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勇者リリア♀は彼氏ができない!  作者: アポロBB
恋の都キャスタロック編
78/113

78.“頼れる”男を探して

 リリアの舞踏会のエスコート役探しは続いていた。しかし、当初浮ついた気持ちだったリリアの心境には変化が訪れていた。


──ジルさんは楽しみなさいっていうけど、やっぱりそういうわけにはいかないよ。万が一の時に“役に立つ”人じゃないと。


 リリアの基準は<男として魅力的な人間>から<戦いのパートナー>になっていた。


──そういう意味じゃ、マーディガンさんは失格かもね。割と楽しい人だったんだけど


 次の“候補者”はミーゴスといった。待ち合わせ場所がカジノだったから、リリアは嫌な予感がしていた。


「リリアさんよ、俺の目は世界を見通すんだ。そして、俺がこの手で世界をコントロールするんだ」


 意味がよくわからないが、要するにプロのギャンブラーだと言いたかったようだ。爬虫類を思わせる目つきに痩せこけた頬。異様な雰囲気の男だった。


「なんかすごいですねぇ! すごくすごいと思います!!」とりあえずリリアは適当に相槌を打っておいた。


──なんでジルさんの選ぶ人ってこうなの……クセあり過ぎでしょうよ。見るからに信用できないよ、この人。


 ミーゴスはリリアの目の前でカードをやっていたが、確かに強かった。連戦連勝であっという間に目の前にチップの山を築いた。


──へぇ、大したものね


 リリアもミーゴスに教えてもらって、カード、スロット、ルーレットなど一通りの賭けをやってみた。すると、ビギナーズラックもあったのか、全て大勝ち。


「へへっ、リリアさんよ、あんたなかなかスジがいいぜ」


「ミーゴスさんの教え方がうまいからですよぉ、アハハ」


「へへっ、だろ? だろ?」


「イエーイ! じゃんじゃんツッコんじゃいましょう!!」


 リリアは最初の警戒感などすぐに吹き飛び、仲良くなっていた。


 リリアは魔王討伐のためにさまざまな連中とパーティを組んできた。討伐軍に抜擢されるほど強い人間はだいたいがクセが強く偏屈だったりする。それに慣れてしまっているからなのか、一般的に近寄り難いような人間とすぐに打ち解けられるという謎の特技を持っていた。


──意外と楽しいかもぉー!


 最終的にリリアのアパートの家賃三年分の金額を儲けてお開きとなった。ミーゴスとはすっかり友達になり、また一緒にカジノに行く約束をした。“カジノ友達”になったのだ。


──ミーゴスさん、意外といい人じゃん。最初はどうなることかと思ったけど。でも、まあ、舞踏会のエスコート役じゃないよね。


 儲けた金は早速、高級化粧品店での大人買いに使うリリアだった。


 そして、その高級化粧品を顔に塗りたくって臨んだ三人目の候補者とのデート。待ち合わせは目抜き通りを抜けたところにあるアーケード商店街の入り口だった。


──今日のメイクばっちりだわー。やっぱり化粧品って値段がモノを言うんだよねー。


 早く着き過ぎたリリアはルンルン気分で鼻歌を歌っていた。


──今日はどんな人が来るんだろう? まあ、ジルさんの人選だからね……


 そう思いながらも、やっぱりデートはデートである。リリアは若干、期待していた。いや、大分、期待していた。


 なんだかんだでこれまでの二人とのデートをリリアは楽しんでいたのだ。二人とも異性として興味を惹かれる人物ではなかったが、男友達と遊ぶという経験がなかったリリアには新鮮だった。


──今日はお買い物デートかなぁ。アーケード商店街の中って、おしゃれなお店多いっていうし。カジノで儲けたお金、まだけっこう残ってるしぃ……うっしっし。


「なにニヤけてんだよ、リーリ」


 声をかけられて振り向くと、そこにいたのはブルニュスだった。


「は? なんでブルニュスがここにいるのよ」


「なんでって、ここが待ち合わせ場所だろ?」


「えー! まさか、あんたが……」


「そう。舞踏会のエスコート役ってわけ」


 ブルニュスはピュロキックスに襲われたジルを救った借りをこういう形で返してもらったのだ。


「ちょっと待って! 別にエスコート役って決まったわけじゃないでしょ? 他にも候補の人が……」


「ロクなやついなかっただろ? マーディガンとミーゴス。あんなのチンピラみたいなもんだ。ま、俺とのデートの前座みたいなもんよ」


「……まあ、見た目はけっこうイっちゃってる感じだったけど、いい人だったよ、二人とも」


「いい人かどうかは関係ねえだろ? 要はいざって時、頼れるかどうかってことだ。舞踏会は狙われてるんだから」


「ま、そうなんだけどさ……」


「じゃ、俺で決まりな」


「決まりじゃない」


 リリアはブルニュスの才能を知っていた。ピュロキックスの一件で見せた彼の判断力と行動力は並外れたものだった。確かに緊急事態では誰よりも頼りになるだろう。<戦いのパートナー>という意味では、間違いなくブルニュスが適役だ。しかし、リリアの女心が簡単に認めてしまうことを拒否した。


「あなた子供じゃない? 子供が大人の女性をエスコートするなんて目立つじゃないの。テロリストに警戒されちゃうでしょ。そういうのマズいじゃない?」


 リリアは、かっこよくて優しくて頼りになる男と力を合わせてテロリストの魔の手からキャスタロックを救い、そして、そのまま結ばれる──そんな“夢”を心の中に描いてしまっていた。その王子様役は十二歳の少年には務まるはずがない。


「残念ねぇ、ブルニュス。あなたがもうちょっと大人だったらよかったのに、ウフフ」


「大丈夫」ブルニュスは平然と言った。


「はぁ? 何が大丈夫なのよ?」


「シークレットブーツ履くから」


「え?」


「このアーケード商店街はなんでもそろうんだぜ。一回りすりゃ俺が大人に見えるような変装道具なんて簡単に揃うさ」


お読みいただきありがとうございます!

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