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勇者リリア♀は彼氏ができない!  作者: アポロBB
恋の都キャスタロック編
54/113

54.突破口を見出した勇者は……

「ちょっと待って! いろいろ言いたいことあるんだけど、いっこいっこね」リリアはあたふたしながら言った。


 隣にいたブルニュスがディグを見て言った。「あー、リュドミラの新しい男だ! アッハッハ」


「お、おい!坊主。そ、そんなんじゃねえって!!」ディグは即座に言い返したが、顔を真っ赤にしていた。いやらしく腕を絡めておいて、言い逃れはできない。


「もうヤッたのか?」ブルニュスは不敵な笑みを浮かべている。完全に主導権を握った風だ。


「下品ね! その言い方やめなさい!! クソガキー!」リュドミラが言い返した。


「ヤッたんだろ?」


「ヤッたわよ!最高だったわよ!夢のようだったわよ!宇宙まで飛んでいきそうになったわよ!!」


 リュドミラは事実を認めただけでなく感想まで付け加えた。どこまでも真っ直ぐで正直な女?だった。


「ねー、ディグ君」リュドミラはディグに同意を求めたが、


「姉さん……」


 ディグはそれ以上の言葉が出てこなかった。完全にフリーズだ。恋愛初心者の彼にはこのシチュエーションはかなりヘビーだった。


「あの、リュドミラちゃん……」リリアが口を開いた。なぜかリリアまで顔を真っ赤にしていた。ここにも恋愛初心者が存在していた。他人の話でも男女の秘め事となると、こうした反応になるのだ。


「えーっと、あ、そうだ。私、ディグに言わないと」リリアはディグを見つめて言った。「ディグ、本当にありがとう! ありがとうございました!!」そして、深々と頭を下げた。


「あ、ああ……別に大したことじゃねえんだし……」ディグは顔を背けて言った。照れ臭いらしい。


「大したことでしょう? 命を落としてたかもしれないんだよ!」リリアは言った。


「どういうことだ? 詳しく聞こうか」ブルニュスがメモ帳を出して言った。さすがはブン屋の息子だ。


 しかし、その言葉は完全にスルーされて会話は続いた。


「んなことより、ピュロキックスの弱点を探さねえと。まだこの街にいるに決まってる。絶対にまたコトを起こすぜ!」


「……それで、2人でここに……」リリアは言った。


「そういうこと」リュドミラが答えた。「あの時、私がそこらへんに落ちてるモノを手当たり次第に投げつけたの。そのどれかが、化け物の苦手なモノだったみたいなんだけど、分からなくて……リーリはどうしてここに?」


「私はブルニュスに着いて来て……それで……」リリアは言いながら、あることに思い当たった。「リュドミラちゃん、わかったよ!」


「え? な、なにが!?」


「ピュロキックスの弱点だよ!」


「マジか!?」ディグが身を乗り出してきた。


「それはきっと麻薬よ!この下にあるのは麻薬密売のための隠し部屋なの。ね、ブルニュス、麻薬を買った人たちはこの路地裏で吸い込んだりしてるんじゃないの?」


「ああ、そうだよ。大半の野郎が買ったらすぐに我慢できねえでココで一発キメるって話だ」ブルニュスが答えた。


「そうか! それだ!!」ディグが叫んだ。「麻薬はある種の魔物に強烈な効き目があるって、どこぞの古文書に書いてあるって聞いたことがある。多分、姉さんが投げつけたゴミにヤク中がこぼした麻薬が付着してたんだろう。それがピュロキックスにダメージを与えた……。おい、坊主、この下に麻薬はあんのか?」


「たんまりあるぜ」なぜかブルニュスはピースをした。「もしかして、あんちゃん、ヒーローなの!? マンガで見たことあんだよ。陰で街を救うヒーローの話をよ!」


「坊主、俺はそんなんじゃねえ。ってか真逆だ。おてんとうさまをまともに見られない日陰者だ。だって俺はあさ──」


「わーわーわー」ディグの言葉を遮ってリリアが叫んだ。<アサシン>と言いかけたのを察してのことだった。


──リュドミラちゃんに知られちゃいけない! ディグはただの傭兵。ぶっきらぼうだけど心底優しい兵士なの!!


「とにかく、麻薬をちょっとだけいただいちゃいましょ。当然、ピュロキックスと戦うためにしか使わないわ。ね、ブルニュス、すこーしだけならバレないよね?」


「おうよ! 俺がとってきてやる!!」ブルニュスは再び地下室へと降りていった。




 その頃、ブルニュスがリリアとのデート場所の候補にしていたオアシスの奥まったところにある“知る人ぞ知るスポット”には、一組のカップルがいた。


 パラソルを立て、その下に裸で寝そべる男女。顔を近くに寄せ、甘く囁きあっている。そこの一匹の犬がやってきた。小さくてモフモフした愛玩犬だ。


「かわいい! こっちにおいで」女が気づいて手招きした。


「新婚旅行から戻ったら、俺たちも犬飼おうか」男が笑いながら言った。


「そうね!」嬉しそうに犬を抱き上げた女の体を針が貫いた。血が飛び散る。


「ぎゃああああ!!」男は悲鳴を上げた。


 犬の体から出た針は男の体も破壊していた。ぐったりとする二人。血が地面に不吉に広がっていった。


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