表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
87/89

前世

ムタロウの推察通り、二匹の灰竜は転生者だった。

ムタロウの相手をしていた灰竜がアリー。女剣士の相手をしていた灰竜がトワタリーという名の人間だった。

二人はアフリカ大陸の某国で診療所を共同経営していた。


診療所は表向きの顔であり、実際は「赤ちゃん製造工場」だった。

望まぬ妊娠をした少女に無償で中絶手術を施してあげると言葉巧みに診療所に誘い込み、施術前の安定薬と称して抗うつ剤をの服用させ、意識を朦朧とさせた上で拉致・監禁するという手口だった。

薬効が切れ意識を戻した少女は自分が強姦されている事に気付き、家族に連絡を取りたいとトワタリーに訴えると、トワタリーは少女を殴り、そして犯した。

犯した後は、同様の手口で騙された少女たちが閉じ込められている部屋に押し込んでいた。


産まれた乳幼児は高く売れた。

乳幼児の使途は、呪術用・臓器移植用・性的倒錯者向けの性奴隷など、この世に生を受けた乳幼児の未来は絶望に満ちたものであった。

救われないのは、これら乳幼児は高く売れるという事でカネ欲しさに自ら診療所に出入りする少女もいたことだった。

貧困は人々の倫理観を奪い、生きる為に行き過ぎた拝金主義を進ませ、それに付け込んだ悪人が金儲けをする・・・そういう世界だった。


アリーは、街中でたむろしている少年に声を掛け、少女との性行為を斡旋した。

無料で性行為が出来ると少年達は大層喜び、盛りの着いた猿の様に毎日診療所に出入りする様に

なった。

これがいけなかった。

無料で少女たちと性行為が出来るという事に怪しさを感じない知性の乏しい少年達である。

秘密にするという発想は当然無く、仲間内に自慢する事で、アリーとトワタリーの赤ちゃん工場の存在は瞬く間に広がり、街では知らぬ者はいなかった。


それから、警察が強制捜査の為に工場を強襲するまでは間もなかった。

監禁されていた30人弱の少女は救出された。

救出された少女の半数は妊娠8か月を経過していた。

工場のゴミ捨て場には炭化した乳幼児の死体や、摘出されたと思われる臓器、成人女性の死体の一部も混じっていた。

その成人女性はトワタリーが臨月前の妊婦を無理矢理犯した後、妊婦の腹を蹴ってお腹の子供共々死に至らしめたものだった。

警察に拘束された二人は・・・罪に服す事もなく、何事も無いかの様に釈放された。

警察官に多額のカネを握らせ、無罪を買取ったのだ。


「カネがあれば何でも出来る。正義さえも買取る事が出来る」


二人はこの一件を通じて、益々増長していった。


しかし、世の中にはカネでは買えないモノがある事を二人は気付いていなかった。

憎しみ・恨みからの解放はカネでは買えなかった。

釈放された夜、二人は釈放された祝いと称して、酒場でしこたま酒を飲んだ。

二人はべろんべろんに酔っ払い、ふらつく足取りで帰路についた。

そこで、金属棒や農具、石を持った男たちの襲撃にあった。

襲撃した男たちは二人に監禁され、犯され、死んでいった娘の親達だった。

二人は男たちに金属棒や農具で瀕死になるまで殴打を受け、動けなくなったところで裸にされた。

意識が戻ると目の前には怒りに震える殺された少女の母親達立っていた。

二人は母親たちから執拗に暴行を受け、仕舞いには陰茎を鉈でぶった切られた。

切られた陰茎は野良犬にべろべろ舐められたのちに、嚙砕いた処で人間時代の記憶は途切れていた。


次に目が覚めた時、二人は見た事もない二メートル程に生長した草の群生地に倒れていた。

立ち上がり、手を見ると、自分の手は爬虫類の前脚のような色形であった。

手の甲を見ると皮膚は灰色の鱗に覆われ、水気がなくひんやりしていた。

真っ黒な爪が10センチ程の長さで伸びており、自分の手が変容している事にトワタリーは酷く動揺した。

自分の身に起きた異変を悟り、思わず周囲を見渡した時、灰色の体色の大型の蜥蜴の様な生物がこちらをじっと見ていた。


「おまえ・・・アリーか?」


大型の蜥蜴を見てトワタリーは、その蜥蜴に声を掛けたが、言葉は出ず、喉からぐぐぐぐきぎという意味を成さない音が発せられるだけだった。

しかし、そんなトワタリーの呼びかけに呼応するかのように、その蜥蜴の目には驚きと安堵の混じった表情を見せたのち、ゆっくりとトワタリーに近寄って来た。

