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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
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ムタロウの呪い③

仕事から帰ってきて、議事録書いていたので投稿が遅れてしまいました。

議事録は現実世界の小説で、これはこれで面白いのですが。

 ラフェールとクゥーリィーがムタロウの呪いについてやり取りをしていた日の夜、ムタロウは夜の見張り番で焚き火の前に座り周辺を警戒していた。

ムタロウは火勢が弱らぬよう、枯れ枝を焚き火にくべていた。


「ちょっといいかのぅ」


ラフェールがムタロウの横にちょこんと座ってきた。

いつもと違い、ムタロウの股間をそろりと触ってきたりもせず、至って真面目な調子で座り、話しかけてきた。


「どうしたのか?」


ムタロウもラフェールの雰囲気が普段と異なっていたことに気付き、そしてラフェールが何かを言おうとしていた事が分かったので、それ以上の言葉は発さず、ラフェールの言葉を待った。


「実はのぅ…」


ラフェールは昼間のクゥーリィーとのやり取りをムタロウに話した。

クゥーリィーについて話しているラフェールの目はとても穏やかで、かつ真剣であり、それはわが子の行く末を期待し、心配する母親の目であった。


「クゥーリィーはお前さんの呪いを解くために自分も何とか役に立ちたいと言っておったぞ。彼女はお前さんの為に何かしたいと心から思っているぞ。」


「そうか……。」


ムタロウはゆらゆらと好き勝手に動いている炎を視線を向けながら黙り込んでいた。


「お前さんはクゥーリィーを最終的にどうしたいと考えているのじゃ?」


「……。」



「ムタロウ!」


ラフェールの声は、質問に対する回答から逃げる事を許さないという強い意志が籠っていた。

その声に気圧されたか、ムタロウは困り、悩み、迷いの表情を作り、また沈黙した。


「…どうにか、あいつを一人でも生きていける様にしたいと思っていた。この旅を通じて一人で生きているだけの知識と生きる力をつけた上で、独立させたいと思っていた。」


「しかし、あいつの魔導のセンスを目の当たりにして、自分と行動を続ける事は、あいつの才能を潰す事になってしまわないかと思い始めている。あれだけの才能があるのに、正当な教育を受けられないがために魔力量は増えず、使える魔導も初級魔導だけだ。俺たちが魔導士でない以上、これ上の上がり目は期待できない。」


「確かにその通りじゃのう」


「俺の呪いを解除するために役に立ちたいと言ってくれるのは、本当に嬉しい。でも、あいつの真っすぐな思いは、この世界に辿り着いて以来、糞みたいな毎日を過ごしてきた俺が受けていいのだろうかと考えてしまう。」


「……。」


「俺は自分自身、クゥーリィーに感謝される様大層な奴ではないと自覚している糞野郎だ。だから、クゥーリィーに俺の呪いの内容やなぜ呪いを掛けられた知られても関係ない筈なのに、いざ言おうとすると言葉が出なくなる。」


「……。」


「なぜそうなってしまうのかここ数日ずっと考えていた。」


「で、なんだったのじゃ?」


「…多分だが、俺はクゥーリィーに呪い内容や呪いを掛けられた経緯を知られたくないとかそういう話ではなくて、()()を知られた事でクゥーリィーから軽蔑されるのがとても辛いのだろうと思う。」


ムタロウは上手く纏められない自分の感情を一つ一つ、そして、たどたどしく声に出して自分の考えを形つくる作業をしていた。


「…まるで、子供に対していい格好をしたいと思う父親のようなモノ言いじゃのぅ。」


ムタロウがラフェールの質問に対し、真摯に答えた事もありラフェールも普段の様に茶化すことなく、ムタロウの話に対する素直な感想を述べた。


「はは、そうかもしれないな。これでも元の世界では2児の父親をやっていたからな。どうしても、子供からは尊敬されたいという浅ましい気持ちが出てしまう。」


「なるほどのう…。そういう感情があるとなると、呪いの話はしたくないというお前の気持ちは合点がいくのぅ…。」


ラフェールは、それ以上クゥーリィーの事について話題に触れるのを止めた。

ムタロウもまた沈黙し、焚き火に枯れ枝をくべ、ゆらゆらと揺れる炎をじっと見続けていた。





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