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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
15/82

制裁

ここまでは一気に書かなければと思いました。

イーブクロへポーションを仕入れる為、ナマナカ峠の街道を登ってくる行商人一行がいた。

行商人は街道入り口の名も無き町で冒険者ギルドで4人の護衛を雇っていた。

近頃のナマナカ峠での脅威は峠に生息するベアリングベアーよりも強盗団であるとイーブクロへ向かう商人たちの間では有名な話となっていた為、この行商人も自分の身の安全が第一と大枚を叩いて護衛を雇ったのであった。


「デルンデスさん!馬を休ませたい。ずっと歩き詰めで馬がへばってる!」


行商人の馬車を四方囲う形で護衛している剣士の1人が馬の様子を見て、デルンデスという雇い主に声を掛けた。


「了解した。…が、馬には申し訳ないが、もう少しで山頂に到着するのでそこまでは頑張ってもらいたい。山頂についたらたっぷり水と餌をやるからさ!」


デルンデスは馬を含め疲れを見せていた搬入員や護衛に対して休息予定場所まであと少しであることを馬の世話にかこつけて周知した。

デルンデスは、イーブクロ産のポーションの仲買を生業としていた。

イーブクロ産のポーションは他の産地で作られるポーションに比べ治癒効果が高いと言われており、無銘柄のポーションよりも単価が高いにもかかわらず、買い求める者が後を絶たなかった。

デルンデスはイーブクロまで直接出向きポーションを大量に購入し、それを王都であるナメコンドや周辺の小売業者に対して4倍強の価格で売りさばいていた。

この利益率の高さのおかげもあって、デルンデスの経営する商店の資金力はそれなりにあり、そしてデルンデスの資産もそれなりに潤沢であった。


「デルンデスさん!なんか臭わねえか?」


護衛の一人が、デルンデスの乗っている馬車に寄り、声をひそめる。

そうなのか?と護衛に言われてデルンデスも鼻をくんくんさせた。

鼻に入ってくる匂いは、草木の青臭い匂いであったので、何もしないと言いかけた時、不意に草木の匂いの隙間から、生臭いにおいがデルンデスの鼻の中に差し込んできた。


「確かにこれは……」


デルンデスは言葉を呑んだ。


「シャブリデル!先に山頂に行って山頂の様子を見てきてくれないか。嫌な予感がする。山頂の状況が分かるまで俺たちはここで休息を取る。」


「承知しました!旦那ぁ」


シャブリデルと呼ばれた護衛は、デルンデスの乗った馬車に先行して山頂への走っていった。


シャブリデルは1時間程して青ざめた顔をして戻ってきた。

デルンデスは山頂で何かあった事を察した。


「どうだったか?何かあったか?」


「いやぁ、旦那の予感が当たりましたよ。山頂は足の斬られた死体がゴロゴロ転がっていて、自分、腰抜けましたわ。」


「足?足を斬られた死体だって?なんで足なんだ?」


「それを自分に訊かれてもわかんねえっすよ。」


仲間と合流して気が緩んだか、シャブリデルという護衛はデルンデスに馴れ馴れしい物言いで答えた。


「む、確かにそうだな…まずは自分の目で見てどうするか判断するか…。シャブリデル、現場に怪しい輩の気配はなかったかのか?」


デルンデスはそんなシャブリデルの態度にむっとしながらも、さざ波うった怒りを堪え、質問を続けた。


「すまねえっす。旦那ぁ。自分も人間の死体は何度も見ていますが、転がっている死体がすべて足が無いなんて初めての事で気が動転して逃げ帰ってしまったんで、まったくわからねえっす。」


デルンデスが、お前は何の為にカネを貰っているんだ、この糞が…と、心の中で激しくデルンデスを罵った。

そして同時にデルンデスに偵察の指示を出した自分自身に対しても激しく罵っていた。


こんな所で足切られて死んでいる連中である。強盗団の連中か強盗団と交戦した冒険者のいずれかでであることは容易に想像がついた。

問題は、殺されたのが()()()()()()であった。

転がっている死体が強盗団で無いと確証を得ない限り、このまま進むのは極めて危険であった。


デルンデスは転がっている死体は強盗団の連中であり、先に進んで問題ない筈とつい希望的観測を以て先に進みたい衝動に駆られたが、自分の命こそ大事と何とか思考の軌道修正を図り、名も無き町に戻ることにした。


◇◇


山頂から少し離れた処に乾いた沢があった。

普段は枯れているが雨が降ると水が染み出し水の流れを作る様で、水が岩を削った事によって出来た窪みは大人が入る程の深さであった。

その沢の脇に2本の木が生えており、その木には全裸の男が二人括りつけられていた。

強盗団の一員である髭の面と鷲鼻だった。


ムタロウの指示でクゥーリィーは嫌々髭の面を、ラフェールは嬉々として鷲鼻の服をひん剥いて全裸にした後、縄を足に括りつけて沢の脇まで引きずり、付近の木に縛り付けたのであった。