その灰色の蜥蜴がアリーと知って、トワタリーは自分の身に起きた状況をうっすらと理解した。


蜥蜴・・・灰竜に転生したアリーとトワタリーは、今の身体にどういった能力があるのか先ず検証した。

飛べないが、高く跳躍出来る。

口から毒液を吐く事が出来る。

力は人間の比ではない。

食事は三日にいっぺんで良い。

性欲は非常に強く、一日五回は精を放出して漸く落ち着く。

暴食衝動は非常に強く、他の生き物を見ると攻撃したくなる衝動を抑えるのが大変。

そして、二人に与えられた特殊能力。

アリーは未来視を持ち、トワタリーは鳥瞰視を有していた。

二メートルに生長した草・・・ブラボウが生い茂るこの地ではトワタリーの能力にうってつけだった。

トワタリーの位置から100メートル周囲を鳥の視野で見る事が出来る事は、二人に危害を加える連中の位置関係の把握とアリーの跳躍からの不意打ちが極めて有効だった。

この戦術によってアリーとトワタリーは、何人もの隊商・冒険者達を殺害し、食料としていた。

時には、性の対象として扱ってもいた。

アリーとトワタリーは最初こそ戸惑いはあったものの、人間の殺戮を重ねていくごとに、力による解決に悦びを感じるようになっていた。

特に、自分達を殺害する為にやってくる冒険者たちを屠るのが、何よりも楽しかった。

そんな中、彼らが来た。

これまでの冒険者たちと同様、ブラボウの中に何も考えずに入るいつもの通り馬鹿な冒険者だった。

髭を生やした全身を鎧で固めた奴は、右手で顔面をひっぱたいた。

すると、そいつの頭がポーンと飛んでいった。

頭を失った鎧に包まれた身体は、直立したまま後ろにばたんと倒れ、暫く痙攣をしていた。

トワタリーは鳥瞰視でその様子を見てげらげらと笑っていた。

そうやってブラボウに入っていた残り7人の冒険者たちも鳥瞰視で位置を確認した後、アリーに位置を教え、一方的な殺戮を楽しんでいた。


そんな時、ブラボウに入らなかった2人の冒険者のうちの一人が、ブラボウを焼き払った。

身を隠す為のブラボウを焼き払われた結果、二匹は冒険者に全身を晒す羽目になった。

トワタリーは、「こいつらは危険だ」と直感した。

刹那、もう一人の女剣士が走り込み、剣を一振りすると全身に強い衝撃が走り、思考が飛んだ。

身体が痺れて動かせなくなった。

トワタリーは、アリーに救援の思念を送り、トワタリーの期待通り、アリーは女剣士を尻尾による一撃で吹き飛ばしていた。

トワタリーは、女剣士に不意を突かれた事、危うく殺されそうになった恐怖を怒りに転化し、アリーの攻撃でダメージを負ったであろう女剣士の左上腕を力いっぱい殴りつけた。

女剣士の顔が苦痛に歪むのをトワタリーは見た時、トワタリーは人間だった時の記憶を思い出していた。

赤ちゃん工場で、拉致監禁した少女を殴りながら犯した記憶だった。

穴という穴に突っ込んだ。

泣いたら殴った。

痛みで声をあげたら殴った。

泣くのも痛いのも我慢して堪えていたら殴った。

少女が絶望で目の光が消えていくのを見ているのが最高だった。

トワタリーはその時の記憶と、苦痛に歪む女剣士の表情を重ねたのだった。

トワタリーの下腹部に熱を帯びていた。


◇◇


自らに電蟲が発する電気を帯電させて髪の毛を逆立てていた女剣士は、対峙する灰竜の身体の変化にぎょっとした。

灰竜は、両目を真っ赤に充血させ、女剣士を凝視していた。


「?・・・発情」


女剣士は両脚で直立している灰竜の下部に視線を転じると、灰竜は腹に収納していた男性器を伸ばしていた。長さは1メートル程はあるだろうか。

形は木製楽器のギロの様に溝が入っており、体液で濡れている為か、ぬらぬらと光っていた。

露出したギロは、アンモニア臭と生臭い魚介の腐敗した臭いを撒き散らしていた。


「この灰竜・・・発情してる・・・」


女剣士は灰竜の周囲が真っ白な空間になった。

左上腕の痛みは消えていた。

女剣士の頭にあった痛みや死の恐怖といった生存本能を、どす黒い欲求が塗りつぶしていく。


「3か月前に・・・遊んでから・・・ずっと退屈していたけど・・・竜で遊べる機会が来るなんて。」


女剣士の目が、妖しくよどむ。


「死ぬか?愉しめるか?・・・やはり外はいいですわね。」


女剣士はそう言うと、右手で電魔剣を構え、ニヤリと妖しい笑みを浮かべていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