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勇者リリア♀は彼氏ができない!  作者: アポロBB
センチメンタルジャーニー編
91/113

91.旅と酒

「ウチら、マヌーフの森に行くんだー」エスメラルダが言った。


「今からワクワクするわー。私、幸せになります!」ルイーズが可愛らしいポーズで言った。


「マヌーフの森って?」リリアが訊いた。


「リーリちゃん、知らないの!?」


「うん、聞いたことなくて」


「マヌーフの森いうのはね、エルフが住んどる森なんや」


「そ。そこでね、マッチングサービスやってんだよー」


「マッチングサービス? ごめん、私、なんにも知らなくて」


「要は男女のカップリングをしてくるわけや。いろいろ質問に答えて登録すると、エルフが自分に合う男を紹介してくれるんやて。そこで結ばれたカップルは相性バッチリで結婚までいくいうて評判なんよ」


「そんなのあるの!?」


「そうや。やからウチら、イイ男を求めてはるばる海を渡って、マヌーフの森を目指すんや」


「リーリちゃんはどこに行く予定?」


「特に決めてないんだ。流れるまま、流されるまま、なんてね、アハハ」


「じゃ、リーリちゃんもウチらと一緒に行かない? あ、もしかして彼氏持ち?」


「ぜ〜んぜん! ホントに一緒に行っていいの!?」


「モチのロンや!」


「じゃ、行くぅ!」


 こんなノリで三人旅は始まった。目指すはマヌーフの森。港に着いたのがお昼過ぎで、三人はしばらく街道を歩き、日が暮れる頃にはビルバッキオに到着した。


 ここはマヌーフの森の10キロ手前にある、山の麓に位置する街でこの先は山道を辿って行く。三人はここで一泊することにした。


 街中に入ると、賑やかな音楽と人々の軽やかな話し声が聞こえてきた。灯りが煌々としていて活気に満ちている。


「こんなとこに栄えた街があったんだねー、全然知らなかったよ」リリアが言った。


「ビルバッキオがこんなに賑やかになったのは最近らしいよー。何年か前からマヌーフの森が有名になり始めて一気に観光地として発展したの」エスメラルダが説明してくれた。


 よく見ると街に溢れているのは若者ばかりだ。リリアたちと同じようにここで一晩過ごして明日からマヌーフの森に行こうと考えているのだろう。


「酒場もいっぱいあるでぇー」ルイーズは立ち並ぶ看板を見て嬉々として言った。


「ルイーズはお酒大好きなんだよー。リーリちゃんは飲むの?」


「私は……」リリアの頭に数々の酒での失敗が浮かぶ。「飲まない! 飲みたいけど……飲まない!」


 三人旅がリリアの気分を高揚させ、酒の誘惑が大きくなっていた。


「飲まない? じゃ、飲めるってことじゃん、アハハ」


「リーリちゃん、今日は飲み明かそう! 前祝いやぁー!」


「私、お酒でいろいろやらかしちゃってるからさ……やめとくよ、迷惑かけられないし」


「大丈夫だって、少しくらいならさー。ウチらもいるし!」


「そう?」リリアの心は完全に揺らいでいた。


 宿を見つけて荷物を置いた三人は、宿の主人がおススメしてくれた酒場に向かった。そこは大きなバーカウンターがあり、多くの観葉植物がセンスよく配置された、いかにも若者向きといった感じのオシャレな店だった。当然、客層も若い。


 三人が入るなり、奥のテーブル席に陣取っていた男たちが値踏みするようにジロジロ見てきた。


「ああいうのはダメや。近寄らんとこ」ルイーズが小声で言った。


「絶対、ヤルことしか考えてないわ。服もダサいし。本当ヤだわー、ああいうの。ねえ、リーリちゃん」エスメラルダはリリアに同意を求めた。


「そ、そうだね……」リリアは若干口ごもった。


──え? そんな感じ? 意外とカッコよくない? 一緒に飲めるかも、ってちょっとワクワクしちゃってたんだけどな……


 三人はカウンターの真ん中に座りバーテンに注文した。エスメラルダとルイーズは蒸留酒をロックで、リリアはかなり薄めの水割りにした。


「でも、不思議。エスちゃんもルイーズちゃんも美人なのに、何でわざわざ彼氏を探しに旅までするの?」


「だってモテないもん、ウチら」


「うっそだー」


「ホンマやで、からっきしや。流行りの顔やないんかなぁ、アハハ」


「リーリちゃんだってホントはモテるんでしょ? 絶対理想が高いんだよー。高過ぎてダメなパターン、あるあるだよー」


「そうかなぁ、アハハ」


 などと最初は女子トークで盛り上がっていたのだが──


「ホント、田舎ってロクな男いないんだぁ! クソみてーにシミったれた顔しやがってさー!!」


「イモくせー、頭のわりー野郎ばっかしやぁ! どいつもこいつもじゃあ!! なんで私はこんなに男運ないんやぁあああ!!」


 飲み始めて30分でエスメラルダとルイーズは完全にデキあがってしまい、暴れ始めた。それはだんだんとエスカレートしていき──


「なあ、お前ら! そんなダセー服着てたらヤベえだろがよー」エスメラルダはそう言って、さっきの男たちに自分から絡んで、頭を叩いたりしている。「あ? なんとか言ってみろや。クソ虫が!!」


「すみません」と何度も頭を下げる男にエスメラルダは絡み続けている。


ルイーズはルイーズで「男ならロックをジョッキで一気飲みやろ!?」などと言って無理やり男たちに酒を飲ませている。


「お願いです! もう許してください!! もうこれ以上は……」


 土下座する男の懇願に、ルイーズはジョッキをひっくり返して頭から酒を浴びせた。


「ホント、クズや。こいつら」


 リリアは、酔いが一気に冷めて、酒乱の女二人が暴れ、男たちが怯える姿をただ呆然と見ていた。 


──エスちゃん、ルイーズちゃん、多分それが問題なんだと思うよ……


お読みいただきありがとうございます!

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