「なかなか起きないな…。ラフェール、クゥーリィー、水でもぶっかけて2人を起こせ。」


ムタロウはめんどくさそうに2人に指示を出した。


「はいよ!」


ムタロウの指示をあらかじめ分かっていたかのようにラフェールは事前に沢で汲んでおいた水を髭の面と鷲鼻の顔にぶっかけたのだが、二人はムタロウの目論見通りに意識を戻すことはなかった。


「うまくいかないものだ、仕方ない。」


ムタロウは、そう言ってため息をつくと、髭の面と鷲鼻の前に立ち、左手で剣を抜いて峰で5分の力でそれぞれの顔を叩いた。


「うぅ…、痛ぇ…」


最初に覚醒したのは鷲鼻で、それから続いて髭の面も覚醒した。

二人は自分が全裸で木に縛り付けられている状況を整理出来ず、困惑したのちに昨晩の戦闘でムタロウに倒された事を思い出し、現在置かれている状況を理解した。


「おい!チビ野郎!この縄を解けぇ!」


「お前らこんな事やってただで済むと思っているのか?」


二人は口々に定番の台詞を吐いていた。

ムタロウはうんざりした表情で再度、剣の峰で縛り付けられている二人の横っ面を叩いた。


「痛ってえ!おいチビ!たいがいにしろよなァ。俺たちの仲間は未だ峠を根城に沢山いるんだ!このまま俺たちを殺したりすれば、仲間が地の果てまで必ず報復にくるからぁ。」


髭の面がムタロウをにらみつけながら凄んだ。


「おぉ、怖い…のぅ。わしは残り短い人生を報復に怯えながら生きたくないぞ。」


ラフェールがわざとらしく怯えて見せる。

しかし、木に縛られている髭の面も鷲鼻も自分の命が危ういと察知し、余裕がないためかラフェールの大根演技を本気で怯えていると認識していた。


「おい、婆ァ、そうだろう?残りの人生、何かに怯えて過ごすなんて嫌だろう?そんな生活が嫌ならば俺たちを解放しろ!そしたら仲間たちにはお前達は襲うなと取りなしてやる。」


髭の面はこの絶体絶命の危機を脱する千載一遇のチャンスと思い、脂汗を額に浮かべながらラフェールに向かって猫撫で声を出して何とか懐柔しようと試みた。


「ふん…。茶番を見させられるのは精神的苦痛が伴うな…。もういい。お前らに訊きたいことがあったが、俺が聞いた事を素直に話すような奴ではなかったと改めて分かったので、俺の流儀でやる。」


ムタロウはそう言うとラフェールの顔を見てから再度口を開けた。


「お前らがこの状況で助けを懇願もせずに虚勢を張っているのは大したものだ。しかし、股間のモノが縮こまっているぞ!いくら虚勢を張っても身体は正直だな。」


ムタロウは縮こまっている二人のモノを見て嘲笑った。


「何をいうのじゃ!こやつらはビビッてないぞ!」


突然何を思ったのか、ラフェールが二人の前に来てそれぞれの股間に手を当て、呪文(マントラ)を唱え始めた。

回復魔導であった。


「おい、何をするんだ!ああぁ」


「どういうことだ?勝手に…おれの×××がぁああ」


不可解な事に、ラフェールの回復魔導の光を受けた二人の男根は、むくむくと大きくなり、仕舞いには腹につくかと思う程に屹立していた。


回復魔導(治癒魔導とも呼ばれる)は蟲を使った魔導術とは異なり、神の寵愛を受けて選ばれた者だけが使える魔導術であった。

回復魔導は人の持つ生命力を活性化させて怪我の回復を促すものであり、神の寵愛が深ければ深い程、回復魔導の力は増すのであるが、ラフェールの回復魔導は人の生命力を過剰に活性化(暴走ともいう)させ、時には死に至らしめる事すらできる、()()()()()()()()()()()であった。


意図せず屹立した二人の男根は、ラフェールの回復魔導の賜物であり、ムタロウはお世辞にも美しいとは言えない風景にうんざりしながら、一連のやり取りを凝視しているクゥーリィーを見やった。


「クゥーリィー、火線(ファイアービーム)を出せ。但し、線は出来るだけ細くして糸の様にしろ。」


ムタロウは淡々とクゥーリィーに火魔導の使用を許可した。但し、条件を付けて。


「は、はい……。ええっと、…蟲さん出てください!」


クゥーリィーが声を発するとクゥーリィーの右人差し指から、「ぷしゅ」と青白く輝く炎の糸が飛び出た。

その糸は、ムタロウの指示通り非常に細く、納豆の糸のように繊細で、風でも吹いたら切れてしまいそうであった。


「よし、その糸をあの二人のモノに触れないようにコイル状に巻き付けろ。」


「は、はい…」


クゥーリィーはムタロウの指示が、彼女の魔導訓練である事を理解した。

ムタロウは、木に縛り付けられ名ながらも腹にくっつきそうな程に屹立させた男根と腹の僅かな隙間に火線(ファイアービーム)を通すという繊細な蟲操作の訓練と、人間に向けて火魔導を撃つ事に対する抵抗感を無くすため、敢えて自分に指示を出したと考えていた。


