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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
23/89

事後処理

日曜夜に更新するつもりだったのですが、あまりに眠くて書くのを諦めて寝てしまってました。

王都ナメコンドは、その名の通りナメコンド王国の首都である。

王都ナメコンドは政治、経済、文化の中心地であった。

気候は年間を通して降水量もそこそこで、寒暖差も然程ない農作物の耕作に適した地である為、ムーという穀物の耕作が盛んであった。

ムーは粉末にする事で麺やドンコというパンに似た食料に加工したり、お菓子の材料にしたりと食糧としての汎用性が非常に高く、コンドリアン大陸の人々には欠かせない食材であった。

そして、ナメコンドはコンドリアン大陸最大のムー輸出国であった。

このムーの輸出によりナメコンドは莫大な輸出利益を得ており、ナメコンド王ナメルスは絶大な財力と権力を有していた。

そんなナメコンド王国で国王ナメルスの次に権力を有しているのがナメコンド国軍を掌握する軍務省長官デカマック・ファストと矯正委員会委員長ウーマ・ヨーコのふたりであった。


そのウーマは、軍務省の隣に立地する矯正委委員会建屋内の幹部会議室の中心に座っていた。

3か月毎に実施される矯正委員会活動報告定例会議の議長として会議を取り仕切っている処であった。


ウーマは日ごろ喜怒哀楽を見せない冷徹・冷静・怜悧な指導者と矯正委員会職員間での評判であった。

しかし、この日のウーマは己の内に湧き出た不快感を隠そうともせず、鋭い視線を中年の女に向けていた。

視線の先は同委員会委員のミィーズゥ・ポゥであった。


3か月前の定例会議でミィーズゥは魔人族のテカール・イヴを擁して差別主義者の疑い濃い、ムタロウ達を確保すると大見得を切ったのであったが、テカールはムタロウに返り討ちに遭いイーブクロ内を流れる川にゴミの様に捨てられていた。

テカールは四肢を切断され生きた状態で放置されての出血死と、ほぼ同時期に起こったブクロの豚種やナマナカ峠の強盗団の殺害方法と同様であったため、巷では同一犯によるものと囁かれていた。


「ミィーズゥ…。やらかしてくれましたね。あれ程自信満々に差別主義者を確保すると言っていたのに、雇った魔人族が返り討ちにさるという体たらく。この不始末…どう責任とるのですか。」


「本当に申し訳なかったのですぅ。まさかあの差別主義者が魔人族を退けるだけの実力を持っていたとは知らなかったんですぅ。次こそは適切な人材と作戦を考えて、差別主義者に教育の機会を与えるんですぅ。」


ミィーズゥは目をキョロキョロさせながら弁解をしていた。

実際のところミィーズゥにとっても今回の件は想定外の出来事であった。

矯正委員会に反抗する者は珍しくはなかったが、家族や恋人などへの危害の仄めかしや嫌がらせをすれば大抵の者は屈してきた。

それでも、反抗する者は冤罪をでっち上げて当局にて拘束したり、傘下の団体を使って私刑を加える事で黙らせてきていた。

彼女にとって最強の手持ちの駒である魔神族のテカールを起用する事はムタロウの拘束を約束されたものという認識であったのだ。


「ムタロウ一味という差別主義者の拘束はミィーズゥ、貴方では荷が重すぎたようですね。」


「そんな…ひどいですぅ…。」


「そもそもムタロウ達はノーブクロに入ったというではありませんか。北東部はあなたの管轄ではありませんので、今回の任の失敗を以てムタロウ拘束の任を解きます。」


「………。」


ミィーズゥはいつもの人を小馬鹿にしたような言葉を発する事すらもできず黙り込んでしまった。

彼女の歯軋りの音が今にも聞こえそうな表情であった。


「後任は北東担当のキュア・ビーティを任命します。」


委員席に座っていた一人のこれまたベリーショートの中年女が立ち上がり、満々の笑みを浮かべていた。


「ありがとうございます。精一杯やらせていただきます。差別主義者には負けへん!」


キュアは人をミィーズゥとはまた異なる人を生理的に不快にさせる受け答えをしたのち、ちらりとミィーズゥを見て嗤っていた。


ミィーズゥは顔を伏せ、悪鬼の如き形相をウーマ達に見られぬ様、隠す事でいっぱいいっぱいであった。


◇◇


ムタロウ達は、仲買人であるデルンデスの隊商の護衛としてノーブクロ向かっていた。

デルンデスの懸念の通り、南カマグラ山脈沿にあるノーブクロへ続く道はブクロ周辺やナマナカ峠よりも遥かに危険な魔物が生息しており、腕の立つ護衛を複数揃えないと無事に当地に辿り着く事は容易ではなかった。


カマグラ山脈一帯は竜の生息地として大陸中に知れわたっており、最上位種の赤竜から下位種の灰竜迄とありとあらゆる種類の竜がいた。

ひとくちに竜といっても赤竜の様に数多いる冒険者の中でも上位1%の実力者のみしか太刀打ち出来ない戦闘力を持つ反面、知能が非常に高く、こちらから危害を加えない限り、無闇に人を襲わないものもいれば、灰竜のよう戦闘力はそこそこであるものの、知能が極めて低く、視界に入った生き物を食料と見做して周辺住民や行商人を見境なく襲う厄介なものまで千差万別であった。


ノーブクロはこういった危険種討伐の前線基地として発展した歴史があり、古くから高額報酬目当ての冒険者が各地から集まる町であった。

当然、討伐の過程で大怪我をする冒険者も他の町よりも遥かに多く、やはり怪我人治療の報酬目当てで治癒師や医師が多数集まっていた。


ムタロウ達はイーブクロを出てから、南カマグラ山脈沿いを進んでこの日で5日目であったが、既にここまでで灰竜に5度遭遇していた。

うち3度はムタロウが灰竜を排除したが、残り2度の灰竜との遭遇戦ではクゥーリィーが灰竜を排除していた。


あるとき、樹上に隠れていた灰竜に上方からの奇襲を受けた時は、クゥーリィーの火魔導によって灰竜を一瞬で黒焦げの肉塊に変えていた。

そのとき、ムタロウが驚いたのは、クゥーリィーの魔導操作精度の高さであった。

クゥーリィーの放った火魔導は魔導操作技術の頂点かと思わせるものであった。

この時クゥーリィーが放った5本の火魔導のうち、二つの火線(ファイアービーム)は灰竜の両眼を貫いていた。

そして、三つ目の火線(ファイアービーム)は肛門から体内に侵入して爆せ、残り二つは火糸(ファイアースレッド)となって灰竜の手足にくるりと巻き付き、一瞬で四肢を切断していた。


ムタロウがイーブクロで戦った魔人族のテカールの魔導操作精度・威力よりもクゥーリィーのそれの方が遥かに上であった。

何より特筆すべきは、一瞬で戦闘不能にする判断を下し、5つの火蟲の最適操作をしてのけるクゥーリィーの冷徹さであった。

ムタロウはクゥーリィーの資質に末恐ろしさすら感じていた。

また、同じくクゥーリィーの火魔導の凄まじさを目の当たりにしたデルンデスは、先日の失礼な言動について心から頭を下げて謝罪をしクゥーリィーを困惑させた。


そんなこんなで、ムタロウ達は灰竜との遭遇戦に幾度と見舞われるものの、さして窮地に陥るような事もなく、無事にノーブクロへ到着したのであった。






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