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習作  作者: Neetiaroom
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4/4

4(初のクエスト受注中にトラブルに巻き込まれる)

昼頃に目覚めた俺は頭を抱えた。


頭がガンガンしてどうにもならない。オリバーさん達と一晩飲み明かしたら二日酔いになってしまったのだろう。あ、オリバーさんというのは昨日俺に絡んできたE級冒険者パーティの事ね。




異世界転移とはいわば左遷だ。




新しい職場の雰囲気を掴むためには現場の人間から多くの話を聞かねばならない。話を聞くにはまず酒だ! 当然文無しなのでツケが利くかゴブリンの魔石払いができるか、はたまた途中でトイレに行くフリをしてバッくれるかヒヤヒヤしたもんだが、話の流れで俺のステータスを見たオリバーさん達はおいおいと泣きだし「そうか坊主も大変なんだな」とか言って何故かゴチになってしまった。そんなに【病】がやばいんだろうか。まあこの世界の人間はアレルギーなさそうだもんな。ゴチ分はいずれ必ず返そうと思う。付き合いは大事だ。




ステータスオープンをして、【病】に二日酔いが追加されているのを確認した俺は、今日のクエストは軽いものにしようと決めた。文無し無宿に休むなんていう選択肢はない。二日酔いなら二日酔いなりに、絶対、絶対、絶対に無理をしない範囲で何となく働いていれば案外何とかなるものなのだ。


ギルドに入り、ただつっ立っているだけのクエストは無いかな? と眺めていたが、どうやら入りたての新人冒険者は薬草採取とゴブリン討伐しかクエストを受けられないらしい。今日は薬草を採取する事にした。


受付に向かうと、受付嬢のタヌコさんのカウンターは行列ができていたので隣のお兄さんのところで受注した。お兄さんの名前を訊ねたら怪訝な顔をされた。こういった受付では言った・言わないの話になりやすいから担当者の名前を確認するのは常識だと思ったのだが、受付嬢の名前を訊ねてナンパするのと同じノリと思われてしまったらしい。一応モリソンと名乗ってくれたが距離が遠い。すまんの、新しい職場のノリに慣れるまでは時間がかかるんだ。




ハジメーテの街を出て、初心者平原へ行き入口付近で薬草を探す。ゴブリンといえど、二日酔いの今襲われたら万が一という事もあるだろう。すぐに戻れる場所で安全を重視しよう。入口付近では薬草を一つも採取できないかもしれないが、初心者は結果を求めずまず仕事の流れを掴むべきだ。安全、安心がモットーです。暫く薬草を探していると、同業者の少女が現れた。暗めの赤いツインテールで、背中の空いた黒いドレス、フリフリのスカートにハイソックスでドラゴンの翼と尻尾つきだ。……うん、どう考えても昨日のレッドドラゴンさんですね。だが俺はツッコまないぞ。戦闘になったらまず負けるし。「ふんふふーん、きょ、今日は絶好の薬草採取日和ね♪」と棒読みで語りながらこちらをチラチラ見てくる正体不明の謎の少女と絶妙に距離を取りながら俺は薬草探しを続けた。



薬草を採取する。

薬草を採取する。

薬草を採取する。


やべえ。楽しくなってきた。雑草の群れから薬草を探し、周辺の土を掘り、薬草を採取する。ただこれだけの事だが意外にコツがいる。一つ一つアイテム袋に入れるよりかは手にキープしていて幾らか溜まったら入れる方が効率が良い。利き手でキープしていると土が掘りにくい。土にしたって先ずは薬草の周りを大きく掘って根を傷つけないようにして、それから根の周りを小さく優しく掘った方が効率が良い。疲れない手の高さはどの位置だろうか。もはや薬草なしと見極めてポイント移動する時間はどのくらいが適正か。考える事は多い。


もっと最適化できないものか、

もっと最適化できないものか、


俺は薬草採取ハックを続けた。


*


太陽の位置が低くなってきた。真昼の熱を帯びた空気は去り、ぬるい風が額の汗を冷やす。

ギルドの受付は17時に閉まるのでもう引き際だろう。薬草採取姿勢を解除し周囲を見渡すと、初心者平原入口には俺が薬草を採取した跡がクッキリ残っていた。そう、謎の美少女を中心にサークル状の跡ができている。まるでアメリカの牛が連れ去られた例の模様のようだが、俺をじろじろと睨み続ける暗めの赤ツインテールフリフリスカートドラゴン美少女と距離を取って採取効率化を図ったらこうなってしまったのだ。というかこの人、俺の作業中全く動かずに何してたんだろう。これが無自覚転生ハーレム冒険ものなら、(真剣に薬草を抜いている姿もステキ……)とか(どうしよう……最初は印象最悪だったけど気になってきたカモ)とか思っているのかもしれないが、美少女の問いかけを無視して会話もせず薬草を何時間も抜いてる俺にそんな考えを抱くわけがないだろう。よっぽど結婚を焦っているとかでもなければそういう事にはならない。うん。



暗めの赤ツインテールフリフリスカートドラゴン美少女と目があう。気まずい。流石に何か話しかけるべきだろうが、どうして無視していたのか、どうして俺を睨み続けていたのか辺りに話がいくのは面倒臭い。


『お疲れ様でした』


自動発動した竜言語で一言声をかけて俺は立ち去る事にした。ステータスに翻訳系スキルはないんだけど、誰かと話すと自動的に言語が切り替わるようだ。たとえモノローグでもツッコミを入れたら世界法則が書き換わってしまうかもしれないのでスルーだ。きっと加護:レッドドラゴンか何かが働いているのだろう、そうに違いない。暗めの赤ツインテールフリフリスカートドラゴン美少女はこちらを見ているが何かを発する様子はない。気まずい。流石に立ち去っても大丈夫な流れだよなと思い会釈をして立ち去ろうとすると


【な、なんて事をしているのよバカーーーーーーーーーーーーーー!!!!】


暗めの赤ツインテールフリフリスカートドラゴン美少女は突然叫びだし、レッドドラゴン形態になって東の空に飛び立ってしまった。

一体なんだ。レッドドラゴンに会釈してはいけないのか、異文化交流は難しい。


*


ギルド受付のモリソンさんに大量の薬草を提出し事のあらましを話す。

「え!? レッドドラゴンがまた出たのか? つーか薬草多いな!」

どうやら一日の薬草提出ランキングを大きく塗り替えたらしい。


翌朝、安全のため初心者平原にレッドドラゴン調査隊が派遣されると、入口のミステリーサークルがレッドドラゴンとの戦闘跡として扱われてしまったようだ。


かくして【二日酔いの】という通り名がついた新人E級冒険者ヨシュアが爆誕した。


酒はすっかり抜けていたが、俺は頭を抱えた。


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