01*ある秋の日の悲劇
2023年の一作目は、マンドレイク令嬢のお話です。
醜い声のせいで虐げられた令嬢と前世からの因縁を持つ魔法使いの恋物語を、どうぞよろしくお願いいたします。
マンドレイク。
それは、魔法薬の材料として有名な植物である。
地面から引き抜くと悲鳴を上げ、その声をまともに聞いた者は発狂し、最悪の場合は死に至る。そのため、収穫には特別な配慮が必要とされている。
黄金色の街路樹が美しく彩る、秋の頃。
グランベル王国の首都・アンティーブにあるリナローズ男爵邸で、失神者が続出した。
にわかには信じがたいことではあるが、彼らは赤ちゃんの産声を聞いて気を失ったらしい。
免れたのは、耳が遠い老人だけ。
ちょうどその時、男爵夫人は出産の真っ最中。
助産師の耳が遠かったことが、唯一の幸いである。
その日、リナローズ男爵家に第一子が誕生した。
ニレの葉を思わせる暗い黄緑色の髪に、パッと目を引く赤紫色の瞳を持つ女の子──コルテ・リナローズ。
彼女の産声は赤ちゃんとは到底思えない、【実に不愉快な、鋭い軋るような音】だった。
目を覚ました者は口々にこう言った。「マンドレイクの収穫かと思った」と。
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