ウィドウ・フルチルド
大陸暦1203年10月20日。
ウィドウがブクロに拠点を構えてから丁度三か月が経った。
この間、ウィドウは乱暴狼藉を働いた者を豚種のみならず、種別問わずに処断していた。
それは、乱暴狼藉を働く者への憤りから取った行動ではなく、気に入らない者を斬っても誰にも咎められないブクロの無政府状態に乗った上での行動であった。
行動に正義は無かった。
平時であれば快楽殺人と断罪される行動であった。
とはいえ、ウィドウの娯楽は、結果としてブクロの治安改善に大いに寄与し、街の人間はウィドウに感謝し、豚種を始めとした輩はウィドウを酷く恐れた。
この結果、ブクロの人々の恐れと信頼を勝ち取り、そして、白濁姫という二つ名を得るに至っていた。
そんな「白濁姫」こと、ウィドウは昼間からシュラク亭で酒を飲んでいた。
暇だった。
ブクロに拠点を構えて以来、むかつく豚を毎日斬った。
平均で1日3匹。多い時は10匹の豚を斬っていた。
矯正委員会の職員と捕縛員がウィドウを拘束しようと来た時もあったが、差別差別とうるさかったので斬って捨てた。
はじめは余所者と町の人々に陰口を叩かれていたが、ひと月を過ぎるとウィドウを「余所者」から「白濁姫」と呼び始めた。
豚の精液を浴びながら豚を斬り捨てた場面を目撃した者が付けた名とのことであった。
汚い二つ名だ…とウィドウは思ったが、気にはしなかった。
二か月も経つと豚はウィドウの姿を見ると、こそこそと逃げるようになった。
喧嘩を吹っ掛けてくる豚がいなくなった。
ウィドウに係ると死ぬと阿呆な豚でもわかったのだろう。
そんな状況にウィドウは大いに不満を抱いた。
「斬れないじゃないか。」と、ウィドウは心の中で臆病な豚達を罵っていた。
仕方がないのでウィドウは街を歩き回り、豚を探した。
夜の裏路地、豚の屯する酒場、売春宿、豚の居住区をくまなく歩き、そして豚を見つけ次第斬っていた。
差別と言えば怯むと思い込んでいる矯正委員会の連中もついでに斬った。
そんな毎日を三か月も続けていると、ブクロは豚の居ない元の辺境の町に戻っていた。
白濁姫と呼んでいた町の者は自分の名前を呼び始め、馴れ馴れしく近寄ってきていた。
そんな町の人間の様子を見て、ウィドウは漸く自分の与えられた任務を思い出すと同時に、日和見な町の連中に内心嫌悪していた。
「いや、ウィドウさんがあの汚らしい豚やら偽善集団の矯正委員会の連中を斬り捨てて、追い払ってくださったお陰で、我々ブクロの者も安心して外を歩けますわ!」
身長160センチ程の白髪の痩せた男がドンコの入ったジョッキを片手に、馴れ馴れしくウィドウに声を掛けてきた。
ウィドウは首を動かさず、ちらりと横目で男の姿を見たのち、再び酒を飲み始めた。
そんなウィドウの様子を気にする事もなく、白髪の男は言葉を続けた。
「ムカつく豚共を斬ってくれているのは無論感謝しているのですが、元凶は矯正員会ナンですわ!あいつら種族平等を謳って、獣人種を優遇するから豚共が調子に乗っタンですわ。元凶をどうにかしないと、いつまで経っても繰り返しナンですわ。」
この白髪の男の言っていることは理解出来る…とウィドウは思った。
種族や弱者保護を強く主張している奴等程胡散臭いものはない。
普段平和主義を主張していながら、主義主張が異なる人間を暴力で押さえつける輩。
子供を楯にして、強訴を行う輩。
誤った情報で民衆を扇動し、敵と見做した者を社会的に抹殺しようとする輩。
そういった屑の様な者をウィドウは嫌という程見てきた。
矯正委員会の連中はそういった輩の中でも飛び切りの屑であるとウィドウは認識していた。
