3(ギルドの先輩に絡まれる)
ステータスをオープンした直後に、俺はプラネと名乗るF級冒険者の少女に頭を抱えられていた。
え? なんで? と思っていると彼女が悲しそうな声を漏らす。
「ヨシュアさんは今まで本当に、本当に大変だったんですね。こんなにたくさんの【呪い】を抱えて。」
ひょっとして【病】の事を言っているのだろうか。先ほどのレッドドラゴンとの会話も彼女は聞こえていなかったようだし、この世界の言語と日本語では翻訳間違いが発生しているのかもしれない。【キウイアレルギー】なんか【キルリアレルギー】になってるしな。転生しても俺は俺である事にちょっと安心した。
『辛いときもありましたが、受け入れました。【呪い】も俺の一部です。大丈夫ですよ、ほら』
彼女から離れ元気なアピールをする。どうやら落ち着いてくれたようだ。
その後、プラネの案内で俺はハジメーテの街に来ていた。よくこんな名前をつけられるなあ!?
いや、だめだ。ツッコんではだめだ。
既に決まっている事に、皆が暗黙の了解で守っている約束事にツッコミを入れてはいけないんだ。
俺が世界にツッコミを入れる事、それはこの異世界の法則に介入する事に繋がり崩壊を招いてしまうらしい。アンタはそんな事ばっかりしているから元の世界から追放されるのよ! ってさっきレッドドラゴンにも散々馬鹿にされたばかりだ。なんで初対面のドラゴンにあんなにディスられなければならないんだ。異世界に来て初日からメンタル攻撃とか本当に辛い。呪いよか酷いよ。
とにかく、この世界の約束事に俺は従わなければならないらしい。
街の名前は日本人の俺には酷く適当に聞こえるが、それを指摘してはならない。
異世界にきたら冒険者ギルドに行くことになっているらしいが、それに異を唱えてはならない。
みんなが通ってきた道を、みんなが通ってきたように、歩かなければならない。
それが異世界の冒険なんだ。この世界の住人になる。今度こそ俺は除け者にされる事なく暮らしていくんだ。
俺はもう二度とツッコミをしないと心に誓った。
俺はギルドに入り、受付嬢に冒険者登録の申請をした。受付嬢は狸耳の美人さんで、のほほんとした雰囲気が可愛らしい。
「タヌコさんは人気の受付嬢さんですから、狙っちゃダメですからね」
隣でプラネが機嫌が悪そうに口を挟んだが、生前に銀行やら区役所やらでお姉さんにナンパする人がいたら是非とも見てみたい。少なくとも俺には無理だ。タヌコさんから冒険者証を受け取ると、後ろからゴッツイおっさん達が絡んできた。
「ああ? お前みたいなヒョロいガキが冒険者だと? やめとけやめとけ」
おっさんはタヌコさんをチラチラ気にしながら俺の肩を掴んできた。あー、うん。これは【頭突き】じゃどうしようもない間合いですね。長年しみついた俺の陰キャ根性は、武力での突破を即座に諦めた。
『え!? そうだったんですか。詳しく教えてください!』
ゴッツイおっさんはああん? と訝し気に俺を見て、なんだお前、冒険者がどういう仕事か分かってんのか! と掴んだ手に力を込めてきた。痛いっす。
『仰る通り、お兄さん達みたいなベテランの方から言わせれば僕は何もわからないヒヨっコです。誰も教えてくれる人がいないので、タヌコさんに教えて貰おうと思っていたんですが…』
俺はタヌコさんをちらりと見る。タヌコさんは眉を寄せてどうしたらいいか考えているようだ。
うーん、この反応からすると、このオッサンは大した実力じゃあないんだろうな。このオッサンが実はS級冒険者の親切な人だったら、【この流れに乗って色々教えて貰って!】みたいな表情をするはずだ。ロクでもない事に巻き込まれるのを心配しているのかな。で、あればオッサン達につきあう必要はない、適当に話を聞いてあしらおう。
俺はオッサン達をひたすら持ちあげて、今度色々教えて下さい! って頭を下げてクエストに行く彼らをお見送りした。今度絡まれたら途中でバッくれよう、うん。
ギルド受付嬢のタヌコは一連の流れを見て、今度の新人は変な奴だなあ、と頭を抱えた。