表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
1/82

はじまり

伊藤イクヒロと言います。

この度は読んでくださりありがとうございます。

自分の脳みそに浮かんだ事を書きたいと思って今回、初めて投稿します。

宜しくお願いします!

 夏の盛りであった。

 野原を覆う草々はみな、大人の背丈程もあり、それぞれに穂を展開させるもの、実を多数結実させ首を垂れるもの、背丈の割に控え目な花を咲かせるものなど夫々が思いのままに勢力の拡大させていた。

 これら草達は一見各々勝手に生えている様に見えるが、葉や茎に鋭い棘を纏ったり、黄や黒のまだら模様の見た目の猛毒の毛針を持つ毒虫を飼わすものなど、人間の侵入を拒むという点で一つの意思を形成しているようであった。


 そんな草をがさがさと無造作にかき分け、踏み潰しながら歩いている豚の顔をした人間がいた。

 その豚面は身長は2メートル弱あり。頭髪は肩まで無造作に伸ばしており何日も洗髪をしていなかったのか、皮脂で鈍い艶を光らせていた。


 その豚面の前に槍を持った男が飛び出してきた。

 草むらの中に隠れて獲物が来るのを待っていたようであった。


「きえええいっ!」


 奇声と共に男は豚面に向けて槍を突いた。

 豚面の不意を突いた必殺の突きだった。

 しかし、豚面は槍の刃先を左手で払い除け右手に持っていた刀身10センチ程のナイフを男の右目に突き刺し、そのまま時計回りにナイフを捻った。

 ナイフの刃がごりごりと涙骨を削る音がした。


「あぎゃあああッ!」


 豚面は苦しむ男の姿を見て愉悦の表情を見せながら男を蹴飛ばしてナイフを抜き、ひっくり返った男の右手を踏み付け、右肘から下をナイフでゴリゴリと切断し始めた。

 男が泣き叫ぶ度に豚面は邪悪な笑みを見せ、口からは涎を垂らし悪趣味な作業を続けていた。

 豚面の作業は男の四肢が全て切り落とされるまで継続し、作業が終わった時、音は絶命していた。

 作業を終えた豚面の目は血走り、顔は歪んだ笑顔を見せ、そして股間の陰茎ははち切れそう位に勃起していた。


 この豚面は獣人族豚種と呼ばれる者で悪賢く貪欲で卑怯な種族として人々から忌み嫌われていた。

 特にこの豚種は周辺の町で殺人、略奪、婦女暴行の常習者であった。

 これだけ悪事を働いていても、豚種は社会からの制裁を受けず暴虐の限りを尽くしていた。

 一度覚えた成功体験は自制というものを奪っていった。

 その結果、この豚種は人間を嬲り殺す事が趣味となった。

 ただ、人を殺すのでは満足出来なくなっていた。

 女・子供ならば穴という穴に男根を突き立て対象が息絶える迄犯し続けた。

 男ならば先刻の様に対象の四肢を切断し、目を潰し苦しみ絶命する迄加害を加える。

 性欲が溜まっている時は死姦もした。

 豚種は全般的に愚かで粗暴であったが、この個体は一般的な豚種よりも欲望に対する制御が出来ず愚かであった。


 豚種は男の四肢を切断し終えたところでふと自らが陥っている状況を思い出した。

 豚種は追われていたのであった。

 いつもの通り、目が合った人間の女を拉致し、犯し、金を盗った。

 そうしたら女の連れであろう男が目を血走らせ、喚き散らしながら殴りかかってきたので、逆に殴り殺した、

 人間の頭は脆い。

 殴ると簡単に弾けるのだが、それが実に気持ちいいとその豚種は思った。

 そこまではいつもの事であったのだが、ここからが普段と違っていた。

 普段は怯え目も合わそうとしない脆弱な人間族が表立って豚種に敵意を向けて来た。

 いつもならば何をしてもへらへらしている人間が、集団で槍を向けてきた。

 豚種は愚鈍ではあるものの、己の行ってきた振る舞いで人々の恨みや憎しみを買う位は理解していた。

 しかし、豚種であるが故に非道の限りを尽くしても社会から制裁を受ける事はなかった。

 この世界はそういう世界だった。

 しかし、人間達は自分に制裁を加えるべく刃を向けてきた。

 そういう世界であるにも関わらず、刃を向けてきた意味について豚種は愚鈍な頭で考えていた。


 豚種の目はやがて怯えの色へと変化していった。

 漸く、これまでの自らの行いの責任を取る時が来ている事に気が付いたのであった。

 愚かな豚種は、町を出て平原を一人走っていたのは、自らの命を守るための行動であり、早く身を隠せる森の中へ逃げる必要があった。

 にもかかわらず、目先の殺戮で我を忘れ、貴重な逃亡の時間を無駄にしていた。

