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54話 万物復元

俺が覚醒してから2週間が経った。


皆、俺の体を気遣ってくれているのか、しばらく休養に専念させてくれた。


最初の1週間は、休養しつつ、俺自身も自分の能力を試したくてうずうずしていた。


ただ、どんなスキルに覚醒したのか、皆に何か悪影響が及ぶと困るので、一人になれる場所を探し、ドラゴンの巣へ行った。


「よし、ここは普段から人がいないから大丈夫だよな。」


AランクとBランクのドラゴンが数十匹から数百匹いるかもしれないドラゴンの巣に、俺一人で来て大丈夫かって?


理由は分からないけど、大丈夫ということが今の俺には分かる。Aランクが強いというイメージがないのだ。


自分のエネルギーランクがSランクオーバーということが今の俺には分かっている。ドラゴン達も今の俺からすると、ペットみたいなもんだ。


さて、早速新しいスキルを試すとしよう。


俺は、覚醒してから"世界の外側"を感じることができるようになっている。この力は、ものすごく集中する必要がある、ということはない。


いまいる世界、その外側というぐらいの簡単な認知だ。


皆も家にいるとき、窓から外が普通に見えると思う。


俺にはそんなあたりまえの感覚で、"世界の外側"を感じることができるのだ。


そして、その"世界の外側"には、今まで俺が万物消滅で消した奴らの存在を感じる。


たとえば、ブルーグリーン王国で勇者パーティ育成期間中に万物消滅で消したキングオーグの存在を感じることができる。


キングオーグ自体は会話する能力がないので、会話はできないが、言語が話せる人間を俺が消したとしたら、そいつと意識で会話することができると俺には分かっている。


どうやら、俺の万物消滅という力は、相手を消し去ったのではなく、この世界から"世界の外側"に移したということのようだ。


これらのことを俺は、一瞬にして悟った。


そして、俺はあることをまず試したいと思っている。

確か、万物消滅で対象を消すと、その対象の生命体が持っているライフエナジーが俺のものになる。


世界の外側から、この世界に戻したとき、ライフエナジーは俺から、その生命体に戻ってしまうのか、それを試そうと思う。


まずは、世界の外側からこちらに生命体を戻せるのかどうかが問題だが・・・


でも、感覚的にはできると分かっている。

早速やってみよう。


俺は自分の前に手をかざして、そこに以前消したキングオーグを戻すと意識した。


その瞬間、俺の前にキングオーグが現れた。


うん、予想通り、キングオーグを戻すことができたな。


手をかざしたのはなんとなくだ。ノーモーションで、キングオーグを戻すこともできる。


そして、俺のライフエナジーから、キングオーグ1匹分のエネルギーが奪われるのを感じた。


Sランクオーバーのいまの俺からすると、微々たるものだ。


だが、やはり、思った通りだ。

いくつかこの後も実験してみて、俺は自分の新しい能力を理解した。


ざっとまとめると以下の通りだ。


万物消滅・・・対象の生命体をこの世界から"世界の外側"に移すことができる。このとき、対象の生命体が持つ生命力"ライフエナジー"を自分に吸収することができる。

万物復元・・・対象の生命体を"世界の外側"からこの世界に移すことができる。このとき、対象の生命体がもともと保持していたライフエナジーが自分から奪われる。


ちなみに、"世界の外側"について分かっていることは以下の通りだ。


・万物消滅で対象の生命体からライフエナジーを抜いた"コア"が保存される空間

・"世界の外側"では時間の概念がなく、そのままの状態で保存が可能

・"世界の外側"からこの世界に復元するとき、完全な状態で復元が可能


ちなみに、この世界にキングオーグを戻すときに、キングオーグから元々奪い取ったライフエナジーが、

そのままキングオーグに戻った。


しかし、どうやら、特に意図しない場合はそうなるということが分かった。


俺が、キングオーグに半分だけライフエナジーを戻すという意識をすると、実際に半分だけキングオーグにライフエナジーを戻すことができた。


というか、一度、俺が消した対象については、いつでも、遠隔から対象のライフエナジーを吸い取ったり、戻したりすることができる。


何度か、キングオーグで実験したが、自由自在にライフエナジーを吸収したり、戻したり、増やすこともできた。


コバルトさんやセピア先生が、魔王ソルトを殺さずに倒すことができるというのは、こういうことだったのか。


魔王ソルトを俺が万物消滅で消し、ライフエナジー量を調整して、この世界に戻す。

つまり、弱体化させることができるってことだ。


しかも、魔王ソルトを弱体化させることで、魔王ソルトの多くのエネルギー量を

俺が受け持つことになるから、俺が持つエネルギー量はSランクの2倍近くになるってことだ。


俺だけが圧倒的に強いエネルギー体になってしまう。

しばらくは脅威にさらされることはないだろう。


あと、”世界の外側”については、気のせいかもしれないが、気になることが1つあった。

”世界の外側”を強く意識したとき、トパーズが一瞬、頭によぎったのだ。


なぜかは分からない。

トパーズに話そうかとも思ったが、どう話を切り出せばよいのかも分からないし、一瞬のことだったので、胸の中にとどめておくことにした。


***


休養期間の後半1週間は、スカーレットとヴィオレ王国の夏祭りを楽しむ約束をしていた。


魔王軍の動きも特にないし、Sランクに到達した俺は魔王自体にも対処できると思っていた。


ブルーグリーン王国を出てから、初めての休養期間であるし、思い切って、スカーレットとヴィオレ王国の夏祭りを楽しむ予定だ。


トパーズ、シナモン、リリーは3人で仲良く祭りを周るらしい。


クロとスノウは夏祭りに参加するかは分からないが、久々の再会だから、2人で時間をのんびり過ごすだろう。


俺はスカーレットとの待ち合わせ場所であるヴィオレ王国で一番広い広場の噴水前に向かった。


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