0ちゃんとお友達
0ちゃんはとても小さな数でした。
2くんや、1ちゃんよりも小さくて、みんなになかなか見つけてもらえません。
0ちゃんがいるのかいないのか、みんなは0ちゃんを見ることができなくて、よく分からないのです。
0ちゃんがみんなと隠れんぼをしていても、みんなには0ちゃんが見えません。
だからだれも0ちゃんを見付けられません。
0ちゃんがみんなとだるまさんがころんだをしていても、みんなには0ちゃんが見えません。
だから0ちゃんが動いてしまってもだれも気付けません。
一緒に遊んでいるつもりでも交ざれていなくて、0ちゃんは悲しくて、寂しくて、ぐすんぐすん泣いていました。
「ぐすんぐすん、わたしもみんなと遊びたいよう」
すすり泣く0ちゃんのすぐ近くから、別の子のむせび泣く声が聞こえてきました。
「えんえん、びえんびえん、ぐうぇ、ぐうぇ、ゔぁだぁしもびぃんなどぉあ゛ぞびだぃよう」
たぶん自分と同じことを言っていそうなお友達がすぐ近くにいて、0ちゃんはとてもびっくりしました。
(わたしだけじゃなかった! ……たぶん)
すすり泣いていた0ちゃんは、おそらく自分と同じ悩みを持つだろうお友達に仲間いしきを覚えました。
心強く思えて、れっとう感がやわらいで、とても嬉しい気持ちになりました。
そして、0ちゃんはきょろきょろ。
(あれれ?)
首がつらないぎりぎりの角度までひねって辺りを見渡しますが、0ちゃんにはお友達のむせび泣く声は聞こえても、お友達の姿が見えません。
「ねぇ、ぐうぇぐうぇ泣いているお友達、あなたはどこにいるの?」
0ちゃんは尋ねました。
「ゔぇへ? ゔぁだぁしはごぉごぉにぃヒック、るよ? ねぇ、ぐずんぐずんないでいるぼぉどもだぢ、ばぁなだぁはどぉごぉにぃるぬぉ?」
0ちゃんは聞き取ることができたいくらかの音と会話全体の雰囲気から、勘で答えます。
「え? わたしもここにいるよ?」
0ちゃんはそろりそろり、手を右に左に、前に後ろに伸ばして、泣いているお友達を探します。
すると、どうやらお友達も0ちゃんを探してくれていたようで、0ちゃんの手とお友達の手がトンッと当たりました。
お手てをぎゅ、やっと見付けたお友達の手を0ちゃんは握りました。
すると、ぎゅ、ぎゅ、お友達も0ちゃんの手を握り返してくれます。
(一人ぼっちはもういや、寂しい)
0ちゃんはお友達と一緒にいたいと思いました。
お友達も0ちゃんと一緒にいたいと思いました。
強く、強く思い、お手てをぎゅ、二人は願いました。
(離れたくない、一緒がいい)
オレンジ色と紺色が混ざった夕方の空に、淡い瞬きの一番星が見え始めました。
と、淡い星はまるで飛行機のように色の溶け合った空を薄っすらと真っ直ぐに移動して、そのうち混色の空に吸い込まれて消えていきました。
0ちゃんと、お友達のもう一人の0ちゃんは、ぎゅっとピッタリくっついて、ほっぺとほっぺがくっついて、二人は前よりも大きな数になりました。
隠れんぼをするときも、鬼ごっこをするときも、だるまさんがころんだをするときも、二人はいつも一緒です。
ほっぺとほっぺをピトッ、もう離れません。
「みんなで長縄をしようよ」
ならんで列を作って、大きく回転する縄跳びに順番に入っては抜ける八の字跳びをするようです。
「おぉーい、8ちゃんもはやくはやく」
ほっぺとほっぺがくっついた二人は、もう二人で一人、息ピッタリに、そろってジャンプ。
みんなで遊ぶことができて、とっても嬉しい8ちゃんでした。