悪党狩り
今日も飲み会でしたが、何とか飲む前に大まか書き上げました。
差別主義者コンジローの総括事件から3週間。
裏社会の住民の落ち着きは未だ変わらず、寧ろ事件で矯正委員会と竜門会の関係が公になった為に、竜門会の影響が表社会に侵食してきていた。
特に顕著だったのは、治安の悪化であった。
これまで大人しくしていた豚種が矯正委員会、しかも上位幹部のキュア・ビーティー直轄である事が明らかになった事で、後ろ盾を持った豚種共は増長し、町内での乱暴狼藉が目立つようになっていた。
豚種に集団で半殺しにされるもの、集団で路地裏に連れ込まれ輪姦されるもの、拉致・殺害されるものが日に日に増えていった。
町の運営側は豚種の乱行に苦虫を嚙み潰しながらも、ブクロの代表者であるコンジローへの仕打ちの記憶が鮮明に残っており、矯正委員会からの報復を恐れ何もできずにいた。
このままでは、ノーブクロは豚種に乗っ取られる…
町の人々が町の急激な変化への不安を口にし始めた時、事件が起こった。
事件の被害者はシワという竜門会の下っ端構構成員だった。
シワはコンジローへの私刑を聴衆として煽り、嗤っていた豚種の一人であった。
この日はノーブクロ商店街で夕飯の買い出しをしていた母子に因縁をつけ裏路地に引きずり込み子供の目の前で犯し、絞め殺した。
その様子を見て泣き叫ぶ子供を殴り、そして犯したのち、子供を殴り殺した。
町の治安部員が現場に駆け付けた時、子供の遺体は割れたトマトの様に頭が弾け、周囲に脳漿を撒き散らし、首から下の身体だった部分は痙攣しているという凄惨なものであった。
治安部員は、女を犯し、性欲と浅ましい征服欲を満たして悠々と現場を後にしていたシワを拘束した。
町の人々はあまりにも惨い出来事にシワの厳罰を強く望んだが、矯正委員と竜門会による
「種族を問わない平等の精神により、適正な判断を下す」
との共同宣言により無罪が宣言され、シワは即時釈放された。
この事件により豚種の犯罪行為に拍車がかかり、昼夜問わずノーブクロは豚種の傍若無人の振る舞いに怯える町と化していった。
そんなノーブクロを震撼させる事件が起きてから4日後、ノーブクロの飲み屋街の夜道で周囲を威圧するように歩いていた。
シワは矯正委員会より事件の影響が沈静化されるまで自重するよう強く言われ、あの日以来女を絶っていた。
そんな中、シワは飲み屋街の夜道で赤色の髪を揺らして歩いている人間族の若い女を見つけた。
背丈、後姿から推察するに、14~15歳位の女だとシワは思った。
思うや否や、シワは即座に赤髪の女に駆け寄り、有無を言わさず後ろから担ぎ上げ、そのまま走って路地裏に引きずり込んだ。
それは、4日前に母子が無念の死を遂げた犯行現場であった。
路地裏まで担ぐとシワは女を投げ捨た。
「痛いっ…」
地面に飛ばされた表紙に女は小さい悲鳴を漏らした。
シワは、女の悲鳴を聞いて、今すぐにでも犯したい衝動にかられたが、何とか堪えて女の顔をまじまじと見た。
赤髪の女は、切れ長の目であり、芸術品と言いたくなるような美しく形の良い鼻筋であり、そしてなによりも周囲に緊張感をもたらす隙の無い空気感を持った少女であった。
シワは、その女の美貌を見て自分の股間が滾るのを自覚した。
「差別、良くない。大人しく、俺と、する。」
「……。」
シワは女の反応を見て「おかしい?」と思った。
大抵の人間の女は豚種と対峙すると、豚種の持つ醜悪さと圧倒的な対格差による威圧感で怯え固まってしまっていたが、この女は怯えも固まりもせず、寧ろシワに臆することなく正面から見据えていた。
シワの身体は本人の意識とは逆に自分の立場を感じたのか、そわっとする悪寒をシワの中に走らせた。
びきっ…びきっ…
シワは自分の四肢が何かに引っ張られている事に気付き、自らの身体を見回した。
目を凝らすと両手首・両足首にきらきらとした糸の様なものが絡みついている。
「あ…アツイ!」
絡みついた何かに気付いた時、何かに巻き付かれている手首・足首に灼熱の痛みを感じた。
