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異世界召喚で勇者パーティに入ったら居心地が良すぎる件  作者: 高瀬
第1章 勇者パーティ育成編
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4話 仲間に守られるという幸せ

勇者育成の授業が始まって、一週間が経った。

俺も、ゴブリンに攻撃を避けられずに、何度か仕留めることができるようになっていた。


「じゃ、そろそろゴブリンから卒業しましょう~」


セピア先生がニッコリ笑いながらそう言った。


「よし、きた!次々いこうぜ!」


トパーズだ。


セピア先生が勢いづく俺たちに次の課題を出してくる。


「う~ん、じゃあ次は仮想キノコオバケでもいきましょうかねぇ~。」


先生によるとキノコオバケは、状態異常攻撃を仕掛けてくるらしい。

胞子をばらまいて、笑いが止まらなくなったり、眠くなって寝てしまったりする。


やっかいなのは、近づこうとすると、胞子を振りかけてくることだ。

胞子に当たらないようにするためには、距離をとって戦う必要がある。


しかしながら、変則的な動きで、意外と回避スピードが速く、

遠距離で攻撃しようとしても回避される恐れがある。

面倒な敵だ。


「私は状態回復魔法が使えるから、皆、安心していいわよ・・」


アンバーが申し出た。

ちょっと上から目線な発言に聞こえるが、ありがたい申し出だから、

気にしないでおこう。


彼女のスキルは基本万能で、初歩的なレベルではあるが、ほとんどの

攻撃・回復魔法が使える。


勇者シナモンは治癒魔法が使えるのだが、まだヒールという初歩回復魔法しか使えない。


状態異常時の回復はアンバー頼みである。

アンバーの魔法銃は、彼女が手元に意識を集中したときに、突如として現れる。


銃の特性により、遠距離の敵に対して、比較的正確で、素早い魔法攻撃も可能だし、

味方の援護時も回復魔法等が味方まで到達するまでのスピードが速いので、

瀕死の時の回復などは本当に頼りになる。


ただし、魔法銃を撃つまでに詠唱時間が必要なこと、そして、杖などを使って魔法を使うよりも、

魔力を多く使ってしまうというデメリットもあるので、頻繁に使えないのがデメリットだ。


という感じで、俺もリリーを見習って、仲間が何ができるのか、この一週間観察していたわけだ。


「やってみようか!」


それまでセピア先生の話を座って聞いていたシナモンが立ち上がって言った。

そして、皆に指示を出す。さすが勇者だ。


「近づかずに攻撃できるのはアンバーだけだけど、アンバーには状態回復の後方支援をしてほしい。」


アンバーが頷く。


「キノコオバケの注意を僕とトパーズで引き付けるから、良いタイミングでリリーがスロウをかけて欲しい。」


トパーズが親指を立てて、任せておけという表情だ。

リリーは笑顔で答える。


「そして敵の動きが鈍ったところを、ヒロが敵の背後からエアナイフで一発で仕留めよう。」


おれもすぐに頷く。


シナモンとトパーズに気を引き付けられている隙に、俺が敵の背後を取る作戦か。

しかも、背後を取る瞬間は、リリーがスロウで敵の動きを鈍化してくれるから、俺が敵との距離を

詰められるわけだ。俺のこともちゃんと配慮してくれているな。


それにしても、気を引き付ける危険な囮役を買って出てくれるとは、シナモンは本当に勇者だな。

みんなへの指示も分かりやすいし、こんな上司に前世でも巡り合いたかった。

シナモンは上司じゃないけど、頼れるリーダーだ。


シナモンの指示を聞いた俺は、与えられた自分の役割きちんと果たしたいモチベーションで

いっぱいになった。


そんな俺の表情を見て、リリーも笑顔で賛同するという表情をしてくれた。


「さっはじめよう~」


セピア先生が杖を俺たちのすぐ近くの床に向けると、そこに魔法陣が浮かび上がり、

仮想キノコオバケが出てきた。


今回も安全に気を配り、俺たちを殺さないようインプットされた仮想のキノコオバケである。


シナモンが仕掛けると同時に反対方向から、トパーズが打って出る。

キノコオバケが慌てて、トパーズの方向に胞子を振りまく。


トパーズは回避に失敗し、一部胞子を受け、今にも眠りそうだ。

アンバーがすかさず、魔法銃で状態異常回復を行うのだが、早い。


トパーズの動きから、キノコオバケが胞子を振りまくだろうと予測して、

さきに詠唱していたのだろう。すぐさま、トパーズは回復した。


その後、チャンスが巡ってきた。

リリーがタイミングよくスロウをかける。


「ヒロ様、今です!」


そして、最後に俺が敵の背後に突っ込み、エアナイフで仕留めようとした瞬間だった。

俺はバランスを崩して、まさかの空振りをしてしまったのである。


「あ、しまった・・」


その場の皆が啞然とした。


俺の気配を察知した敵が俺に胞子をぶちまけようとしたところ、

キノコオバケが炎で包まれる。


アンバーだ。

ここまで予測していたのか、すごいな。


「まだよ!アタシの炎の魔法じゃ火力不足なの。アンタなら仕留められるでしょ!」


「お、おう、任せとけ!」


おれはそう言って、炎に包まれたキノコオバケに、エアナイフでトドメを指した。


「おりゃあああ!」


キノコオバケを倒した。


拍手の音がなる。

セピア先生だ。


「アンバーは本当に優秀ですね、皆の状況がよく見えていて、いつも2,3手先をよく読んでいます。」


本当にそうだ。

シナモンの計画でも十分、俺はケアされていたが、アンバーが俺のミスまで考慮して、

しっかりケアしてくれた。


実践だったら、おれはキノコオバケの胞子を食らっていただろう。

いつもツンツンしている感じがするけど、いつも一生懸命なだけな女の子なんだな。


なんにしても、転生召喚前には、味わえなかった仲間のサポートであった。

おれはますます、この勇者パーティに満足し、また、自分も皆に貢献したいと思ったのである。


「ありがとう、すごいんだな、アンバーは。君に守られてすごく嬉しかったよ。」


俺は素直にそう伝えた。


すると、見たことのないアンバーの表情がそこにはあった。

頬を赤らめていたのだ。


えー、よ、喜んでいる!?

めちゃくちゃかわいいんだが。


リリーが俺を見て、グッジョブのサインを出している。

そして、アンバーの頭を"いいこいいこ"と撫ぜていた。


こうして俺たちはキノコオバケを攻略した。

前世にはなかった素敵な仲間たちだ。


頼れるリーダー、助け合える仲間、ここは最高だ。

俺もスキルを磨いて皆を助けたい。


たしか、召喚されるときに、必殺スキルをお願いしたはずなのだが。

何か使い方があるんだろうか。


詠唱もいらないし、使い放題だし、その辺は良いわけだが。

これから研究しないとだな。


こうして、俺はスキルを磨いていく決意した。

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