しかし、矯正委員会への嫌悪感と共に、強者に擦り寄って不満を口にする目の前の男にも同様の嫌悪感が湧き出ていたことを自覚していた。
「そうね。その元凶が分かっているならば、貴方が何とかしたらいかが?」
ウィドウはその男が出来る訳ない提案を投げかけた。
自分で問題を解決しようともせず文句ばかりを言う白髪の男に対する嫌悪感を露わにした。
ウィドウの反応が予想外だったせいか、男はしばらくきょとんとしていたが、そのうち、ウィドウの発言の意図に気付き顔を真っ赤にしながらウィドウのもとを離れていった。
その辺の酔客ならば殴り掛かっていたのだろうが、相手は白濁姫と恐れられている凄腕の魔導剣士だ。
反抗的な態度を取れ返り討ちに遭う事は必至で命がいくつあっても足りない。
それでも男は、ウィドウに侮辱された事によって沸き起こった怒りの感情を処理できず、思わず捨て台詞を吐いていた。
「ああ、ムタロウの旦那がいれば、こんな不愉快で不潔な女に奴に頼らなくても町の平和は保てたのになアァ」
そう言うや否や、白髪の男の身体がびきっと真っすぐに硬直し、全身を小刻みに振るわせ始めていた。
ウィドウが電蟲を白髪の男に放ち、拘束したのであった。
人間の身体には微弱な電流が流れており、この電流が筋肉の動作を促す。
ここに強力な電流を継続して流すと筋肉は外部から電流でもって制御を奪われ、自分の意志で身体を動作出来なくなるのだ。
電蟲使いの恐ろしさは、相手の行動を容易に拘束する事が出来る事で、如何に屈強な猛者であっても、ひとたび電蟲によって「捕獲」されてしまえば女子供でも容易に倒せる事であった。
「面白い事を言いますね。そのムタロウという方の話を聞かせてくださいな?」
「なぁに、ここは私のお気に入りのお店ですから、殺生はしませんよ。安心してお話頂いて結構ですよ。」
その声音は大層甘ったるく、電蟲を用いて拘束している主が発するものとは思えなかった。
白髪の男は白濁姫に拘束された事で自分の見立ての甘さに後悔したが、一方で公の場で同胞である人間族に対し命に関わるような危害を加える事は無いと高を括っていた。
「…ッツ!!」
ウィドウの邪悪に歪み切った愉悦の表情を目にした白髪の男は、自らが虎の尾を踏んだと知ったのであった。
◇◇
ご無沙汰しております。
ウィドウ・フルチルドです。
王都の状況は如何ですか?
私は、7月にブクロに到着し、この地で3か月ほどお世話になっています。
ヴァルトリン様はブクロの街がどの辺になるかよく分かっていないでしょうから、教えて差し上げますが(笑)、ブクロはウーマ砂漠を南に100キロほど下った、小さな町です。
農業を主産業とする何の変哲もない辺境の町だったのですが、私がこの町に来た時には豚種に乗っ取られかけていて、人々はおよそ健康で文化的な生活を送る環境から離れていたため、身体を馴染ませる事に苦労しました。
さて、例の件ですが町の人たちとの信頼関係も漸く構築し始め、手がかりとなる情報も拾える様になってきました。
尋ね人の件ですが、この町では特に悪目立ちをすることなく、普通に生活していた様でした。
町の人で彼を悪く言う人はおらず、寧ろ全幅の信頼を置いている節すらありますが、その理由について聞いても町の人は口をつぐんで誰も答えてくれません。
察するに、彼は私と同じかもしれませんね。
彼について個人的にもとても興味を持ちましたので、彼の後を追ってみたいと思います。
取り敢えずは、ナマナカ峠を越えたナマナカ盆地にあるイーブクロに向かいます。
イーブクロに着いた段階でまたお手紙をだしますね。
ヴァルトリンさまもどうかお身体にお気をつけてくださいね。