 豚種というは、程度の差こそあれ、()()()()()()()であった。


 豚種は逃亡を再開し、草の海を走り始めた。

 そして、天頂にあった日が傾き始めた頃、草の海は終点を迎え、目の前に森が広がりつつあった。

 森を見て自身の勝利を確信した豚種の目には先刻の怯えの色から安堵の色に変わりつつある頃、豚は森の前に辿り着いた。


「よう。」


 豚種はびくっと身体をふるわせた。

 その目は安堵から再び怯えへと色彩を変わっていった。

 豚種は、恐る恐る声の方向に顔を向けた。


「ずっと待っていたンだ。何で逃げる?」


「……。」


「逃げずに、いつもの通り差別、差別と喚けばいいじゃないか。」


 声の主が草の中から聞こえてくる。

 がさ、がさ・・・と草をかき分ける音が数度したのち、その声の主が豚面の前に姿を現した。


 その声の主は30歳前後の男性だった。

 身長は170センチ程だった。

 特に目につく身体的特徴はなかった。

 しかし、その男に纏わりつく空気は歪んでいた。

 その目は身体の内から出る不快感を抑え込んでいる様であった。

 今にも暴発しそうな鬱屈とした空気漂わせていた。

 右腰には古びた剣をぶら下げていた。

 年代物だろうか?

 柄の持ち手は、長年の使用のせいか、摩耗し鏡面化している。


 第三者から見れば、圧倒的な体格差からみて怯えるのは人間の男の方である筈なのに、実際に怯えているのは豚種の方であった。


「こんな時こそ、お得意のフレーズを叫ぶいい機会なんじゃないか?差別だーって」


 男は口を歪めて、その者に対して嫌悪感をむき出しにして嗤っている。


「サベツダニ…」

 

 豚種は小さく呟いた。

 そして、男に向かって突進した。

 右手には刃渡り10センチ程のナイフが握られている。

 豚種は男の顔めがけナイフを突き立ててきた。

 対峙する男に対する怯えと怒りが入り混じった突きだった。

 突き立てられた方の男は、顔色一つ変えず、冷静に避けていく。

 豚種の突きと男の回避のやり取りが1分ほど続いていた。

 おかしなことに、男は豚種の攻撃を避けるだけで、反撃に転じようとしなかった。

 やがて、一方的に攻撃をしていた豚種がへばり、ぜいぜい言いながら足元をふらつかせてナイフを突いた時、男はナイフの刃先を避けると同時に、左足で豚種の鳩尾を蹴り上げた。


「ごぶぅッ」


 豚種の口から胃の中の内容物が溢れ出る。

 胃液の匂いと、内容物の匂いが混じった強烈な臭気が辺りを漂う。


「くっせぇな。」


 男は更に豚種の股間を爪先で蹴った。


「はがっ…」


 豚種は急所を蹴られた事で呼吸が出来なくなり、もんどりうった。

 男は豚種が苦しんでいる姿を見て嗤っていた。


「そうやって、物事がうまくいかないとお前等はすぐ力でねじ伏せようとする。だから、いつまで経っても人から蔑まれる。」


 男はそう言うと右の腰に下げられた剣の柄を左手で握り剣を抜くや否や剣を振り降ろした。

 豚種の右手首は吹き飛んでいた。

 豚面の手首からどぼどぼと赤い液体が零れていた。


 男は間髪入れず剣を右に薙ぎ払い、豚面の首を胴体から切断した。

 豚面の首から下は主を失ってもなお、急所を蹴られた痛みを収める為に転がっていた。

 切断された首はごろごろと2・3回転したのち、動きを止めた。

 その顔は、急所を蹴られた苦悶の表情で、口からは先ほど吐いた吐しゃ物が糸を引いてぶらぶらして醜悪な事この上なかった。


「豚野郎が…もう少し苦しませてから死なせるつもりが首を斬ってしまった…ミスった。」


 男は豚種討伐のプランが狂った事を悔しがっていた。

 地面に転がっている豚種の顔は文字通り豚の顔をした人間であった。

 鼻の穴は鼻の前に2つあり、鼻と口の間の距離はほとんどなく上唇から牙がわずかに露出していた。

 一般的に豚種の平均身長は平均2メートル強程であり、人間よりも遥かに体格に優れていた。

 力は非常に強いが、知能はあまり高くなく極めて粗暴。

 食欲・性欲が異常に強いため、他種族に対し略奪と凌辱を頻繁に起こしており、「この世界」の他種族から忌み嫌われている存在であった。


 男は自身が斬った豚面の首を用意した麻袋に入れ、豚面が所持していた小物・金は別の麻袋に無造作に入れ、町へと戻っていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