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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
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エピソードタイトルって難しいですね。

トワタリーと女剣士のにらみ合いは時にして数秒であった。

女剣士は電光による脚力の強制稼働によりトワタリーとの距離を一瞬で詰めた。

女剣士に距離を詰められたトワタリーはどぴゅッと毒液を飛ばしたが、勢いを殺さぬまま左に跳びこれを避けた。

電光は対象者の俊敏性・瞬発力を著しく引き上げるが、それと引き換えとなる身体への負荷が半端なく、女剣士の右脚の脛骨、腓骨に亀裂が入り、靭帯はみちっという音を伴い千切れた。

それでも女剣士は構わず今度は無事な左脚で地を蹴り、トワタリーの正面に位置した。


「うぎぃぎぎぃいいい」


女剣士は上腕骨が折れた左腕を意志の力でトワタリーのギロの様な陰茎の高さまで引き上げ、指先から電蟲を5匹放った。

5匹の電蟲は勢いよく飛び出し、トワタリーの陰茎の溝にまとわりつき放電した。

その電撃はトワタリーに致命傷を負わせる程の電圧は到底有していなかったが、トワタリーの性感に有効な一撃であった。


トワタリーの脳に抗えない快感が突き抜け、トワタリーは思わず呻き声をあげた。

脳に刺さった刺激は一瞬で性的快感を頂点まで導き、意識外の肉体の反射運動が開始

された。


ひと言で言えば射精である。


トワタリーの陰茎内を通っている尿道周りの筋肉の収縮活動が始まると共に、トワタリーはバケツをひっくり返した様な夥しい量の精液を放っていた。

トワタリーが放った精液は正面に相対していた女剣士にぶっかける形となったが、女剣士は怯む事なく、電魔剣を振るいトワタリーの腹に刀身を突き立てていた。


大量の精液を放出したトワタリーの一瞬の忘我の隙を突いた一撃であった。

女剣士の一撃による痛みで、トワタリーは正気に戻ったが、時は既に遅かった。


「ああああぁあああああ!」


女剣士は突き立てた電魔剣を渾身の力で引き上げ、トワタリーの腹を引き裂いた。

切り裂かれたトワタリーの腹から今度はバケツでひっくり返した量の血が噴きあがり、次に腸のグネグネした肉の管がぶるんぶるんと飛び出していた。

トワタリーは腹から飛び出た腸を腹の中に納めようとしたが、痛みと動揺で手が震え、何度も自らの手を傷口に突っ込んでしまい、状況を悪化させていた。

トワタリーは時間の経過と共に、大量出血による貧血症状から意識が朦朧となり、そのままばたんと前に倒れ、動かなくなった。


「なんとか一匹…」


トワタリーの精液と血液をもろにかぶり、白く濁った精液と赤黒い血液の斑模様となっていた女剣士はこれらの液が放つ異様な臭気を吸ってえづきながら、何とか難敵を斃せた事に満足していた。


「私ひとりじゃ帰れないですね…嫌ですね、他人に自分の命を委ねるのは」


女剣士はそう言うと、電池が切れた様に膝から崩れ落ち、そして気絶した。


◇◇


ムタロウともう一匹の灰竜「アリー」の戦闘は膠着状態に陥っていた。

未来視という能力を持つ者同士の戦いは、長期戦になるのが常であった。

数秒先の未来を見る事が出来る者同士が相まみえれば、お互い有効打を与える事なく、攻撃と回避の繰り返しとなるのは自明の理である。


実は、ムタロウやアリーの持つ能力「未来視」は然程珍しい存在ではなかった。

ナメコンド軍部の調べでは、転生者(転移者も含む)の4人に一人はこの能力を有して転生してくるという調査結果もある程であった。

然し乍ら、この未来視という能力は、自らが生命の危険に瀕した際に能力者に対して5秒後の未来を見せるだけの代物であって、死へと続く未来を回避する為には、能力者が最適な行動を取らない限り、未来は変えられないという厳然たる現実があった。


未来が見えるだけでは何も変わらないのである。


そもそも生命の危機に瀕した際に発動するという条件が曲者だった。

大半の転生者は自分が持っている能力が何か分からぬ状態で生命の危機に瀕した状況に陥った際、脳裏に5秒後の未来が映し出され、何が起きたのか理解出来ぬまま現実をなぞっていた。