この熱さはきらきらした手首・足首に絡みつく何かのせいだ。
シワは四肢の熱さの原因が、きらきらした何かであると判断し、振りほどこうと試みた。
びきびきびきびき…
ところがシワが振りほどこうとすればするほどに、何かは固く巻き付き、そして何かの四肢を引っ張る力が強まっていた。
「あががががががぁっ!」
何かが引っ張る力はどんどん増していき、とうとうシワは大の字となって宙に吊るされていた。
大の字に吊るされ、口以外全く動けなくなったシワは、はっとなって、目の前の赤髪の女に目を向けた。
女は、表情を一切変えず、吊るされているシワを見つめていた。
女はクゥーリィーだった。
シワを拘束している何かはクゥーリィーの放った火糸であった。
クゥーリィー初等魔導・中等魔導学校を経て、火糸の火炎温度を自在に調整出来る程までに技量をあげており、シワの捕獲に当たっては火糸を用いたのであった。
「なんだ、女!降ろせ!差別だ!豚種だからってこのような扱いは許されない!」
シワは模範的な豚種であった。
知能の低い種らしく、文脈を考慮せずに差別という言葉を使い、相手を怯まそうと試みていた。
そんなシワを見て、クゥーリィーは小さな声で「あげてください」と呟いた。
「あ、あ、アツイ!アツイ!!!アツイアツイアツイ!!!!」
シワの四肢の火糸が赤く輝き始めた。
クゥーリィーが火糸の温度を上げたのだ。
「アツイ!アガガアアガアアアアアアアァ!!!!」
火糸の温度は200℃前後か、肉ならば生焼けする温度であり高熱による切断もない、炭化もない。
ただ、ただ、延々と灼熱の痛みが続く地獄の苦しみだった。
「悲鳴がうるさいですね……巻いてください。」
ぴしゅっ…とクゥーリィーから5本目の火糸が放たれ、シワの口の周りに絡みついた。
「‥‥‥‥!!!!!」
シワは火糸によって口をふさがれ、もはや悲鳴すら上げる事が出来なくなった。
シワの目から苦痛で涙が流れていた。
涎も、鼻水も流れていた。
そんなシワの顔を見て、クゥーリィーの脳裏に涙も、鼻水も、涎も流しながらなりふり構わず赦しを乞うていた父の姿の記憶が重なった。
「上げろっ!!!」
クゥーリィーの怒気の籠った声を受け5本の火糸は青白く発光し、その瞬間、シワの手首・足首・鼻は切断され、火糸の支えを失ったシワはそのまま、べちゃっと墜落した。
墜落したシワは地面に落ちた衝撃による痛みと切断された箇所の痛みを堪え、クゥーリィーを組み伏せようと這いつくばって迫ってきた。
「汚い…」
そんな様子を見てクゥーリィーは嫌悪感を隠さずにシワを評すると、右手でシワを指差し。
「飛ばしてください。」
と蟲に指示を出した。
途端、シワの右肩に赤い紋様が発生した。
シワが右肩の紋様に気付いた刹那、紋様から火柱が吹き上がりシワの右手が吹き飛んでいた。
「ぷぎいいいいぎいいいいいいい」
右肩から先を失ったシワが苦痛に転げまわり、泣き叫んでいる姿はまさに豚であった。
「飛ばしてください。」
次にクゥーリィーが蟲に指示を出した後に、シワの左足が吹き飛んでいた。
火柱。
クゥーリィーの新しい火魔導だった。
赤竜のうろこを目指し、中央カマグラ山脈をムタロウと行くために習得した火魔導だった。
こんなところで使うとは…とクゥーリィーは苦痛でのたうち回らうシワを見て内心思っていた。
「仕上げをしましょうか……吊るしてください。」
クゥーリィーは淡々とシワのとどめに入った。
豚種を殺すことに一切の躊躇がなくなっていた。
◇◇
シワの死体が見つかったのは、それから2日後であった。
シワに殺された母子を弔うために花を置こうとした町の人が路地に散乱しているシワの死体を発見したのだった。
通報を受けつけた治安員がシワの死体を確認すると、シワの身体に火で肉を焦がした事による文字が記されていた。
「ツギハオマエラダ。ブタトハゲトオンナ。」
この予告は、瞬く間にノーブクロ中に広まり、当然のことながらキュアとズールの耳にも入ったのであった。




