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勇者リリア♀は彼氏ができない!  作者: アポロBB
センチメンタルジャーニー編
93/113

93.行き倒れの男

「じゃ、マッチングサービス受けられへんってこと?」ルイーズが訊いた。


「そうだ。姉貴がいねえからな」クロアが答えた。


「ウチら、めちゃくちゃ遠くから船まで使って来たんですけどー」エスメラルダがうらめしげに言った。


「知るか」


「うわ、やっぱクロちゃん性格悪るッ」不貞腐れるエスメラルダに、


「腹黒エルフや」毒づくルイーズ。


「うーるっせ! ってなわけだから帰れ帰れ。シッシッ」クロアは虫を追い払うような素振りで応えた。


「ねえ、クロちゃん」リリアがようやく口を開く。「お姉さんはなんで家出したわけ?」


「失恋したんだとよ」


「えー!!」三人は驚きの声をシンクロさせた。


「エルフでも失恋とかするの?」


 なぜかリリアは身を乗り出して訊いた。人の失恋話は大好物だ。共感してうるうるするのだ。リュドミラとも失恋話で盛り上がって仲良くなった。


「あったりまえだろ。お前、エルフを何だと思ってる」


「ねえ、片想い? それとも付き合っててフラれたの?」リリアはさらに食い下がった。


「何年か付き合ってたみたいだぞ」


「ふむふむ彼氏持ちだったわけね。相手はどんな人? あ、人じゃなかったエルフか。どんなエルフ?」


「姉貴の相手は人間だ」


「えー!!」三人は再び驚きの声をシンクロさせた。


「ビルバッキオの街に住んでるぜ」


「エルフと人間、やっぱり異種間恋愛の現実は厳しかったのね……でも、すごくロマンチック……」リリアはなぜか自分の世界に浸っていた。


「まあ、そんなわけだ。マッチングサービスは諦めな」


「……でも、変やない? 街にあんだけ観光客おったのに、ここまで来る間、ぜんぜん、人おらんかったな」


「そういや、私たちだけだったし」


「へへん、それはこういうこった。俺が幻術を使って、道迷いさせてんだ。姉貴がいねーのに押し寄せられても困るからな。この森に来るずーっと手前の林の中で同じところをぐるぐるさ」


「正直に事情を話せばええやない。マジ性格悪いわ」


「じゃ、なんで私たちは迷ってないわけ?」エスメラルダが訊いた。


「俺がしくじっちまったんだろな。偉大なエルフ、クロア様でも間違いはあるってことさ」


「ああ、クロちゃんドジっこってことやん、アハハ」


 リリアは黙っていたが、その理由が分かっていた。勇者に幻術など通用するはずがないのだ。リリアはほぼ無意識のうちに幻術を回避していた。


「なあ、クロちゃん、マッチングサービス以外になんか観光できるとこある?」


「ねえよ。見たら分かるだろ。木しかねえ。果てしなく森なんだよ」


 仕方なく三人はマヌーフの森を後にした。来た道を下っていく。


「あんなエルフもいるんやな」


「エルフってもっと清らかで誠実そうな感じをイメージしてたけど、あれじゃそこらへんのチンピラじゃん。リーリちゃん、エルフに会ったことあった?」


「え? まあ……うん。会ったというか、なんていうか……」


「へー、どこで知り合うん? 私ら普通に生活しとっても会わへんし」


「え、えっと旅、今回みたいな旅の途中でたまたま知り合っただけなんだけどね……」


──魔王討伐軍は人間とエルフの同盟軍だったから、武闘派エルフの知り合い、たくさんいるんだよね……ま、ややこしくなるから言わないでおこ。


「そか。エルフと知り合うのも旅の醍醐味っちゅうやつやな、アハハ」


「でさあ、また変なのいるんだけどー」エスメラルダは道の先を指差した。


 道の真ん中でうつ伏せで倒れている男(おそらく人間、耳が尖っていないのでエルフではないようだ)がいる。


「なんなん、今日出会うんは、変なののオンパレードや」


 三人はおそるおそる近づいていった。先陣を切ってリリアがツンツンする。


「……」反応なし。


「死んでる? 死んでる?」エスメラルダがリリアにしがみついて言った。


 リリアが脈をとろうと、手首に手を伸ばした瞬間、彼は顔を上げた!


「ぎゃああああああ」エスメラルダが叫びながら逃げていった。


「ぐはっ! こ、ここは!?」


「あ、あんた生きとったん? ここはマヌーフの森に行く途中の道やで」


 男は髭面で髪も伸び放題、服も薄汚れているが、それでも、不快な感じがしないのは元素材が良いからだ。つまり随分とイケメンなのが、隠しきれないという感じだ。リリアのイケメンアンテナは強力なイケメンオーラをキャッチしたのだった。


──行き倒れのイケメン……何か始まりそうな予感しかしないわ!


 リリアの頭にはほんの0.1秒の間にとんでもない妄想が駆け巡った。


「ウィノーラ……ウェステラリア……」男はうわ言のように繰り返した。


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