つまりは、未来視の能力を有した転生者が最初の試練を超えて生き残っている時点で強者であると言えた。

そんな強者同士が会戦した場合、勝敗を分けるのは精神力の強さであった。

生命の危機に瀕したやり取りで、数秒後の未来を視たのち、未来を変える為の適切な行動を繰り返す事は、状況処理・判断・正確な行動を取ることであり、能力者のストレスは過大なものであった。


アリーは焦り始めていた。

対峙している相手はどうやら自分と同じ能力を有している様だと思い始めていた。

両手に爪撃、噛みつき、尻尾による打撃、そして毒を噴霧や射出など、自分の持つありとあらゆる攻撃を試みたが、悉く躱されたからであった。

特に、毒の噴霧は広範囲に拡散させる事で逃げ場を無くす必殺の攻撃であったが、敵は毒を噴霧する直前に後方に下がり、これを躱していた。

事前に予測していない限り回避不可避の攻撃であった。

その上、アリーの脳裏に流れる未来が何度も何度も流れてくる事が、彼の精神を地味に削っていた。

未来を何度も見るという事は、つまりは何度も死にかけている事であり、戦闘の時間が長くなるにつれて、アリーの中でぼんやりしていた死のイメージが具体化している事を認識しつつあった。


一方で、ムタロウは戦闘時間が長くなるにつれて、未来視の発動回数が減りつつあった。

未来視が発動してから未来を変える為の最適行動を取る際、能力者は多大な集中力を要する為、自然、ムタロウはアリーの攻撃の癖を見抜き始めており、終いにはアリーの攻撃に対して余裕を以て回避出来るまでになっていた。


アリーはというと、連続して発動する未来視への対処により疲労が蓄積した結果、集中力が切れ始め、ムタロウの剣撃がアリーの身体にヒットし始め、アリーの身体はピーラーで剥かれた芋の様に表皮が削られていた。


「なぜだ?」


「こんなはずじゃない!」


「どうして俺だけがこんな弱弱しい人間に削られるんだ!」


「こいつだけは…こいつだけは殺してやる!絶対に殺す!」


焦りは怒りと深い憎しみへと変化し、同時にアリーは冷静さを欠き始めた。

どうやってムタロウの未来視では回避出来ぬ攻撃をすれば良いか?という考えがアリーの頭の中を急速に満たしていた。


その時、ムタロウの一振りがアリーの右手肘にヒットした。

ムタロウがアリーの右肩口を斬撃しようと剣を振った際、アリーが未来視を根拠とした回避行動を取ったのだが、回避し切れなかったであった。

その結果、アリーの右肘から先はアリーと生き別れとなった。


ぼとっ…とアリーの右腕が音を立てた。


「ああぐがっがいああああああああああああああっ!」


アリーは激高して、ムタロウに突進した。


「お前!死ね!」


アリーの感情が弾けた。

アリーは両足に力を込め、地を蹴った。

アリーの身体が上方10メートル程の高さまで跳ねた。


「毒の雨を撒き散らしてやる。動けなくしてから、お前の四肢を千切って、嬲って殺す!」


上方からの攻撃はムタロウに見せていなかった。

上方からの毒を撒き散らす攻撃ならば、ムタロウも避けきれないだろうと思った。

我ながら不意を突く良い攻撃だと思った。

高揚して地表を見た時、未来視が発動された。

アリーは絶望した。


「馬鹿野郎!上に跳ぶなんて、最後にやっちまったなあ!馬鹿野郎が!」


ムタロウは、大声で喚くと剣の柄を両手で握り身体を大きく左に捻って構えた。

すると、ムタロウの剣…火魔剣コンジロムの刀身が赤色化し、同時に刀身から火蟲がぱらぱらと零れ始めた。


「じゃあな。」


ムタロウはそう言うと、コンジロムをアリーに向けて「ぶん」と振り抜いた。

コンジロムから火蟲によって形成された炎の刃が、ぶっしゃあと飛び散り、炎の刃はアリーの上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた。

上下に分離したアリーの身体は、火蟲の放つ高温の熱により瞬時に炭化した。


「この魔剣を使いこなすための練習イベントだったみたいだな。」


ムタロウがアリーの最後を見て勝利を確信した時、数秒前までアリーであった、炭化した塊が地面に激突し、激突した際の衝撃で粉々になっていた。


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