表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

0ちゃんとお友達

作者: 島猫。

 0ちゃんはとても小さな数でした。

 2くんや、1ちゃんよりも小さくて、みんなになかなか見つけてもらえません。

 0ちゃんがいるのかいないのか、みんなは0ちゃんを見ることができなくて、よく分からないのです。


 0ちゃんがみんなと隠れんぼをしていても、みんなには0ちゃんが見えません。

 だからだれも0ちゃんを見付けられません。


 0ちゃんがみんなとだるまさんがころんだをしていても、みんなには0ちゃんが見えません。

 だから0ちゃんが動いてしまってもだれも気付けません。


 一緒に遊んでいるつもりでも交ざれていなくて、0ちゃんは悲しくて、寂しくて、ぐすんぐすん泣いていました。


「ぐすんぐすん、わたしもみんなと遊びたいよう」


 すすり泣く0ちゃんのすぐ近くから、別の子のむせび泣く声が聞こえてきました。


「えんえん、びえんびえん、ぐうぇ、ぐうぇ、ゔぁだぁしもびぃんなどぉあ゛ぞびだぃよう」


 たぶん自分と同じことを言っていそうなお友達がすぐ近くにいて、0ちゃんはとてもびっくりしました。


(わたしだけじゃなかった! ……たぶん)


 すすり泣いていた0ちゃんは、おそらく自分と同じ悩みを持つだろうお友達に仲間いしきを覚えました。

 心強く思えて、れっとう感がやわらいで、とても嬉しい気持ちになりました。

 そして、0ちゃんはきょろきょろ。


(あれれ?)


 首がつらないぎりぎりの角度までひねって辺りを見渡しますが、0ちゃんにはお友達のむせび泣く声は聞こえても、お友達の姿が見えません。


「ねぇ、ぐうぇぐうぇ泣いているお友達、あなたはどこにいるの?」


 0ちゃんは尋ねました。


「ゔぇへ? ゔぁだぁしはごぉごぉにぃヒック、るよ? ねぇ、ぐずんぐずんないでいるぼぉどもだぢ、ばぁなだぁはどぉごぉにぃるぬぉ?」


 0ちゃんは聞き取ることができたいくらかの音と会話全体の雰囲気から、勘で答えます。


「え? わたしもここにいるよ?」


 0ちゃんはそろりそろり、手を右に左に、前に後ろに伸ばして、泣いているお友達を探します。


 すると、どうやらお友達も0ちゃんを探してくれていたようで、0ちゃんの手とお友達の手がトンッと当たりました。

 お手てをぎゅ、やっと見付けたお友達の手を0ちゃんは握りました。


 すると、ぎゅ、ぎゅ、お友達も0ちゃんの手を握り返してくれます。


(一人ぼっちはもういや、寂しい)


 0ちゃんはお友達と一緒にいたいと思いました。

 お友達も0ちゃんと一緒にいたいと思いました。

 強く、強く思い、お手てをぎゅ、二人は願いました。


(離れたくない、一緒がいい)


 オレンジ色と紺色が混ざった夕方の空に、淡い瞬きの一番星が見え始めました。

 と、淡い星はまるで飛行機のように色の溶け合った空を薄っすらと真っ直ぐに移動して、そのうち混色の空に吸い込まれて消えていきました。


 0ちゃんと、お友達のもう一人の0ちゃんは、ぎゅっとピッタリくっついて、ほっぺとほっぺがくっついて、二人は前よりも大きな数になりました。


 隠れんぼをするときも、鬼ごっこをするときも、だるまさんがころんだをするときも、二人はいつも一緒です。

 ほっぺとほっぺをピトッ、もう離れません。




「みんなで長縄をしようよ」


 ならんで列を作って、大きく回転する縄跳びに順番に入っては抜ける八の字跳びをするようです。

 

「おぉーい、8ちゃんもはやくはやく」


 ほっぺとほっぺがくっついた二人は、もう二人で一人、息ピッタリに、そろってジャンプ。

 

 みんなで遊ぶことができて、とっても嬉しい8ちゃんでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そういうことー! なんだかすごくスッキリしました(´ω`*) もうひとりの0ちゃんがマジ泣き状態で可哀想なんですがかわいい……笑。 ふたりが出逢うことができて本当によかったですv 島猫。さん…
[良い点] とってもかわいいです! 寂しがり屋の0ちゃん同士がぴとっとくっついて、新しい数字になるという柔軟な発想にとっても驚きました。 みんながにこにこ縄跳びすることができて、よかったです。 読ま…
[良い点] 拝読しました。 0と0がくっついて8という発想、とっても面白いと思いました。小魚の童話、スイミーみたいですね。 一心同体、というのは、まさにこのことでありましょう。寂しがり屋の二人の0が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