対峙2
久しぶりに連投しました。
涼しくなりましたね。
戦闘はムタロウの斬撃で始まった。
ダンッ…!
地を蹴る音と土煙が同時に上がると、ムタロウの身体はインノに一直線に飛び込んでいた。
「ひッ…」
インノはムタロウが予告なく攻撃に移ると想定していなかった為、声を挙げていた。
「馬鹿ッ!」
インケがインノとムタロウの間に割って入りムタロウの突きを止めていた。
ムタロウの剣先はインケの小手を突いていた。
「魔防具かッ!」
ムタロウは剣の柄に伝わる感触に肉でもなく、金属系の防具でもない違和感を感じ、同時に剣先に目を転じた。
剣先は無数の火蟲で形作られた小手の発する炎が剣先を包んでいる。
火蟲の小手…文字通り火蟲で形成された小手である。
剣先を包む火蟲が百足の様に剣を伝ってムタロウの左手を這う。
「ちぃッ」
ムタロウは左腕を振り、左手を這った火蟲を払う。
左手から肉の焼ける臭いが漂う。
半端に焼けた臭みだった。
「馬鹿ッ!相手を舐め過ぎだッ!俺が止めなければお前はアイツに首を貫かれていたぞ!」
インケがインノを叱責する。
「ごめん…インノ。油断した…まさか行き成り斬りかかるとは思わなかった。」
インノがしゅんとした声を発する。
「しゅんとするのはこの戦闘が終わってからだ!俺がお前を守るから、インノ。お前はアイツを仕留める事に専念しろ!」
「…分かった!先ずは、あの剣士だな。」
インケの叱咤激励に、インノは気持ちを立て直し、槍先をムタロウに向けた。
「行くぞ!」
気合一閃、インノは掛け声と共に、左右に跳ねながらムタロウに接近し、ムタロウの前方3メートル程で、上方に跳ねた。
ムタロウの視点では、左右ジグザグに跳ねていたインノの姿が消えた様に見えていた。
未来視発動-
脳天から串刺しにされるムタロウの姿がムタロウの脳内に流れ込む。
死の未来を認識すると同時に、ムタロウは右方向に飛んでインノの必殺の一撃を回避する。
回避した先にインケが現れ、火蟲の小手でムタロウに殴り掛かって来た。
ムタロウは、インケの攻撃もまた未来視を以て顔を右に傾け、インケの殴打を避けた。
と、同時に右方向に流れる身体の勢いを止める事なく、そのまま左脚でインケの鳩尾目指して蹴りを入れていた。
「!?」
爪先から伝わる衝撃と感触はやはり生身の身体のそれではなく、先刻の火蟲の小手を突いたそれと同じものであった。
「これも魔防具かッ!?」
ムタロウの認識は正しく、インケは火蟲の胴を纏いムタロウの左蹴撃を防いでいた。
火蟲の胴にムタロウの左脚が接触すると、火蟲は脚を伝いムタロウの左脚を焼こうとした。
「よくやった!インケ!」
態勢を崩しながらインケの腹に蹴りを放つことで、完全に態勢を崩したムタロウにインケが飛び掛かっていた。
インケの突きを未来視で見たムタロウは、だがしかし、反撃の道筋もまた見えなかった為、崩れた体勢を戻すために踏ん張る事はせず、勢いのままに右に倒れ込むように転がり、インノの突きを辛うじて回避した。
「やるな!よく回避した!!」
「ほんと…びっくりですよ。」
インノとインケはムタロウが二人の攻撃を回避した事に驚嘆していた。
「そこの小娘と婆ぁ!仲間がピンチだぞ。助けなくていいのか?」
インノがクゥーリィーとラフェールを挑発していた。
また調子に乗ってと、苦々しい表情でインケはインノを睨んでいる。
インノの挑発を受けたクゥーリィーは唇を噛んだ。
言われなくとも、ムタロウの援護に入りたい。
しかし、この竜人達の動きがあまりにも速く、動きの予測がつかない為、下手に火線を放つとムタロウに命中するのではないかと恐れ、何も出来ずにいた。
ラフェールもまた同様であった。
「だろうね。魔導師ども。お前等の魔導では私たちを当てる事は出来ない!精々、この男が死んでいくのを、その特等席で見ているんだね!」
そうインノは言うと、再びムタロウの右に跳び、そして背後に跳び、左側に跳んでムタロウを中心に円を描く動きをとった。
その間に正面からインケがムタロウに殴り掛かった。
ムタロウは右に位置するインノに注意を払いつつ、殴り掛かってくるインケの火蟲右ストレートを避ける為、左に跳ぼうとした。
「!?」
ムタロウの周囲に火蟲の帯が形成されていた。
火蟲が一定間隔で凶暴な光を強弱させて光の帯に飛び込んでくる獲物を待っている。
火蟲の帯に一瞬取られたムタロウは、右頬に肉が焼ける熱さと、衝撃を感じた。
インケの右ストレートがムタロウの左顔面をヒットしたのだ。
インケの殴打でムタロウは吹き飛んだ。
不覚にも、ムタロウは一瞬意識を飛ばしていた。
「ははッ!ちょろいちょろい!」
インケの殴打で一瞬無防備となるムタロウにインノが止めの突きを入れようとする。
「ムタロウ!」
クゥーリィーが悲鳴をあげた。
「ムタロウ!避けろ!」
ラフェールが叫んだ。
「ふふん。」
インケは勝利を確信していた。
その刹那…
インケは視界が突然ブラックアウトし、次に眼前に視界が現れた時、インノの槍に貫かれている筈であったムタロウは、インケ達から十分に距離を取って立っていたのだった。
「何があったんだ?」
インケは状況が読みこめず困惑していた。




