用意してもらい、
そこからみんな好きな服装や水着を選んで集まるのがこの合宿なんだ。
我ながら、良いアイディアだろ?
「皆様お待たせしました。」
この声はリリー。
おぉ、いつもの魔法使いとは違う、
ジャパニーズガールズサマーファッション!
アンバー、スカーレットも目を見張るファッションだ。
露出と体のライン、夏に感謝。
水着になる前から、この眼福を授かり、神様に感謝である。
なんてバカなことを考えていたら、俺のスネを何者かが蹴ったようだ。
「イテッ」
「お姉ちゃんたちをジロジロ見過ぎ!」
「ちょっ」
なんてこと言うんだ。
っていうか誰なんだ。下を見下ろすと小さな女の子だが誰かに似ている。
スカーレットだ。
「私の妹なのっふふっ」
「ヒロ君がさー、いろいろ面白い衣装用意してくれたでしょ?」
「あれに興味津々で私もいく!ってなっちゃって。」
くっ、そういうことか、世の中よからぬことを考えると、
ハメをはずさないように、こういう監視役という抑止力が働くようである。
そして、スカーレットが妹に向けて言った。
「ほらっ皆さんに自己紹介しなさいっ」
「オーロラです、よろしくお願いします…」
スカーレットに促されて、挨拶している。
緊張している様子である。
俺のスネはあんなに簡単に蹴ったくせに、しょせんチビッ子だな。
みんなの前で自己紹介するのにあんなに委縮している。
と考えてニヤリとしていたら、
オーロラが再びを俺のスネを蹴った。
「ちょっ」
「オーロラはヒロ君が気に入ったのね~」
俺は、とりあえず、苦笑いだ。
「みんないるね~」
セピア先生が来たようだ。相変わらず軽く柔らかい雰囲気だ。
服装が魔導士でなくなるとより、軽くなる。
先生は、はっきりいってイケメンだ。
クラブにいそうなクールガイといったところか。
「ヒロ君の前世の服装は楽しいねぇ~」
「今日はとりあえず、海でも入ろうか~」
よしきた!二度目の眼福タイム!!
皆、別荘で着替えて浜辺で集合だ。
おれは早速着替えた。
そして、シナモンとトパーズも水着に着替えたようだ。
俺たちは浜辺へ向かった。
「海で遊ぶって何するんだ?」
ふっトパーズ君、ビーチバレーだろ!
と思いつつ、おれは濁した。
「それはあとのお楽しみさ!」
しばらくすると、リリー、アンバー、スカーレットもやってきた。
もうこれはたまらん。神様ありがとう。今ならどんな痛みでも耐えられます。
次の瞬間、俺のスネに衝撃が・・・
「イテッ」
「また、じろじろ見てた!」
くそっ、オーロラか。
でも、許そう。今の俺は心に余裕がある。
そして、俺たちはビーチバレー、スイカ割り、かき氷、やきそばなど
日本人が夏にイメージする海のイベントを俺が主導して楽しんでいった。
オーロラは事あるごとに付きまとってきたが、
前世で兄弟のいなかった俺は、妹がいたら、こんな感じなのかなと
ほほえましく、かわいいなと思った。
これはオーロラには内緒だ。調子に乗りそうだからな。
晩にはバーベキューを食べ、
最後にキャンプファイヤーや手持ち花火も楽しんだ。
セピア先生は、授業のためではなく、俺の娯楽のためにいるんじゃないかと
思い違いをしてしまうぐらい、存分に俺たちを楽しませてくれた。
オーロラはいつの間にか、俺の膝で寝ていた。
予期せぬ乱入者ではあったが、心を温かくしてくれる存在だった。
前世では経験できなかったキラキラした思い出ができた。
この世界は本当に居心地が良すぎる。