追伸:私の不在の間、ブクロのお守り役の配置をお願いします。
大陸暦1203年10月25日 ウィドゥ・フルチルド
「さ、取り敢えずの報告はこれでいいか…報告書ってホント苦手。」
ウィドウは椅子の背もたれに体重を乗せながら両手を天井に伸ばしのびをした。
「オシャブルさん、あなたのお陰で、ようやく上司に報告ができたわ!本当にありがとう。」
ウィドウが声を掛けた先には椅子に手足を拘束された全裸の男がいた。
男は猿轡をされ、声はおろか、呼吸をままならないようで、ひゅるひゅると呼吸音を出していた。
ウィドウがオシャブルと呼んだその男はシュラク亭でウィドウに声を掛けた白髪の男だった。
「んーんーーーーーーーーーッ!」
ウィドウに声を掛けられたオシャブルは、芋虫の様に拘束された全身をくねらせて、何かを訴え始めた、
「あら、あれだけ精を出したのに…」
そう言うとウィドウはパチンと指を鳴らした。
と、同時にウィドウの指から電蟲が五匹程弾け飛び、そのまま、だらりとしおれていたオシャブルの陰茎に吸い込まれていった。
五匹の電蟲がオシャブルの陰茎に埋もれた途端、オシャブルの陰茎はびくんと痙攣しながら激しく勃起していた。
括約筋の収縮反応によって、どうやら射精していた様であったが、ウィドウによって5日間継続的に強制的に射精させられていた為、オシャブルは射精に伴う快感よりも射精し過ぎた事による尿道の強烈な痛みと、疲労と、屈辱と恐怖と絶望が入り混じった精神的な疲弊で音を上げていた。
そんなオシャブルの苦しむ姿を見ては、ウィドウは欲情し、自慰行為に耽っていたのであったが、5日間も同じ人間の苦しみながら射精する様子にウィドウは飽き始め、この白髪の男を最終的にどう処分するか考え始めていた。
「五日ぶりに会話をさせてあげますね。」
ウィドウはそう言うと、オシャブルの猿轡を取っていた。
猿轡をとって言葉を発する事が出来る様になったオシャブルの最初の言葉で、どう処断するか決めようと思ったのであった。
猿轡を外されたオシャブルは、ぜいぜい息を荒げながら、覗き込むようにウィドウの顔を凝視していた。その目には憎悪も恐怖も無かったことにウィドウは不思議に思った。
「尿道が痛い…もう勘弁してくれ…。」
「?」
「痛いんだ…出し過ぎて…。ちょっと休ませてくれ…少し休んだらまた出せるから。」
「それは頼もしいですわね。」
「頼む…休ませてくれ。」
「そうですね。もう休みましょう。一生分の精は出してもう満足したでしょう?私もあなたで十分に楽しんだので、もういいですよ。解放します。」
「ああああ、ありがとうッ!ありがとッ…ぐッ…」
突如、オシャブルは苦痛に顔を歪ませ、顔を真っ赤にさせながら、両手の拘束具を外そうと激しく暴れ回った。
オシャブルの座る椅子は、床にしっかりと固定されおり激しく暴れる事によって掛かる力をものともせず、微動だにしない。
オシャブルは椅子に固定されたまま激しく身悶え、両方の白目を朱に染めながら涙を流し、そして、息絶えた。
ウィドウが電蟲をオシャブルの心臓に放ち、心臓の動きを狂わせたのであった。
魔導をつかって人為的に狭心症を作り出し、強烈な胸の痛みと呼吸が出来ない苦しさと、死への恐怖を十分な時間を掛けて味あわせた上で命を奪ったのであった。
苦しみ、死にゆくオシャブルの姿を見ていたウィドウは頬を上気させ、免れる事の出来ぬ死への恐怖から脱しよう人生最後の抵抗を続けるオシャブルの前で下半身を露わにし自慰に耽り始めた。
オシャブルの命が途絶えたと同時にウィドウも絶頂を迎え、獣じみた呻き声を上げていた。




