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異世界召喚で勇者パーティに入ったら居心地が良すぎる件  作者: 高瀬
第1章 勇者パーティ育成編

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21話 新年へ

俺は年明けにシナモンから剣技を教えてもらい、剣士としての道を歩き始めたのだが、

物語の時間を少し遡りたいと思う。


それはこの世界の大晦日の日のことだ。


この世界でも例のごとく、城下町でカウントダウンをやるらしい。

今夜は花火も上がり、とても美しい情景となるだろう。


この王国は、ブルーグリーン王国という名前だ。

山・海・森・平原という自然に囲まれた豊かな王国である。


この世界にはいくつかの王国が存在するが、この王国は、この世界で3番目に大きな王国らしい。

とはいえ、1番目と2番目が群を抜いて大きな国家らしいのだ。


1番目は、なんと魔王が国主を務めるエルファン王国、

2番目は、この国同様に人間が国主を務めるヴィオレ王国だ。


この両国は、『魔王軍 対 人類軍』として戦争中である。

俺たちの先輩である勇者パーティもヴィオレ王国に何組かいるらしい。


つまり、いま俺がいるこのブルーグリーン王国は、2つの国と比べれば、大きくはないのだが、

平和で娯楽的な感じがある。


そして、俺はそんなブルーグリーン王国が大好きである。

この辺りの話は、この世界に子供の頃に召喚されてから住んでいる

アンバーから聞いた話と、城下町に遊びに行ったときに小耳にはさんだ話である。


俺はこれを知ったとき、自分の運命に感謝した。

ブルーグリーン王国は自然と愛に溢れ、平和で素晴らしい国だ。

ここに召喚されて良かった。


そんな王国での大晦日のイベントに俺は呼ばれたのである。

今年の勇者パーティの勇者を引き継いだことと、バランスブレイカーとしての

スキルを持っていたこと、これまでの訓練経過状況など、誰からどう伝わったのか

分からないのだけど、王国の一般市民まで知られていた。


そう、つまり、俺は王国の英雄としてみんなから慕われ、人気者となっていたのである。


城下町で一番大きな広場にある、一番大きな建物のテラスから、今日は特別に

国王、スカーレット姫、オーロラ姫とともに、国民に挨拶をすることになった。


あと数時間で年越しのカウントダウンが始まり、新年となったタイミングで花火があがる。

その後、国王からの年始の挨拶と、今年卒業予定の勇者が挨拶と今後の抱負を述べるといった

そんな会が催される予定だ。


だが、俺は前世ではブラック会社働くただのサラリーマンだ。

顧客への説明やプレゼンテーションはやっていたが、大勢の前で

スピーチするなんていう経験は皆無だった。


今は、年始の祝賀会場で待機中だ。

ビュッフェスタイルで飲食は何でもそろっている。


王族やその関係者、城下町の有力商人などが集まって

ガヤガヤと賑わっているが、そんな中で俺は若干緊張していた。

いや、心地よい程度の緊張だよ?そんな焦ってないし・・・


スカーレットにどんな話をするべきか相談しようとしたが、

さすが王族だけあって、祝賀会に来訪した客人と会話して忙しそうだ。

俺が邪魔するわけにはいかない。


そんな俺の様子を見てか、リリーが俺に話かけてくれた。


「ヒロ様、大丈夫ですか?」


「あ、あぁ・・大丈夫だ。」


と言いつつ、若干、緊張した声なのは秘密だ。いや、バレてそうだ。


「こういう場で話したことがないからな、どんなこと話せばいいかなって。」


「私、前世の記憶はないんですけど、王族のマナーとかなぜか分かるんです。」


「だから、年始の挨拶については、どんな話をすれば場に合った話ができるか代わりに考えることもできるんですけど・・・」


そこまでいいかけて、リリーは少し表情を変えて、俺に続けた。


「ヒロ様は、ありのままでいいと思います。」


「思ったことを伝えてもられば、皆の気持ちが明るくなる気がします。」


「どうしてそう思ったんだ?」


「私たち、勇者パーティがそうだったからです。」


「今までも、ヒロ様の素直な気持ちが、私たちの気持ちを明るくしてくれました。」


俺らしくスピーチできるように励ましてくれているんだな。


メンバーへの気配りができる子だ。

皆の気持ちを明るくしてくれているのは、リリーの方だぞ。


「お~い!ヒロ~。」


遠くからオーロラが俺を呼びながら走ってきた。

久しぶりだ。夏合宿以来だな。


オーロラが、リリーにも気づいたようだ。


「リリ~!」


リリーがオーロラを抱き上げる。

夏合宿以来、面倒見の良いリリーにオーロラも懐いたようだ。


「スピーチ楽しみにしてるよ!一番楽しみなのは花火だけどね!」


オーロラが無邪気に笑う。


リリーやオーロラとのやりとりで、俺は緊張感がほぐれていた。


そして、カウントダウンが始まり、王様の年頭挨拶も終わり、

なんだかんだあって、俺のスピーチの番となった。


俺はスピーチの祭壇に立つ。

勇者パーティの皆も脇に並ぶ。


一目勇者を見ようと、会場はところ狭しと、人ごみとなっていた。


「え~、ヒロです・・・」


「今日は沢山の方に集まっていただきありがとうございます・・コホンッ。」


「俺は・・・私は、8か月ほど前にこの世界に、き、来ました。」


「そして、この世界でたくさんの温かいものに触れました。」


「大切な人も沢山できて、いまではもう既に大切な故郷となりました。」


「ブルーグリーン王国が大好きで、皆さんのことも家族や親戚のように思っています。」


「今年はついに勇者パーティ育成授業からの卒業です。」


「魔王軍と戦って、この王国と世界にいる人々のことを守りたいと思います!」


特別なことは何も言えなかったが、たどたどしく、俺のスピーチが

一生懸命だったこともあってか、会場からは暖かい拍手と応援の言葉をもらえたのだった。


もうスピーチはこりごりだ。


「オッケーオッケー!全然大丈夫だったよ~、スピーチ前あまり話せなくてごめんね。」


後でスカーレットがニコニコしながら言ってくれた。

この人が笑顔だとなぜか安心するのだ。


こうして俺たちはついに旅立つ年へと時を進めたのであった。

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