「ああああ、熱いッ、火傷するッ!!!」


「やめろ、毛が燃えている!熱い!!!やめてくれ!!!!」


髭の面と鷲鼻は先刻の虚勢は吹き飛び、必至の形相で叫んでいた。

幾ら納豆の糸の様に細いとはいえ、クゥーリィーの放つ火魔導は温度にして1600℃を優に超える超高温の糸である。

そんな糸が男根に触れていないとはいえ、男根本体から5mmと離れておらず、コイル状を形作っているため、炎の放つ灼熱に男根本体は炙られ、持ち主は熱さと恐怖に恐慌を引き起こしていた。


「ひひ、あまり怖がって騒ぐと、アレが縮んで糸に当たるんだのぅ。頑張って維持せんとのぅ」


ラフェールは二人を煽り、パニックを起こしている二人の様子を見て心底楽しそうにしていた。


「熱い思いをしたく無ければ、俺の質問に答えろ。そうしたらこの糸を解く。」


ムタロウは、クゥーリィーの繊細な火線(ファイアービーム)の美しさと火蟲の正確な操作に感嘆しながら質問を始めた。


「わかった!言う、言う!言うから焼かないでくれ!!!」


鷲鼻が必死になって懇願していた。

屹立した男根を見てクゥーリィーに見たら卒倒するとうそぶいただけはあるな。と思った。


「一つ目の質問だ。最初から襲撃するつもりだったのに、何故わざわざ出向いて護衛の申し出をした?」


「そ、それは、護衛という形を取れば、あ、安心して背中を見せるので、襲撃の成功率が上がるからだ。」


要は、正面対峙をすると強盗団側も被害が出るので、余計な被害を避けるために雇われ護衛として安心させて背後から襲撃するという事かとムタロウは理解した。


「そういう手口でどれだけの人たちを殺した?犯した?」


「ひゃ…百人は下らねえ。多い時で毎日狩っていたので、数は分からねえよ。犯した女・子供も同様だ」


最初は数えていたのだろうが、ルーティーン化し数えるのも止めたのだろうとムタロウは思った。

凶行に対する心理的ハードルは、回数を重ねていく度に下がっていく。

こいつらは既に何の痛痒をも感じずに凶行を重ねるまでに堕ちたのだとムタロウは思った。


「今回の襲撃に当たってお前らは俺たちを待ち伏せていた。護衛の申し入れ時のカネのふっかっけ方もこのあたりの相場を遥かに上回っていた。という事は、俺たちの懐具合をある程度知っていたと俺は思っている。言え。お前らは誰にそそのかされた?」


ムタロウは、今回の強盗団の襲撃が偶発的なものではなく、ある程度計画されたものであると考えていた。

獲物がムタロウであったのが強盗団にとっての不幸ではあったが、剣士と婆ァと少女の3人のパーティとなれば油断もするだろう。

しかし、こいつらは10人以上の布陣で確実に襲撃を成功させる方法を選択している。

ムタロウ達の戦力もある程度想定しての布陣であろうが、初見でこの3人を手練れと思う奴は相当の目利きの持ち主であり、()()()()()そんな判断が出来るとは思えないとムタロウとラフェールは思っていた。

「しょ、ショートカットの中年女に、これから来る3人組のパーティーは50万ニペス持っているからチャンスだと唆されたんだ。俺はあいつに騙された!俺ではなくあの女を処分してくれ!」


髭の面が必死に訴えていた。

髭の面の言ってる内容は支離滅裂で自分本位の最たるものと、ムタロウは嫌悪感で一杯になったが、なおも質問を続けた。


「これが最後の質問だ。今まで行ってきた悪事で記憶に残っている事は何だ?それぞれ答えろ。」


ムタロウは、二人を睨みつけながら問うた。


「こ、これを答えたら解放してくれるんだな???」


髭の面が、目を血走らせて聞き返してくる。

青白く光る灼熱の炎のコイルの中の男根は焦げ臭い臭いを発してきていた。


「ああ、この解放してやる。早く答えろ。」


「お、おれは、行商人達の中に居た妊婦を犯した事だッ…穴という穴を犯した後にな、ナイフで妊婦の腹を引き裂いて出てきたガキの口にも無理やり突っ込んだ事だっ…羊水でぬるぬるしてこれまでにない快感だっ…アッ!!!」


髭の面が最後まで言い終わる前に、炎のコイルは径をきゅっと締め、じゅっという音と共に髭の面の男根は消し炭となった。

そして、鷲鼻の男根の尿道に火線(ファイアービーム)は潜り込み、ずぶずぶと肉が焼ける音を伴いながら尿道を通じて鷲鼻の体内に入り、体内を縦横無尽に暴れ廻ったのち鷲鼻の右目から飛び出した。

更に飛び出した火線(ファイアービーム)はそのまま一直線に斜め上に進んでから、鋭角に方向を変え、髭の面の右耳の穴から頭部を真一文字に貫いたのち、再度左耳の穴に潜り込み、そのまま頭の中で爆せた。



あっという間の出来事であった。

クゥーリィーは涙をぼろぼろ流しながら肉塊となった髭の面と鷲鼻をずっと睨みつけていた。






読んでいただき、ありがとうございます。

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